「自殺島」(作者:森恒二さん)第5巻あらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます。
第四十一話 モリ突き漁
暫く山に籠っていたセイは、リョウやミキに教わりモリ突き漁。
「無人島生活」」で濱口さんが「獲ったど~~!!」ってやる、あの漁法ですね。
最初こそ苦労したものの、シカと同じで相手(魚)の行動を読み、通る場所に移動して待つ……。
息は苦しくなりますが、焦らず、ゆっくり動いて……見事大きめのハタを突きます。
本格的に寒さも増し、海に入れる日も限られてきます。
シカを獲りに、再び山に入ろうとするセイ。
「こっちは大丈夫?」
という問いに対し……
「オウ!こっちのことは任せろ。ガッツリ獲って来てくれよ!」
リョウは完全に「リーダー」に戻ってきてくれました。
リョウが戻った安心感とは裏腹に、ポツポツと増えだした自殺者……。
前を向く者、迷う者、無法をする者。
島はまだ安定には程遠く、まずは食材のために山に入る…。
ケンもセイ同様、弓を持ってシカを追いたかったのですが…肝心の弓が不完全。
材料を探しに港の方に向かったセイが見たのは、カカトのあるサンダルにミニスカート、長い爪。
およそ島には似つかわしくない女性でした…。
第四十二話 新たな波紋
お腹が空いているという女性に、干し肉を分け与えるセイ。
「じゃあしてもいいよ。それともしてあげようか?」
聞けば以前廃校グループと小競り合いになった「港側のグループ」から逃げてきたという女性・ナオ。
養鶏場だった場所にニワトリを集め、卵を産ませて食糧にしているという港側のグループ。
「サワダ」という危ない男が仕切り出し、「王様」の様に威張り出し、窮屈になったという。
それで廃校グループにも、何人か流れてきたようです。
ナオを廃校に連れ帰ると、同じく港側のグループから流れてきたケンが
「あいつはマズいよぉ~~」
と困った顔。
カイはすぐにピンときたようで、
「君は売春婦だ」
カイにしてみれば「そういう生き残り方もあるんだ」と素直に興味を持ったようですが、言い方が直接的過ぎ…。
反発するのは女性陣と……トモ。
トモは中性的な顔立ちで髪も長く(後ろで束ねています)、争いごとは苦手(三十九話で「諦めた者」たちに獲った魚を奪われた際は、夜廃校で泣いていました)な女の子っぽい男の子。
そのトモが夜、泣きながら落ち込んでいるところに、近づいてきたのはカイ。
トモの悩みを聞いてあげるのか……と思いきや、「もうどうしようもない、逃げ場なんてない」という話をし始めます。
2人を見かけたリョウが声を掛けてきたところで、カイは立ち去りますが
「トモ……いつでも話は聞くからね」
第四十三話 延縄漁
水温が下がり、船上から漁をする必要に迫られる廃校グループ。
考えたのは「延縄漁」
しかし「ナオ」の一件に納得がいかない女性陣(主にミキ)が、作業をボイコット。
男性陣が奮闘し、日暮れ前に仕掛けを入れ終えます。
翌朝はなる早で仕掛けを上げるため、早めに休む男性陣。
そこに、昼間作業に参加していなかったケンが戻ってきます。
どうやら廃校に住むことを拒んだナオのために、廃校近くの廃屋を、ナオが住めるよう作業していた模様……。
「働かないと食料を分けてもらえないよ」
窘めるセイ。
翌朝、仕掛けを上げると大量の魚が。
昼間の獲物とは違い、サメやウツボ、キントキなどの夜行性の魚が掛かっています。
その様子を遠くから見る、見かけない男性たち。
「来いよ!サメが取れたんだぜ~~!」
リョウが声を掛けるも、無言のまま立ち去る男性たち。
港側のグループと思われますが、その目的は一体…?
第四十四話 持たざる同志
元々港側のグループにいたケンに、向こうの様子を聞くリョウ。
「あっちとこっちは皆全然違う…正直関わらない方がいい」
と返すケン。
スギは冷静に分析します。
「向こうから来た人は無法度が少し高い…ひょっとしたら、争いになるんじゃないか?」
「そん時はそん時考えよーぜ!」
無理に明るくみんなを引っ張り、農園に連れていくリョウ。
問題はここでも起きていました。
農作物が荒らされていたのです。
人による仕業でなく、獣害、相手はイノシシでした。
農園担当のミノルとボウシが農園の小屋に泊まり込んだ際、イノシシの姿を見たのです。
「大半は大丈夫」だったものの、「度々やられたら全滅」だと。
セイに視線が集まります。
「うん…やるよ!狩らせてほしい!」
早速その夜、ボウシと小屋に泊まり込んで、イノシシの出現を待つセイ。
「…あの、さ……僕といて…気分悪くならない…?」
「ボウシ」とは浅からぬ因縁があります。
第七話で「持たざる同志」と言われたり、吉村を死に追いやった際には三十八話で「僕には人を殺してまで生きようとする気力は無い。羨ましいよ」と言われたり…。
「その通りだと思ってる。だから、自分にできることをやるしかない」
ボウシができることは「畑作業」、その畑を守るために、セイができる「狩り」を行う。
「持たざる同志」、そうやって補い合っていこうと誓う、セイとボウシ。
深夜、セイがウトウトしたところで、ボウシに起こされます。
畑にはイノシシが……。
第四十五話 待ち伏せ
小屋から遠い方の作物を収穫していたため、作物が見つからず、苛立つイノシシ。
次第に小屋の方に近づき、弓を構えるセイ。
その弓なりの音に反応したイノシシが2頭、逃げてしまいます。
もう1頭、逃げずに興奮し、小屋に向かって威嚇するイノシシ。
セイはそのイノシシにターゲットを絞ります。
セイの射った矢は、イノシシの足の根元、急所付近に刺さります。
止めを刺そうとするセイですが、イノシシは物凄い生命力で再び起き上がり、セイを威嚇した後、森の方に逃げていきます…。
翌朝、逃げたイノシシを追うことにしたセイ。
弓ができたというケンと共に、山に入ります。
一方、港側のグループでは……延縄漁でサメが獲れた際、その様子を遠くから見ていた男性たちが、リーダー格の男に叱られています。
このリーダー格の男が、ナオの言っていた「サワダ」です。
「オレは『様子を見てこい』って言ったか?『連れてこい』って言ったよなぁ!たしか」
誰かを「連れてこい」と指示したようです…おそらく「ナオ」のことなのでしょう。
1人の男性を殴り倒した後
「焼いちまうぞ、マジで。嫌だろ?」
ナオの言う通り、だいぶ「ヤバい」男のようです……。
第四十六話 猪狩り
畑を荒らしに来たところを、仕留め損ねたイノシシを追って、山に入ったセイとケン(もちろん猟犬・イキルも)。
深手を負ったイノシシは、だいぶ弱っているものの、まだ動ける様子。
血の匂いで興奮したイキルが吠え掛かり、イノシシの足を止めます。
その隙にイノシシに追い付いたセイとケン。
「さんざん練習したんだ…オレだって出来る!見てろよナオ…」
ケンが止めを刺そうと飛び出しますが、イノシシの正面に立ってしまいます。
「猪突猛進」という言葉があるように、イノシシの突進力は物凄く、突進+牙の鋭さで、襲われた人間が命を落とすこともあります。
ケンに向かって突進するイノシシに、イキルが横から噛みつき方向を逸らし、イノシシの直撃を免れたケン。
その隙にセイが矢を放ち、3本目でやっとイノシシを仕留めます。
早速イノシシを解体し、たっぷり脂を蓄えた肉を食すセイとケン。
「ナオに…ちょっと分けてやってもいいかな…あ、あいつ肉好きだから…」
カイ曰く「売春婦」のナオに、惚れている様子のケン。
「あいつを…サワダなんかに渡せねぇ…絶っ対ぇ渡さねぇ……」
やはり、サワダが「連れてこい」と指示したのはナオだったようですね。
第四十七話 新たな不安
仕留めたイノシシを担いで、廃校に戻るセイとケン。
途中、女性の悲鳴を聞いて駆けつけると……港側のグループの男性たちが、ナオを無理やり連れ去ろうとしていました。
話し合いで収めようとするセイですが、ケンは興奮しきっており、弓を番えて射る気満々です。
その場は立ち去った男性たちですが、嫌な言葉を残します。
「……ケン、ナオ。お前ら…本当に逆らうんだな?あの人に。今度来るときはオレ達も手ぶらじゃ来ないぜ。サワダさんも皆も来るからな」
その夜、イノシシ肉で満ち足りた食事ができた廃校グループですが、新たな問題も…。
「サワダ」の件です。
廃校グループに移った、元港側のグループの人に尋ねると……、
「あいつは、人喰いなんだ」
どうやら死体を焼いて食べるとのこと……。
何も行動できなかった港側のグループの人間を引っ張り、ニワトリ小屋を作り、ヤギを捕まえて卵や乳を採れるようにしたサワダ。
しかし、そんな「リーダー」は徐々に「暴君」に変わっていったという…。
そんな話を聞き、あまり眠れず早く起きてしまったセイ。
顔を洗いに川へ行くと、そこにはマリアのワンピースを着た女性(?)が…。
「君!その服は……」
セイが声を掛けると、振り向いたその女性は「トモ」でした……。
第四十八話 トモ
男性のトモが、女性もののワンピースを……咄嗟に駆け出すトモ。
急いで後を追うセイ。
シカを追い、山を駆けまわるセイの脚力から逃げられるはずもありません。
「来るな!!ボクは……女の子だ……。いや違う…僕は……バケモノだ……」
身体と心の性が不一致なトモは、自身を「バケモノ」と蔑みますが、セイはそれを否定します。
「トモは僕の友達だ。僕の友達はバケモノなんかじゃない。優しくて怖がりで、皆に気を遣い…マジメで。キレイ好きで泣き虫な…僕の初めての親友だ」
トモの家は代々医者の家系。
妹と2人兄妹のトモは、幼い頃から「跡継ぎ」として育てられました。
中学の頃、心と身体の性の不一致に気付いたトモ。
隠し持っていた女性ものの服が親にバレた際、思い切って「自分は女の子だ」と打ち明けたトモに対し、厳格な父親は「オマエはあのTVに出てるバケモノと一緒か?ああなりたいのか?」
と責められます。
以降、未遂を繰り返すようになったトモ。
これ以上不安を抱えたまま、今の生活を続けるのはトモのためにならない。
セイの提案で、皆に打ち明けることにします……。
第四十九話 トモⅡ
自分のことを打ち明けたら、皆はどんな反応をするだろう…。
恐れながらも「ボクが言おうか?」というセイを制し、自分の言葉で打ち明けるトモ…。
「わかってたよ」
ミキやレイコら、女性陣の反応でした。
「やっぱり女は女同士っていうか…ね」
「うん…わりとすぐそうかなって…。言っていいものかどうか…」
全く気付いていなかった男性陣とは裏腹に、女性陣はトモの「秘密」に気付いていた模様。
改めてグループに迎え入れられたトモですが、カイが水を差します。
「あらゆる行動に男か女か係わってくる。争いの時戦うか、力仕事は、寝る場所、着替え……僕らは憂慮することが増えたわけだ」
相手の気持ちを汲まないカイの発言に、皆が反発します。
「……事実を言ったまでだけど……不快だったのなら謝る。思いやりで生きていければいいけどね…」
正論を言っていいシチュエーション、悪いシチュエーションの区別を付けないタイプのようです、カイ。
そんなカイを擁護し、ついて行く者が2人…最近常にカイと行動を共にする男女でした。
その様子を見て何か感じたのか、
「ちょっと危ないかも…」
2人を案じるトモ。
気温は低くなってきた島ですが、その日は比較的暖かく、リョウ・セイ・ミキはモリ突き漁のため素潜り…。
比較的暖かいとはいえ、冬の海水温は低く、震えながら暖を取る3人。
「大漁じゃねぇか。すごいな」
見慣れぬ男性が声を掛けてきます……。
第五十話 嵐の予感
自殺島に送られてすぐ、飲み水を探す一行の中で「山に入った方が日陰はあるし、沢を見つけられるかも」と山に入っていった男性の一人。
それが「見慣れぬ男性」であり、港側のグループのリーダー・サワダでした。
港側から逃げてきたナオを、連れ戻しに来たのです。
サワダが海辺でリョウらと話をしている最中、港側のグループの男性は廃校の中を捜索。
そこにはカイと、カイの後を追った女性が。
「もうダメだな、ここも。仲間内だけでも次々と問題が起きて揉め事が絶えないというのに、今度は本格的な争いになるかもしれない」
怯える女性に、追い打ちをかけるように不安な言葉を浴びせるカイ。
「もういや……やめて……もう……」
泣き崩れる女性に、
「君はもう充分頑張ったよ。大丈夫……君が逝ったら、僕もすぐ逝くよ…」
カイの囁きは「天使」のそれなのか、或いは……。
一方、海辺で話を続けるリョウとサワダのリーダー同士。
「揉め事はごめんだ。2人の問題なら当事者同士で解決しろよ」
というリョウに対し、
「オレは完全な自由だ。誰の言う事も聞いてねぇよ。また来る」
捨て台詞を残して去っていくサワダ……。
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