「自殺島」(作者:森恒二さん)第3巻あらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます。
第二十一話 無法島
この島を「無法島」と呼ぶ先住人の話では、社会で死刑反対の動きが広まり、いっぱいになった刑務所をどうにかするため、死刑に相当する犯罪者を「更生プログラム」の名のもと、島流しにした…。
それがこの「無法島」だと。
セイたち「自殺未遂常習者」とは別の理由で、この島に流されたのでした。
先住人達が島に送られた後は「地獄」だったと。
犯し、奪い、殺す。
ほとんどの者が最初の冬を越せず、残った者も殺し合っていなくなり…殺し合いが始まってすぐに、山に逃げた先住人が生き残ったのでした…。
翌朝、燻したシカ肉と、貰った子犬と共に、廃校に戻るセイ。
先住人から「ここに残らないか」と誘われますが、仲間の元に戻らなければならないセイは、先住人の誘いを断ります。
帰ったら捨てられた畑を探し、雑草に紛れて残っている農作物を探すよう、勧める先住人。

本土で彼が犯した罪は消えませんが、この島に来て彼は変わり、一人の生活が寂しかったに違いありません。
セイ達の姿が見えなくなるまで、見送ってくれた先住人の許を跡にし、廃校に向かうセイと子犬。
狩りのパートナーとして育てようと貰った子犬でしたが、如何せんまだ子犬。
セイの足元にまとわりつき、その歩みを邪魔してくれます……。
第二十二話 名前
夕食から子犬の訓練を始めたセイ。
初日の目的地にしていた山頂の小屋に、2日がかりでやっとの到着です。
廃校には明日戻ることにし、今日は小屋で一泊です。
廃校に戻り、「人の輪」の中に入ることで、また嫌な思いをするのではないか…ここに居れば十分な食料と、話しかける相棒(子犬)もいる…。
そんな迷いを振り切るように、シイの実を探しに出るセイと子犬。
ふと子犬の興奮に気付いたセイ、よく見ると近くにキジがいます。
子犬の興奮を何とか抑え、キジに向け矢を射るセイ。
キジと子犬、両方とも見失ったセイですが、子犬が飛べなくなったキジの側で、ずっと吠えていました。
まさに「猟犬」の働きをしてくれた子犬に、その「生きる力が溢れる姿」から、「イキル」と名付けます。

セイとイキルのコンビ誕生です。
第二十三話 僕の中の
廃校に戻る途中、シカの群れに遭遇したセイとイキル。
昨日はキジを射るのに理想的な働きをしてくれたイキルですが、シカ相手には如何に…。
案の定、キジよりも大きなシカを目にしたイキルは、その姿に驚き興奮し、セイが矢を射る前に吠え掛かってしまったのです。
もちろん狩りは失敗し、イキルを叱るセイ。
イキルは愛玩犬ではなく、狩猟の相棒。
失敗を糧に、何が良くて何が駄目なのかを、教える必要があります。
廃校近くまで下りてきていたセイが耳にしたのは、マリアの悲鳴。
山を駆け降りると、自分たちのグループにはいなかった男性2人が、マリアを襲おうとしているところ。

総毛立つような怒りが、全身を覆います。
見知らぬ男(オス)が、群れ(テリトリー)を荒らしているのです。
威嚇に一矢、矢を射るセイ。
「殺さないよ……でも、手足は射れる。止めるんだ」
自分の中の「野生」に気付くセイ…。
第二十四話 帰還と不安
威嚇とはいえ矢を射られ、慌てて逃げる男性2人。
狩りの出発も到着も、結果的に出迎えてくれたのはマリア。
彼女を前に、色々な感情が頭をめぐります。
その夜はセイの狩りの成果のシカ肉を、皆で食べます。
そして、イキルのこと、先住人のことを話すセイ。
この島は元々、「無法島」と呼ばれていたことを。
「争いが起きた」というセイの話で、何人かピンときた者が。
実はセイのいない間、港側のグループと小競り合いが起きていたのです。

マリアを襲っていた男性も、その港側から流れて来た者たち。
不安がセイの胸の中で広がっていき、その日はあまり眠れませんでした。
翌朝、イキルと一緒に早朝の屋上に向かうと、そこにはマリアが。
「来ると思ったから……屋上……」
どうやらセイを待っていたようです。
第二十五話 問いと答え
マリアは早朝から、屋上でセイを待っていました。
「何故生きるのか」
その答えをセイから得るために。
マリアは死ねないことを恥じていました。
自分が欲望の対象になること、自分にも欲望があること、傷つけ、傷つき、そんな醜い自分を、数歩進めば終わらせることができる。
でも、出来ない。
答えも出ない。
だから、セイを待っていたのだと。
セイは思いつくままに話しました。
狩りで経験した森の暗さ、怖さ、喉の乾き、飢え…。
そして島から命をもらい、今自分は生きていると…。
社会にいた頃のセイは、遠くばかりを見ていました。
手の届かない高いものや、手に入らない眩しいものを、モニター越しに。
現実を認識するほど、そこには行きにくくなる。
現実も実体も「邪魔」なものでしかなくなり、自分の認識・存在を失っていった…。
この島は渇きや飢え、暑さや寒さ、痛みや恐怖が毎日、「目の前の現実を、今やらなければならないこと」を教えてくれる。
それがセイなりの答えでした。
「何か……うらやましい……」
マリアの闇はセイの闇と違っていました。
セイの答えでは、マリアの問いに対する答えにはならない。
彼女だけじゃなく、皆個々の闇があり、それに対する答えも違うのです…。
そして廃校グループには大きな変化が。
リョウが大きめの筏を作っていました。
「これで島を出る、この自殺島を!セイ、おまえも一緒に行こう!」
第二十六話 リョウ
今やリョウは、廃校グループになくてはならないリーダー。
そのリョウが「島を出る」とあって、口に出さない不安を抱えるメンバー。
カイの提案で話し合うことになった廃校グループ。
出ていくのはリョウ、ミキを含めた数名。
スギとカイは、島に立てられていた看板の「島の周囲1キロ以上に立ち入ることは『領海侵犯』で、生命の保証はしない」という記載が本当なのではないか。
脱出しようとすれば、殺されるのではないか、と反対します。
が、リョウの意志は固いようです。
「自分の死に場所を、自分で決めたいだけ」
その夜、遅くまで筏づくりの作業を行うリョウのもとを、セイが訪ねます。
「すぐ戻るから…な?待ってろ…エリ…!」
作業に集中しすぎて、思ったことを口に出していたようです。
「エリ」はリョウの彼女でした。
中学の頃に再婚した、母親の再婚相手とそりが合わず、高校もロクに行かず街をふらついていたリョウ。
そんな時に出会ったのが、似たような境遇のエリでした。
2人でバイトして安アパートに転がり込み、やっと掴んだ安住の地。

3年も暮らした頃、いつものようにリョウが運転するバイクでファミレスへ。
路地から国道へ出て、大通りを右折……一瞬の出来事でした。
対向する居眠り運転の車と衝突し、1人遺されてしまったリョウ……。
第二十七話 リョウⅡ
「いいね…2人って……。リョウ…私を…私を1人にしないでね…」

他愛のない会話の中で、よくそんなことを言っていたエリ。
そして夢を見るようになったリョウ。
真っ暗な中を1人歩くエリ…リョウの声は届かない……。
部屋を出なくなったリョウを心配し、バイトの先輩がリョウのバイクを直して持ってきてくれました。
保険で直ったというバイクは、新品同様。
皮肉なものです。
そのバイクを走らせるリョウ。
「あの交差点」に。
赤信号で吹かすアクセル。
2度目の事故。
死線を彷徨ったリョウでしたが、大きな手術を2度行い、必死な医師とスタッフの熱意でリハビリを乗り越え、社会復帰したリョウ。
忘れよう…エリをあきらめよう…そう思っていたリョウでしたが…。
自室で見つけたのは「飴の袋」。
エリがよく食べていたものでした。
避けていた交差点に、再び赴くリョウ。
1ヶ月も前に自分が供えた花が、枯れていました。

エリに花を供えるのは、リョウだけだったのです。
「1人にしないで…」
エリの言葉を思い出したリョウは、赤信号の交差点へ…。
今度は大した怪我も負わず…、「自殺未遂常習者」として島に送られてきたリョウ。
エリには自分しかいない。
だから戻らなきゃならない、「あの場所」に。
それがリョウの想いでした…。
第二十八話 出航
2人きりでの話を終え、廃校に戻るセイとリョウ。
「もし帰れたら…!その時は…死ぬ…つもりなの…?」
生きていて欲しいと願うセイに、最後まで「生きる」とは答えなかったリョウ。
その代わり、
「セイ、オマエに会えて良かった」

そんな2人を廃校の教室から見守るミキ。
リョウに密かな思いを寄せる、ミキ。
数日間の航行テストを経た後、快晴の日に出航することになったリョウ。
磁石も持たずに出航しようとしたリョウに、スギがお手製の磁石を贈ります。
言わないでおこうと思っていたことを、リョウが口にします。
「正直もっと早く、おまえらと会っていたら…。会えて良かった…そう思う。だけどオレは帰るよ……オレの場所に」
その言葉を残し、エリの許を目指して出航したリョウ。
筏が見えなくなっても、皆しばらく動き出せないでいました…。
それほど廃校グループにとって、リョウの存在は大きかったのです……。
第二十九話 猟犬
リョウたちが出航してすぐ、セイは狩りのため山に入ります。
リョウがいなくなり、漁で魚が獲れるか…来たる冬への備え…その不安は、イキルの食事にも目を向けられます。

「自分たちの食い扶持は、自分たちで何とかしよう」
そう考えての狩りです。
セイと一緒に遊びながら、猟犬としての訓練を続けるイキル。
山に入ってしばらくすると、セイの心はどんどん静かになっていきます。
行ってしまったリョウの事…犬(イキル)に対する皆の目…冬が来ること…。
そういう事柄が遠くなり、獲物を追う充実感で、心が満たされていくのです。
毎日のように姿や痕跡を追い、行動を把握し先読みし、やっと獲物を追うことができる。
「狩猟」を理解してきたセイと、そのセイの訓練を受けたイキル。
「2人」のコンビプレーで、見事に牡鹿を仕留めます…。
第三十話 漂着
仕留めた牡鹿を捌き、先住人に教わった方法で燻すセイ。
作業は重労働でしたが、セイにとって気が重いのは「その先」のことでした。
今回の狩りで感じたことは、「猟犬」つまり「イキル」の重要性。
それを皆に理解してもらう必要があるのですが、義務や責任を避けるため今まで何かを主張したことのなかったセイにとって、それは気が重くなるものでした。
翌日、シカ肉を持って廃校に戻ったセイは、早速「主張」します。
狩りに入っている間、自分たちは野菜も魚も口にできない。
シカ肉を渡す代わりに、他の食糧が欲しいと。
合わせて、女性を襲ったり食べ物を暴力で奪う、そんな人にも肉を渡さない。
スギが全面的に賛成します。
漁に出ずに魚を食べる者、山に入らずに野草をもらう者、欲望を抑えられない者。

そういう者には食糧を渡したくない、と。
当然、反対する者が出てきます。
「そんなこと言って大丈夫か…?渡さないなら…オレはもう一切、ガマンしない…!ここは無法島なんだ…!渡せよ…いや、もらっていく」
義務を果たさずに権利を主張した挙句、筋道の立たない暴力を振りかざす男…。
不穏な空気が流れる中、廃校に急ぎ走ってくる男性。
「浜に…筏が…っ!!リョウたちが!!」
船をぶつけてきて筏を壊され、銃を撃ってきた…。
丸太にしがみつき、浜に打ち上げられたのは、リョウとミキと男性1人。

その他はどうなったか分からない。
男性1人も、間もなく亡くなります。
「出られないんだ…オレ達は…絶対に……この…自殺島から…!!」














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