マチ(町 洋子・まち ようこ)編③
この記事には「ぼくらの」のあらすじをご紹介するものであり、ネタバレを含みます。
10巻表紙がマチです。
ワクの次に訪れたのは、コダマの遺族です。
パイロット順に訪れる予定なのでしょうか。
出迎えたのは、コダマの2人の兄。
「母は少し、心労がたたっていますので…。
それに言いにくい話ですが、母はあなたたちにどう接していいか、分からないんだと思います。
もう一度、自分の子を失うようで。
実際僕たちも戸惑っています。」
遺族をまわるにあたって、自分たちが皆と同じ運命にあることを、事前に伝えておいたためのリアクションです。
これから死んでゆく人間に会うのは、気が重いだろう。
でもいつか、必ず自分たちのことは耳に入る。
その時のことを考えると、正直に言っておいた方がマシに思えた、というウシロとマチが考えた結果でした。
コダマの父の会社は、小高家と関係ない取り取締役を迎え、経営を続けていました。
2人の兄のいずれかか、或いは母かという話もあったが、コダマの母はそういうのに疎い。
長男は医大で学ぶ身で、次男も父の起こした会社に興味はない、との結論でした。
「ただ、便宜は図ってもらえるので、場所を用意してもらいました。
景気がいいらしいです。ジアース特需とか言って。皮肉な話ですが。」
たしかに、ジアースが暴れて街を壊せば、その分土木建築業者には、仕事が舞い込むわけですからね。
ただ、次男の方は文系から理系に転向していました。
法学部に行くつもりだったが、土木建築にいく、と。
「父の会社を継ぐ気はないけど、地球を相手にするのもいいかなって。」
コダマと、そして父の死を経て、コダマの2人の兄も、その心境に変化があるようです。
次の訪れたのはカコの家。
カコの姉は、カコの言葉を借りれば「偉そう」な姉でした。
「あの子逃げてたんでしょ。街を踏みつぶして。
大丈夫、分かってるから。政府は功のこと立派に戦いましたって言ってたけど。
でもね、あたしはそれが悪いなんて思ってないのよ。
誰だって逃げたいでしょ。当たり前でしょ。
普通の子なのよ。
せめてバカにしないでいてあげて。」
ウシロとマチに、頭を下げる姉。
「あんな子でもね、生きてればきっと、普通に生活して普通に会社行って、普通に結婚して。
多少の失敗や迷惑は起こすかもしれないけど、それでも社会の一員として、それなりに幸せな生活を送る。
あたしがあの子の甘えを絶つような、物言いをしていたのが駄目だったのかな。」
「あのままあの子を、認めてやればよかったのかな。
でも、どうしても気づかせたかったのよね。
キリエ君を下に見てることが、どれだけバカげてるか。」
カコのお姉さんとしては、カコを良い方向に導きたかったんでしょうね…。
何度か書いてますが、相対的にカコがみっともない、格好悪いだけで、あれが「等身大」だと思うんです。
わたしはカコと同じ行動取る自信あります(いらない自信)。
次に訪れたのは、キリエの家。
キリエの両親は、「いかにもキリエを思い起こさせる」そんな感じの人達。
従姉の「カズちゃん」こと、本山和子さんにも会うつもりだったウシロとマチ。
家にこもっているということで、事前に連絡を取っていなかったのですが…。
応対したのは「カズちゃん」の母。
「ごめんなさいねえ、今日は一日出かけていて、帰りも何時になるか。
洋介ちゃんが行方不明になってから、思う所があったようでね…。
最近ねえ、黒い怪獣の被災者支援の、ボランティアに行ってるのよ。」
悩みに悩んだ末に戦ったキリエ。
その戦いは、無駄ではなかったようですね。
次に向かったのはチズの家。
チズの家は、チズが行方不明になって以降、父親は会社を辞め、ジアースの戦闘に巻き込まれた罹災者支援の、非営利組織を立ち上げていました。
もちろん、チズの家族には政府からすべてが話されていました。
そのうえで、チズの家族が選んだのは、チズが「役割以外の状況で犯した罪」を償うことでした。
チズは戦闘時、当時畑飼と付き合っていた姉の市子に止められ、畑飼に止めを刺せず、戦う目的・気力を無くしました。
その時、チズに喝を入れたのがマチでした。
チズの戦闘と、最期を看取ったマチが、擁護します。
「あたしも本田さんのしたことは、許されないことだと思います。
でも、分かってあげてください。
本田さんは1ヶ月ちょっと、自分の死を見つめながら、それに耐えていたんです。
自分が間もなく、理不尽な理由で死ぬ身だからと言って、他者の死に無神経であっていいとは思いませんが、でもそれもまた人間なんだと思います。
家族の人だけは許してあげてください。」
涙を流す、チズの家族。
マチの言葉で少し救われたとはいえ、「償い」の継続には苦しい台所事情。
それは佐々見さんの耳にも入っており、
「資金繰りはかなり厳しいようだな。
退職金と家を担保にした借入くらいじゃ、たかが知れてるだろうし。
色々なところに寄付を募っているようだが、いくら企業イメージが上がるとはいえ、先行きの見えづらいこの時期ではうまくいかんだろ。
結局、自分の財産を食いつぶすだけで、それでも彼らからすれば、娘の償いのいくばくかにもならないんだろうが。
政府からの補償?
話がないわけではないが、実現は難しいだろうな。
所詮選挙がらみのパフォーマンスだよ。
何せ今の政府には金がない。
出たとしても、雀の涙程度だろう。
政府はあてにならんよ。
言ってて申し訳ないが。」
佐々見さんの言葉には、もどかしさや苛立ちも感じられますね。
最期にチズの姉・市子と話をするウシロとマチ。
「私たち家族には、他の人が不通に期待する普通の幸せというものは、もうないと思います。
でもどんなに大変でも、千鶴のためにその償いをしていけることは、私たちには幸せなんです。」
チズの最後の回でも、市子のエピソードがありました。
キリエが畑飼に行った際、畑飼が市子を「貴重」と言っていました。
「千鶴のために償いをしていけることが幸せ」という市子に、やはり「特別感」を感じますね…。
最後に、畑飼について聞くマチ。
チズの戦闘の後、何があったかを悪びれる様子もなく、市子に語った畑飼。
2人が別れることにしたのは、キリエが畑飼に会う前のことでした。
「今は政治家を目指しているそうです。
末は文部省の大臣だとか。
コネがあった与党議員の秘書として、走り回ってます。
彼には彼の考えがあるのでしょう。」
教え子のチズと性的関係を持ち、ムービーを撮って口封じしたうえで、「友達」にチズを提供。
結果、畑飼の「友達」に繰り返し弄ばれたチズ。
そして妊娠が発覚したチズが、それを畑飼に告げると、「出産ムービーが撮れる。大丈夫、子供は死んでたことにしておくから。」と非道な反応。
しかも、被害者はチズだけではなさそう。
そんな畑飼が大臣…本当にそうなったら、世も末ですね。
その日の最後は、マキの家を訪れます。
いきなり「お尻っ!」と言われ、尻を叩かれるウシロとマチ(マキも怒られるときは、同様にお尻を叩かれてました)。
「親が!どんな気持ちで!!勝手にそんな…そんな…そんな勝手なこと…
そんなことは子供のすることじゃないのに…オレ達が何とかするのに…
4人の生活を夢見てたのに…」
血の繋がらないマキを養女にし、「自分たちの宝物」と言っていた、マキの両親。
マキの働きかけで不妊治療し、やっとのことで授かった命。
マキが文字通り「命を賭けて」守ったマキの弟「一記」。
ウシロに抱かれて「おぎゃあああ」と大きな声で泣く一記。
その声の大きさに驚きながらも、
「マキなみのでけえ声」
優しく微笑むウシロ。
みんなの「残された人達」をまわる旅は、もう少し続きます。
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