カンジ(吉川寛治・よしかわ かんじ)編④
8巻表紙がカンジです。
【本記事には「ぼくらの」のネタバレを含みます】
ハワイ・オアフ島の敵ロボット(私が勝手に命名、穴なしバウムクーヘン)に対し、アメリカ政府から日本政府に、攻撃が依頼されます。
核を使った攻撃を。
しかし、日本に核はありません。
作戦には、那覇基地奪還戦の鹵獲品を使うことが決まります。
「ぼくらの」の世界では国を守るのは「国防軍」で、米軍は日本に駐留していないようですね。
現実にはない「那覇基地を奪還する戦い」があり、その鹵獲品として日本は核を保有しているようです。
※鹵獲品(ろかくひん)とは、「戦地などで敵対勢力から奪った装備品(兵器)や補給物資」です。
前の記事でも書いた通り、米軍が自国内に核を落とすことはできません。
そのお鉢が、日本に回ってきたのです。
しかしこの展開、田中さんはあらかじめ読んでいました。
すでに無人給油機をハワイ経路に飛ばし、核の手配を進めていました。
佐々見さん曰く「制服を着せておくのがもったいない」。
デキる女性なんですね、田中さん。
人類が手にできる最強の力である「核」。
通常兵器では敵ロボットに敵いませんでしたが、はたして核は効くのでしょうか。
国防軍が核攻撃の準備に奔走している頃、ジアースの戦いに大きな変化が起きていました。
敵の砲撃を足に被弾し、片足を失ってしまったのです。
ますます不利な戦いを強いられるジアース。
一層、核の効果に期待したいところです。
核ミサイルを積んだ戦闘機が、米軍領域内に入ります。
ネゴがなければ、撃ち落される状況。
慎重に、敵ロボットに近づく戦闘機。
予定通り、敵の急所に核を投下……。
激しい爆風。
立ち上がるきのこ雲。
効いたのか……?
まだ、爆発の煙も晴れ切らぬ中、例の超長砲身からの砲撃。
残念ながら、人類の切り札は通用しませんでした。
戦闘が始まってから27時間。
48時間のリミットがあるので、残りは21時間。
足を無くしたジアースが、敵ロボットに辿り着くことは不可能です。
「移動する気があるところを見せて、接近戦に持ち込めませんか?」
カンジの提案に対し、関さんは
「沖天楼のことはもういい、ということかい?」と返します。
ジアースが移動すれば、移動前のポイントに放たれた砲弾は、確実に沖天楼を破壊するでしょう。
カンジのお母さんの墓標ともいえる、沖天楼。
それを失っても構わない。
あれだけ沖天楼にこだわっていたカンジが、もうなりふり構っていられない。
長時間の戦闘で、睡眠もとれず頭も回っていないでしょう。
すると関さん
「寛治君は他の子に、その子のわがままで地球が滅んでも仕方ない、と言ってきたね」
確かにそうです。キリエのときもそうでした。
「僕が君にそれを言ってあげる。寛治君のわがままのせいで、地球が滅んでも仕方ない」
最後まで沖天楼の近くで、沖天楼を守って戦いたい。
そのわがままを曲げるな、という関さんの優しさ。
「でも、自分は軍人だから、最後まであきらめず、道を探す」
「コエムシ、レーザーって敵に届くだろ?」
珍しく自分から話し出すウシロ。
「ああん?」
コエムシのリアクションはいつも通り。
「カンジ、どうしてもって言うなら、勝つ方法はある。地球上の物質なんて、途中にあってもなくても同じだろ?」
「それはそうだろうけど…でもどうやって敵を狙うんだ…?」
確かに、レーザーなら敵に届くんでしょうが…肝心の敵、どこにいるか(ハワイ・オアフ島にいますが)ジアースからの正確な場所が分からなければ、攻撃できません。
ウシロの策に気づいたカンジ。
「あ!……あぁ!?…いや、それ、ダメだろ…!!」
「人をマーカーに使う」
ジアースの足元で、行方不明者の捜索が行われている際、ジアースの能力(命の場所が分かる)で生き埋めになっている人を探しました。
遡ればチズの戦いの際は、チズを輪姦した男たちを探すのに使った、ジアースの能力。
人の命の場所が分かる+特定の人物がいる場所が分かる
これを使えば……要は、敵ロボットの付近にマーカーを配置し、そこにレーザーを撃つ、という策です。
マーカーは人なので、人に向かって撃つ、ということになります。
なかなかに厳しい策です。
パイロットの精神的に。
「人の魂を的にする。もちろん、カンジがよく知っている人」
「人がいる」ことが分かっても、それが誰か分からなければ、狙いようがありません。
カンジが知っている人がいて、「そこに撃てばいい」という状態でなければ。
「私が適任だと思う」
手を挙げたのは関さん。
「私が、マーカーになる」
カンジの戦いは、予断を許さない状況です。
かなりの劣勢。
そこに見えた光明。
敵急所付近に立つ、関さんに向けてのレーザー照射。
カンジは、次のパイロットにバトンを渡せるのか…。
「ぼくらの」
無料試し読みはこちらでどうぞ!
コメント