「自殺島」(作者:森恒二さん)第8巻あらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます。
第七十一話 未来
「持たざる者」と言っていたボウシは非常に手先が器用で、延縄漁用のカヌーやヤギ捕獲機、農具などを作って皆に頼られるように。
農家が嫌で家を出たミノルは、農家の知識を生かして廃校グループの農業・畜産を先導します。
ヤギを飼い始めたことによってヤギの乳が採れるようになり、チーズ作りを始めようと計画したり、偶然見つけた種もみから、冬を越したら稲作を始める計画を立てたり…。
自分たちの手で「未来」を閉じようとしていた者たちが、自分たちの手で「未来」を切り拓くように変わっていったのです。
そして種もみと一緒に見つけたのが…「焼酎」
ミキとリョウ、セイとリヴを見ていたレイコが「私も恋がしたい…」
話を振られた元看護士・タエが「私…してるかも…恋……ボウシに……」
まさかの告白に卒倒するボウシ。

宴の翌朝、海に向かって歩くセイ・リョウ・スギの3人。
遠くに見えたのは……船……。
第七十二話 第二陣
船を見つけ、自分たちが脱出しようとした際に受けた仕打ち(第三十一話)を思い出し、怒りに震えるリョウ。
全力疾走で船を追いかけますが、港から離岸していく船に追い付くはずもありません。
それより船が来たということは…「第二陣」が送られてきたということ。
セイとリョウは港に急ぎます。
自分たちが島に送られた時のような、惨劇を防ぐために…。
港に到着する前に、送り込まれた数名と接触します。
何が起きているのか、ここがどこなのか分からない者たちに、冷静に「自殺島」の説明をするセイ。

スギが仲間を呼んで港に向かってくるため、そっちの方向に彼らを誘導し、「ひどい事になっている」という港を目指します。
崖から飛び降り、重傷を負ったもの、命を落としたもの、それらから服を剥ぎ取るもの…。
「助けられる人から助けよう」
動く気力の無い者たちを、何とか説得して廃校に向かわせます。
その中には島に送られる者には珍しい、中年男性の姿が。
『とうとう潜り込めたぞ…この……自殺島に…!!』
「自殺島」の存在を知っている風の、この男性の目的とは…?
第七十三話 侵入者
船は夜間に着いたらしく、ほとんどの人達を救えなかったセイ達。
救えた十数人も皆一様に不安げで、「更生プログラムか何かじゃ…」と、自分たちの置かれた現状を理解できていない様子。
そんな彼らに、自分たちがどうやって生き残ってきたか、これからどうすればいいのかを説明するリョウ。
「生きるために働き、オレ達と一緒に生きて欲しい」
と説くリョウ。
応えたのは半数程度でした…。
延縄を引き上げ、リョウとセイは海に潜り、スギたちは浅い岩場で貝や小魚を獲ったり、釣りをしたり…。
その間、件の「中年男性」は一つ一つに感心しながら、精力的に作業に参加します。
今日送られてきたばかりの「未遂者」とは思えないくらいの元気さで。
「オレは未遂者じゃない。ルポライターの織田ってモンだ」

政治家の不正資金の流れを追っていたところ、ぶつかったのが「超法規的特別自治区 通称『自殺島』」
彼は自殺島に「潜入取材」に来たのです。
外の仲間に自分の居場所を伝えるために、GPSを飲み込み、便と一緒に出してまで…。
第七十四話 最初の夜
その夜、いつものメンバー、リョウ・セイ・スギ・トモに加え、ミキ・レイコを加えての話し合い。
「潜入取材」に来た織田の存在を共有することと、「最初の夜」を迎える彼らをどうするか、です。
島を出ようとし、機銃で撃たれた過去のあるリョウは、この島に仲間が来るなんて不可能だから、織田のことは放っておこうと。
そして今日来た「彼ら」について……自分たちが島に来た時同様、「最初の夜」が一番危ないことは重々承知していました。
しかし、生きる意思のない人間を四六時中監視は出来ません。
「彼らの意思に任せる」最終的な結論でした。
翌朝、数名が命を絶っていました……。
朝食時、織田の話では「30~40人はいた」という第二陣が、ずいぶん減ったという話に。
おそらく向こうの、港側のグループにも何人か行ったのではないか…。
第二陣の1人の男性が、港にいたはずの更生施設で一緒だった女性がいないことに気付き、港側のグループに行ったのではないかと心配します。
しかしサワダの恐ろしさを知る廃校グループの面々は、「その子のことは諦めろ」と。
しかし、どうしても諦めきれない彼。
「正面から行くのは難しいけど、偵察ならどうかな」
と助け船を出すセイ…。

第七十五話 偵察行
好戦派のリュウも賛成し、偵察は決行されることに。
リュウ曰く、「サワダが最後の問題で、それさえ解決できれば…。逆にあいつがいる限り、オレ達に安心は無い」
寝ている間にサワダを始末しようと提案するリュウ。
お調子者のケンが、珍しく真面目なトーンで「それは難しい」と。
元々港側のグループだったケンは知っていました。
サワダが奥の部屋に鍵をかけ、一人で寝ていることを。
その前の部屋に、女性を全員寝かせていることを。
そして女性陣が、サワダを信仰していることを。

ストックホルム症候群的なものかもしれませんね。
今回の目的は偵察と、可能であれば探し人の女の子を助け出す事。
男性陣だけでは女の子も付いて来ないだろうと、自分も行くと志願したミキも参加し、夜を待って港側のグループの拠点に。
探し人の女性は、彼にとっての「想い人」のよう。
しかし現場に着いて皆が目にしたのは、サワダが扇動する乱交パーティー。
その中には「想い人」の彼女も……。

第七十六話 罠
冷静さを失いかける「彼」を連れ、引き下がるリョウたち。
援護のため山にいたセイには、何が起きているか分かりません。
注意しながら近づこうとするセイに、山に張り巡らされたトラップが襲い掛かります。
その中には、侵入者を告げる「鳴子」も。
音に気付いたサワダの一声で、港側のグループ男性陣が武器を持って出てきます。
鎌を持って襲ってくる相手に、丸腰で話し合おうとするリョウ。

すかさずリュウが助けに入ります。
「バカヤロウ!!こいつらは本気だ!やらなきゃあ殺られるぞ!!」
女性で唯一、偵察に参加したミキが連れて行かれそうになるのを、イキルとセイがコンビプレーで阻止。
「また人を射殺すの?同じだ。君も僕も」
弓を構えるセイの前に現れたのは、カイ。
第七十七話 戦いの予感
「もう戦いは避けられない。終わりだ、僕らは」
その場は逃げきった廃校グループですが、カイの言う通り「戦いは避けられない」状況のようです。
港側のグループが設置した罠は、明らかにセイへの対策。
今まで行き当たりばったりだった港側のグループが、そんな罠を設置したのは……カイの助言です。
守りを固めたうえで、襲撃する意図がある。
スギはそう読みます。
「本当に戦えるのか?オレ達にそんなこと出来るのかよ…人の命を奪うなんて……」
なるべく戦いを避けたいリーダー・リョウ。
しかし、リュウもケンも、覚悟は決まっているようです。
「オレはここを守りたい。戦いになって人を殺す事になっても、だ」
そんな中、「第二陣」で島に送られ、廃校グループに入り偵察にも同行した太めの男性の姿が見えません。
偵察時に「乱交」を見て、港側のグループに移ることを望んだようです。
女性とやりたいからこっちに来たいと。
「今一度戻って彼らと生活し、リョウかセイどちらかを殺してくること」

カイの提案にサワダも乗ります……。
第七十八話 刺客
カイから「廃校グループに戻り、セイかリョウどちらかを殺してくること」を言い付かった、第二陣の男性・鈴木ノリオ。
偵察後、彼の姿が見えなかったことを気にかけていたセイとリョウ。
ノリオの帰還を素直に喜びます。
が、ルポライターの織田は知っていました。
ノリオが港まで自分たちと一緒に逃げて来て、その後にいなくなっていたことを。
港側のグループと接触したことまでは把握していないものの、「何らかの理由」でいなくなったことは、容易に推測できます。
織田に疑われながらも、セイ・リョウ殺害のため、2人と出来るだけ行動を共にするノリオ。
カイから渡された短刀。
「切るんじゃない、刺すんだ。きちんと根元まで。ここに治療できる人間はいない。内臓を傷つければ必ず死ぬ…」
リョウだと体格差で負ける可能性がある、狙うならセイ…。
草むらで用を足そうとしたセイを追いますが、イキルに邪魔をされます。
昼間は諦め、夜に計画を実行しようと画策しますが、セイはイキルと一緒に見張りを兼ねて1階で寝ると。
ターゲットをリョウに変更し、リョウの隣で寝たふりをし、短刀を取り出すノリオ…。

第七十九話 ノリオ
「人は皆平等」
という「嘘の設定」で教育を受け、生きてきたノリオ。
当然、成長と共に「不平等」であることを思い知らされます。
容姿、体力、経済力……。
中学時代、前の席の女生徒が落とした消しゴムを拾ったノリオ。
女生徒に渡そうとすると……困惑の表情で差し出されたのはノート。
「ここに消しゴムを置け」という意思表示だと知った時、ノリオは理解しました。
この先マジメに頑張っても、たいしたいい事は起こらない。
年を追うごとに、嫌なこと、辛い事が増えていくんだと。
リョウを殺し、これからの人生を変えようとするノリオ。
が、なかなか実行できません。
「やめとけよ」
声を掛けたのはルポライターの織田。
ノリオが港側のグループと接触したことも、「リョウを殺してこい」と言われたことも、お見通しでした。
女を抱きたいがための行動というところまで、見透かしていた織田。
ナオの所に連れて行き、経験させようとしますが……ノリオの望みは「キス」
ナオとのキスで満足したノリオは、セイ・リョウ殺害を止めます。
「命拾いしたな~」

という織田の言葉に、セイ・リョウとも「???」です。
第八十話 盾
集落一の道具屋、ボウシが作ったのは「盾」
来たるべきサワダたちの襲撃に備えての策です。
最初はその効果に疑問を抱いた面々ですが、実際に「練習」してみると、その効果は抜群でした。
スギ曰く「攻撃と防御、仕事が分かれるから有利」だと。
ただしその分、攻撃が片手になるため、威力は半減します。
武器の殺傷力を上げないと、と提案するスギに、穏健派のリョウは反対します。
すぐさま好戦派のリュウが反論しようとしますが……割って入ったのはスギ。
スギも穏健派で、これまでの揉め事では常に腰が引け気味でした。
そんなスギも、サワダ相手には覚悟を決めたようです。
「これは遊びや競技じゃない…相手はこっちを殺しに来るんだ!リョウがそんな事では困る。もっと現実的になってくれ」

一方の港側のグループ。
ノリオに授けた作戦が失敗に終わった事は、カイにとって想定内だったようです。
「リスクなしで、出来れば楽になるだけ」
まどろっこしいのが嫌いなサワダは、
「明日、奴らを襲いに行くぞ」
カイの反対を押し切り、急襲を仕掛けます……。
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