「自殺島」(作者:森恒二さん)第7巻あらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます。
第六十一話 僕らの場所
セイが山に入っている間、廃校の近くに鳥小屋があるのを見つけ、付近からニワトリを探し出したリョウとスギ。
また、延縄を仕掛ける過程で、離島にヤギがいるのを目にします。
ニワトリにヤギ…捕獲でき、繁殖させれば畜産が実現できます。
立地的に畜産が盛んだった、港側のグループリーダー・サワダから得た情報ですが……。
無意味だと思われたサワダグループとの「交流」も、全くの無駄ではなく得るものはあったようです。
セイが戻ってきたところで、早速離島に上陸してヤギを捕獲する計画を立てますが……。
「オレは遠慮するわ…そこまで積極的に生きられない」
「私も…」
カイと行動を共にする数人が、「家畜なんて人間のエゴ」と離反します。
カイの事、サワダの事、心配事は尽きませんが、それでも廃校グループは確実に「積極的に生きる」方向に変わっています。
翌日、早速希望者だけで離島に上陸し、ヤギの捕獲を試みます。
獲物はボウシの作った「ヤギ捕獲機」。
離島に渡るためのカヌーもボウシが作っており、すっかり廃校グループの「名職人」です。

「地球上で邪魔なのは間違いなく人間だ」
カイの言葉に相反する事実に、セイが気付きます。
離島にはヤギの天敵がおらず、増え続けたヤギは草木を食べ尽くす勢い。
このままでは増え続けたヤギも生きていけなくなる……。
離島の生態系を守るには、ヤギを「捕食」する存在が必要なのです。
『人間の役割も、居場所もきっとある』
そう確信し、ヤギを追うセイ。
第六十二話 僕らの在る意味
イキルにも手伝わせたヤギの捕獲ですが、「猟犬」に育てたイキルは勢いあまってヤギの喉元に噛みつき、致命傷を与えます。
やむなく止めを刺し、そのまま解体作業に入るセイ。
女性陣は「今日は捕まえるだけって……何で殺すの!?」と困惑気味。
冷静なスギは、手負いのヤギを治療することは出来ず、セイの判断は正しいと。
加えて、自分たちがいつも食しているシカ肉は、ああやってセイが手に入れてくれるものだと諭します。
仕切り直してもう一度捕獲にトライ。
イキルはロープに繋ぎ、機動力でなく吠え声でヤギをコントロールします。
日も傾いたころ、やっとのことで5匹のヤギを捕獲。
その夜は離島に残り、捕獲したヤギの前で、昼間イキルが殺してしまったヤギを食すという微妙なシチュエーション…。
そして、自分たちがこの島に「必要な存在」であることを説く、セイ。
スギも同調します。
「この島に調和をもたらすことができるのは…僕ら…人だっ……!!」

「奪うだけじゃなく、与えるだけじゃない。この島に寄り添って…生きていいんだ、僕らは。廻る命の輪の中で」
しかし、そう考えない者がいるのも事実。
本島に見える灯りは…危険な男・サワダの率いる港側のグループです…。
第六十三話 日々を暮らす
捕獲したヤギを連れ、本島に戻った廃校グループ。
ケンの発案で、廃校の校庭でヤギを放牧することにします。
塀で囲まれた廃校は、ヤギが逃げ出す心配もなく、放牧にはうってつけです。
ヤギを連れ、廃校に戻った面々を迎えたのは……以前セイ達から魚を奪った「諦めた者達」。
もちろん彼らの目にヤギが入らないわけはありません…が、リョウもいるため迂闊に暴力に訴えるわけにはいかず、おとなしくその場を去ろうとします。
そんな彼らに、何やら話しかけるリョウ。
離島から戻る前、イキルと狩りに出たセイは、2頭のヤギを仕留めていました。
廃校に戻った夜は、ヤギとジャガイモのスープのご馳走です。
そこに現れたのは「諦めた者達」。
その手には野草や果物が…量は少ないものの、彼らなりに頑張った様子。
リョウの考えは、「諦めた者達」を仲間にする事。
グループに敵がいなくなれば、それが一番安心だから。
「あいつならそれが出来るかもしれない」とは、スギの言葉。

第六十四話 罪と罰
廃校でのヤギの放牧を実現したグループは、「もっと頭数が欲しいなぁ」「また走り回るのかぁ…」と談笑を。
そこに手負いで現れたのは、「諦めた者達」の1人。
「諦めた者達」は全部で4人で、3人は昨夜野草と果物を持って来た者、もう1人は……第八話でセイから暴力でバナナを奪ったあの男です。
その男が「ヤギとニワトリを奪う」とキレ出し、他の3人を襲ったのです。
廃校に来た1人は、他の2人を置いて逃げてきてしまったと。
リョウとスギ、遅れてセイとケンが到着しますが、鉄パイプでボコボコにされた1人は重傷…。
その後もナオを襲うなど、完全に壊れた様子。
ナオを襲われ、「このまま生かしておくのは危険」と判断したケンは、独断で彼を「始末」することに。
河原に1人でいるところを、弓矢で撃ち殺します……。

第六十五話 ケンと杉村
翌日「彼」の遺体が発見されます。
自殺でも事故でもない、「誰がやったのか」も明白ですが…誰もそこに触れません。
しかし、当の本人ケンは罪の意識からか、食欲もなく眠れず、顔色も悪くなっていきます…。
そんなケンを、釣りに誘うスギ。
延縄のエサ用の魚を釣りに行くのです。
「いつものオマエは…良い事が起こるとハシャギだし、事件が起こると大騒ぎし、美味いものやエロいものに過剰に反応し、言いたいこと言い遠慮も全くしない。オレはオマエが…うらやましい」
自分と違い、素直に生きられるケンを羨ましいと言うスギ。
物書きになりたかったスギは、大学を出るとバイトをしながら創作活動をはじめます。
対人ストレスと戦いながら、社会でやっていく自信のなかったスギは「1人で幸せを得る」と信じ、机に向かいました。
しかし物語の世界も、社会との窓口を通らなければ世に出ることは無く、結局コミュニケーション能力の高い者が先に行く…。
唯一の道が閉ざされたスギに残された、最後の道は……。
そうして自殺島に流されたスギが、この島で気づいたこと。
「人生は……一人だけでは味わいにくいということだ」
ケンのような素直なヤツがいると、良いことも嫌なことも共有できる。
「だから…な、オマエのやった事、オマエの辛いことも全部……共有するぞ。オマエのしたことは、オレのしたことも同じ。分かったな」

不器用ながら真っ直ぐなスギの言葉に、涙するケン……。
第六十六話 ミキ
廃校グループ内では、女性陣の中心的存在のミキ。
そんなミキですが、社会にいた頃は「男性に依存し過ぎる」タイプで、いつも男性が自分の元から去っていく…。
それを悲観し、服毒(睡眠薬でしょうか)を繰り返したのです。
そんなミキはこの島に来て、持ち前の運動神経で、漁でもヤギの捕獲でも男性顔負けの活躍を見せます。
そして、その視線の先にはいつもリョウがいました……。
しかし、リョウはミキの気持ちには「気づかない」のか「気づかないフリ」なのか、応えてはくれません。
自分の思い通りにならない腹立たしさから、「売春婦」ナオに当たるミキ。
ナオからはイライラの原因を言い当てられ、更に感情的になるミキ。
自分を心配してくれるトモにまで、当たり散らすミキ。

そんな様子を見ていたカイは、「大丈夫?」とミキに近づきます……。
第六十七話 ミキの決断
「ミキは一番頑張っている。男たちと一緒に海に潜り、女たちと一緒に食事の準備をし…ここで一番頑張っているのは君だ。それに……辛い気持ちを抱えながら、いつも明るく振る舞っている」
誰も気づいてくれなかった辛い部分をカイに言い当てられ、大声で泣き出すミキ。
「ずっと見ていたからね…君を…」
自分を見ていてくれたカイが「一緒に逝くかい?」と死に誘います。
ちょうど狩りから下山してきたセイとイヴ、カイとミキが連れ立って歩く姿を見て、危険を感じます。
急いで2人を追うと、廃校舎内でトモが「さっき2人で屋上に…」
止めようとしたトモでしたが、自身の性のことで当たり散らされたばかりのトモは、その勇気が出ませんでした。
トモも連れ、3人で屋上に向かうと……今まさに屋上から身を投げんとするカイとミキ。
が、やはりカイ自身は死ぬ気がなく、スッと体重を後ろに。
ミキだけが屋上から宙に放り出されたところを、トモが間一髪のところで助けます。

「ぼ…僕が何か言える立場じゃ…ないかも知れ…でもっ……死んでほしくない…!!ほしくないんだ……」
本当に自分を身を案じてくれるのは誰なのか気づいたミキは、トモと抱き合って泣きだします。
そして、やはり弱った人間を「死に誘って」いたカイ。
「もう…ごまかされない…僕は…カイ!君を許せない!」
セイとカイが対峙…。
第六十八話 決別
「ご…ごめんね、セイ。ビックリさせちゃったけど…カイはただ…私を……」
カイを庇おうとするミキですが、
「『一緒に逝ってあげる』、そう言われた…」

「『辛い気持ちに耐えながらよく頑張った』『君を見ていたからわかる』」
ミキ同様、カイから「死に誘われた」リヴとトモの口から、ミキが言われたのと同じ言葉が出てきます。
事態が呑み込めないミキ。
騒ぎを聞きつけたスギ、リョウらが屋上に上がってきます。
サオリの死を「カイによる殺人」と疑っていたスギは、この状況にピンときました。
弱った人間を死に誘い、迷っていたサオリを自らの手で始末したのが、カイであると。
カイの言い分は「人間のエゴに失望した。この世界に人間は不要だ。この島にもね」
そのまま廃校を去ったカイ。
が、彼にはやり残したことがありました。
「初めから…こうすべきだった。全てが調和した、静かな世界に人はいらない。さよならだ、セイ…」
廃校舎に火を放つカイ……。
第六十九話 セイとカイ
ボウシが見つけ出した消火器などで火事を消し終えた頃には、もう夜が明けようとしていました。
イキルが吠えてくれたため、早く火事の発見ができたものの、そうでなければみんな死んでいたかもしれない…。
「見つけ出して…殺すんだ!!!」
好戦派のリュウは殺る気満々です。
争いを好まないリーダー・リョウも、リュウの意見には反対できません。
仲間を募ってカイを見つけ、殺すというリュウ。
第十二話でケンカの末、結果相手を殺してしまったリュウは、しばらくその罪に苛まれていました。
「オレが…殺す…。殺ればしばらく…眠れないぞ…。ひどい悪夢も見た…。オレは一度やっちまったから大丈夫だから…。その代わり……前の…アイツのこと…許してほしいんだ……」

気丈に見えたリュウも、悩み、苦しんでいたのです。
カイを探しに山狩りに出たもの以外は、火事の後片付けです。
1階に置いてあった干物はほとんどアウト、この先の食糧事情に不安が…。
山に入るというセイに、
「こんな時だから普通にやろう。食い物は基本だからな」
と賛成するリョウ。
セイはリヴと共にシカを射るため、山に入ります。
狩場に着くと、イキルの様子がいつもと違います。
そこにいたのはシカではなく、カイでした……。
第七十話 邂逅
カイを見つけ、咄嗟に弓を構えるセイ。
両手を挙げ、反撃の意思のないカイは
「殺せ。できないなら僕は行く」
ゆっくり歩み始めます。
皆のために、射なければ………結局カイを射ることができなかったセイ。
走るでもなく、振り向くでもなく、カイは行ってしまいました……。
その後、無事にシカを仕留めたセイは廃校に戻り、いつも通りか、それ以上に明るく振る舞います。
それは他の皆も同様で、深刻なことを忘れようとするかのように、仲間を失ったこと、その仲間に殺されそうになったことを受け入れる必要があったのです。
カイを射ることができなかったことを、リョウ、スギ、トモに打ち明けるセイ。
この3人は争いを好まないため、結論は「仕方ない」と。
一方リュウやケンは、時折カイの捜索に出ているようでした。
その捜索対象・カイは、港側のグループの前に現れました。
「正直…困窮している。できればここに置いてほしい」
やつれたカイに、港側のグループリーダー・サワダは、自分への服従を誓わせます。
そして、未だ廃校グループも自分のものにしたいサワダ。
「2人殺せば手に入る。リョウとセイ…求心力のあるリーダーと、優秀なハンター。この2人がいなくなれば、集落は解体するだろう」

呆気ないほど簡単に、元仲間を売り飛ばすカイ……。
コメント