【この記事では「監獄実験~プリズンラボ~」第10巻のネタバレ・あらすじをご紹介します。原作: 貫徹/作画:水瀬チホ】
監獄実験はこの第10巻が最終巻。
いよいよお話も完結です。
米澤の野望
息を吹き返したとはいえ、瀕死の状態の桐島彩。
その桐島彩の姿に、自分が殺した入瀬都を重ね見る原川。
『死ぬなよ……俺が…助ける……!』
撃たれた左足を引きずりながら、原川は走ります。
藍都に横腹を刺された新村は、自分で治療しようと医務室を訪れます。
しかし、医師が引き払った医務室に、治療道具は残っていませんでした。
街の病院に行くにも、自分で運転できる状態でもない。
田島に電話をし、田島の運転で病院に向かおうとします。
その電話を奪い取る米澤。
「医者はさっき帰ったばかりだから、呼び戻して治療させた方が早い」と進言したうえで、秋山奈美を連れたままの田島を迎えに行かせると。
米澤は、三崎由乃と長峰、そして藍都と原川も、自分一人で始末するつもりです。
真のボスである新村に恩を売り、組織内で一気にのし上がるチャンス。
そう考えての行動です。
エレベーターホールで1人、三崎由乃と長峰が上がってくるのを待つ米澤。
エレベーターに乗っていたのは長峰のみ。
真犯人は新村だから、一緒に協力してもらえないか。
皆が無事に帰れるように。
米澤を説得しますが、米澤の目的とは相反します。
外からこの組織に来た人間である米澤に、同期も仲間も何も関係ありません。
業を煮やした米澤は、エレベーター内に手榴弾を投げ込んできます。
とっさに逃げ、爆発から逃れた長峰ですが、後頭部に銃を突きつけられます。
しかし米澤が予め新村に頼んで、田島以外の銃はロックさせています。
米澤の狙いは、銃は使われても奪われても厄介であり、最初からそんなものはいらない。
自分には日本刀があり、それで充分お前らを殺せる。
なんとか逃げようとする長峰を、米澤はいたぶるように追い詰めます。
三崎由乃が来るまで、少しでも時間を稼ぐ。
三崎由乃の武器の中から、長峰が唯一持ってきたカッターナイフ。
当たり前ですが、そんなものは全く役に立ちません。
首に日本刀の刃を当てられ、そのまま斬られそうになる長峰。
すると背後から、チェーンソーを持った三崎由乃が。
二人がかりで米澤に対抗し、一時は米澤の日本刀奪い、優勢に立った2人ですが、やはり相手が悪すぎました。
三崎由乃は米澤の蹴りを食らい、気を失います。
一人になった長峰は、簡単に日本刀を奪われ、あっさり形勢逆転……。
ケジメ
その頃、組織の「真のボス」新村は、田島と秋山奈美と合流。
そこに藍都が現れます。
藍都の気迫を感じ取った田島は「嫌な予感がする」と、新村だけ先に米澤のところへ向かわせます。
秋山奈美を人質に取った状態の田島は、まず藍都のナイフを手放させます。
藍都に銃口を向ける田島。
その時……秋山奈美が尿意を堪え切れず、漏らしてしまいます。
一瞬怯んだ田島の隙を、藍都は見逃しませんでした。
田島が突き放した、人質の秋山奈美を受け止め、田島の発砲を避ける藍都。
しかしその一連の動作で、自分で刺した腹部の傷が開きます。
傷口からは出血。
苦しみ出す藍都。
秋山奈美は、桐島彩について聞きます。
藍都が「絞殺」したというのが、本当なのか…。
「彩のこと…本当なの?いや…今更かもしれないけど……私は彩と江山と、3人で一緒に帰りたかった…。彩は江山のこと好きって、言ってたから……」
泣き出す秋山奈美に、
「僕も桐島が好きなのに、何も理解してあげられなかった……。だから今から、けじめをつけに行くよ……」
そう言い残し、新村を追う藍都。
友達
エレベーターホール。
長嶺・三崎由乃と米澤の戦いは、一方的でした。
元々暴力の好きな米澤は、2人を殴り蹴り、ボロボロに。
三崎由乃に至っては、体中の複数箇所を骨折。
動ける状態にありません。
しかし、そんな三崎由乃が倒れながら、少し人差し指を動かしたサインを、長峰は見逃しませんでした。
米澤の気を引くため、幼い頃からの生い立ち、監禁ゲームに関わってきた感想、そして最後に
「あなた達は…身勝手に…理不尽に…何もかも奪っていった……。復讐されるに決まってる…っていうか、絶対許さない…」
恨み言を米澤にぶつけます。
「やれるもんならやってみろよ!」
日本刀を振り下ろす米澤。
しかしその後ろから一瞬早く、三崎由乃のチェーンソーが、米澤の体を真っ二つにします。
命からがら米澤を倒した、長峰と三崎由乃。
「うまいこと協力し合えて、さすが昔からの友達って感じだったよね!」
小さい頃から両親が不在がちで、他人に関心を持ったことのなかった三崎由乃。
「誰かに友達って言われたことがなかったから…だけどそう言ってくれると嬉しいな、ありがとね!」
照れ笑いを浮かべる三崎由乃。
凶弾
直後、一発の銃弾が三崎由乃の頭を貫きます。
新村と一緒に米澤の許に上がってきた、田島の銃でした。
「まだ長峰が残っている!撃ち殺せ!」
という新村に対し、
「三崎由乃には、濱と園枝を殺された恨みがあるけど…長峰はもともとオレたちと同じ施設の人間です。三崎由乃とは旧友だと聞いているし、生かして返そうとした気持ちも分かるから…。オレには殺せない。どうしても殺したいなら、新村さんが自分でやってくださいよ」
と断る田島。
「無理ですよ……新村さんに、そんなことできません。さっき原川さんが言ってました。新村さんは江山さんを殺せないって。自分じゃ何もできない臆病者だから、人を利用するんだって。あなたは無能だから、怪物に憧れたんでしょう?」
三崎由乃を目の前で殺され、怒り心頭の長峰。
思っている言葉を全て、新村にぶつけます。
新村自身が米澤の日本刀を手に取り、
「直接殺してやる」
と意気込むものの、三崎由乃の遺体を前に泣き崩れる長峰を見て、
「田島…俺はちょっと背中の傷が…。やっぱりお前が…」
やはり自分では手を下せないようです。
そこに現れた藍都。
三崎由乃の遺体を目にし、その怒りは極限を超えています。
その目はまるで怪物。
「やっぱり僕は間違ってた…イジメられている時って、理不尽と戦ってる感覚になって、終わった時に妙な達成感を感じるんです…。今日も試練に耐えられた、僕は頑張った、そんな無意味な自己満足。そんなもの、何の意味もない。我慢しても奪われていくだけなのに。本当にくだらない。理不尽を殺すためには…俺が理不尽になるしかない…。理不尽な存在に」
怪物
ナイフを片手に一直線に、田島と新村に向かってくる藍都。
すかさず田島は藍都に向かって、銃を発砲。
1発目は左耳に当たり、2発目は右肩に命中。
しかし藍都の勢いは止まることなく、負傷した右手でなく左手にナイフを持ち替え、田島の顔面を切り裂きます。
ひるんだ田島の背中を刺し、勝負あり。
残すは新村のみです。
その姿を見た新村。
「そう…これだ……。あぁ、なんてことだ!俺が…ずっと見たかった怪物!」
その「怪物」に胸を刺され、力尽く新村。
そして怪物(藍都)も同時に、力尽きます。
長峰の周りには、血まみれの米澤・三崎由乃・藍都・新村・田島が転がります。
監禁ゲームは14日目にして、「主催者死亡」のため強制終了となりました……。
原川愛途
監禁ゲーム終了から一か月後、勝又幸が入院していたと思しき病院。
そこで再会する原川と長峰。
ゲームに参加した皆のその後について、原川の口から伝えるための再会。
監禁ゲームが終わった直後は、みんな死んでもおかしくない惨状でした。
米澤の提言で新村が闇医者を呼び戻していなければ、本当に手遅れになっていた。
そのおかげで、藍都は迅速に応急処置を受けた後、病院に運ばれて助かったのです。
「江山さん、助かったんですね…良かった…。じゃあ由乃ちゃんも…」
淡い期待を寄せる長峰ですが、原川が遮ります。
「三崎由乃は頭を撃たれ、即死だったよ……」
「あの女は自業自得だ」
そう言って現れたのは田島。
藍都に顔を切られ、背中を刺された田島でしたが、助かっていたのです。
原川・長峰・田島。
3人が集まり仲直りして、遺恨を残さないよう、原川が2人を呼び出したのです。
しかしボスである新村は死に、組織は解散。
「仲良くする義理もない」という田島。
しかし、「ゲームの後始末」については気になります。
死人も出たし、病院に運ばれた時の銃の傷を見られたら、警察に通報されるのでは…。
しかしそこは原川が綺麗に片付けていました。
新村の資金源は、九字間から継いだ遺産。
原川は九字間の本家に対し、新村が継いだ遺産の「残り全部そのまま返納する」から、今回の後始末を頼みたい、と申し出たのです。
結果、病院や警察への根回し、保護者等への言い訳作りも、何から何までやってくれたのです。
しかしそれは、遺産の金額が大きいといった理由でなく、本家が動いたのはもっと別な理由。
脅しにも近い格好で、
「今回の問題を起こしたのは、九字間の一族の人間。使われたのは九字間の遺産。この件が公になれば、間違いなく九字間の名に傷がつく。あなた方は、先代の名誉を守る必要がありますよね?そちらの手で隠蔽していただければ、僕たちは一生口外しないと約束しますが、いかがでしょう?」
と持ちかけたのです。
新村が受け継いだ九字間の資産のほとんどは、九字間本家に返却したものの、「1千万円」だけそこから抜いていました。
監禁ゲームの勝者に贈られる賞金です。
しかしあの終わり方で、一体誰が勝者なのか……。
桐島彩は名前を当てていないし、藍都は桐島彩を殺して失格…。
原川は答えます。
「監禁ゲームは、監禁者と監禁相手の勝負。なら片方が失格になれば、残ったものが勝者。つまり桐島彩を殺した藍都が敗者で、殺された桐島彩が勝者」
だと。
「病院に運ばれた時は、まだ生きていたのに……」
桐島彩の死を知らされた長峰は、落胆の色を隠せません。
しかし今日は藍都が退院する日。
だから原川は、一つの区切りとして2人を呼び出したのです。
「なら病院に迎えに行ってあげた方が…」
原川に提案する長峰ですが、
「ゲームは終わった…。もう俺たちは関わるべきじゃない。あとは自分たちで決着をつけるさ…」
その一言で長峰は気付きました。
「桐島さんが死んだって…そういう意味ですか」
はじめまして
退院した藍都の帰宅途中。
目の前に現れたのは、秋山奈美。
「江山、退院おめ」
あんな凄惨な事件があった一か月後とは思えない、軽いノリです。
藍都が退院することを原川から聞き、学校で再開するのは気まずいからと、退院直後を待っていたようです。
「学校って…もう行くわけないだろう?僕は桐島を……それにお前の事も、酷い目に合わせたしな……悪かった……」
藍都は桐島彩を絞殺し、原川も「桐島彩は死んだ」と言っていました。
新村を殺した後の藍都は、自分も大怪我で倒れ、気が付いたら病院。
「勘違いしたままでもしょうがないか」
という秋山奈美の一言。
「なんだよ?勘違いって……」
という藍都の後ろに、現れたのは桐島彩。
「恥ずかしがって隠れてたのを、無理やり連れてきたんだからね」
桐島彩は首を絞められて気絶しただけ。
それを藍都は殺したと勘違いしていた。
そして息を吹き返したところを、原川が救ったのです。
原川の言った「桐島彩が死んだ」というのは、「桐島彩が藍都をイジメ、藍都が桐島彩を殺した。それで2人の関係はゼロに戻った」という意味での「死んだ」という言葉でした。
「2人の関係はゼロに戻して、これで終わり。もう僕なんかに関わるなよ」
桐島彩の前を去ろうとする藍都。
しかしその服の裾を、「ぎゅっ」と掴んで離さない桐島彩。
「0に戻ったなら…また1から始めちゃダメかな……!?私ね、江山のことが好きなの……中学の時からずっと……。ずっと私は『いい子』でいなきゃって、張り詰めて生きていてたけど、江山といたあの時間だけは、自然になれた…。私が読書の邪魔してるわけだから、いつかは追い出されるだろうな、って思いながら…。でも…江山はずっと一緒にいてくれた。江山になら、私は自然に甘えられるって気が付いたけど…結局それも自分の手で壊しちゃって……。こんなこと言える立場じゃないけど、自分でも図々しいって思うけど、この手を離したら江山はきっと、私の前から消えちゃうから…だから……」
初めは桐島彩を拒絶した藍都ですが、その実桐島彩から逃げようとしていただけでした。
「やっぱり強いな…桐島は。教えてよ…どうすれば桐島みたいに強くなれる?」
「私、強くない…。ただ必死で掴んでるだけ…」
「僕…いや、オレも桐島さんが好きです。中学の時からずっと…。だからオレも必死になる。一緒にゼロからやり直してください」
「はじめまして」
その言葉で2人は、文字通りゼロからスタートします。
理不尽への復讐
夏休みが明け、2学期。
1学期まで、あれだけひどくイジメられていた藍都。
2学期になってから誰も自分をイジメてこないことに、「逆に何かあるのでは?」と不安に。
秋山奈美によれば、最初にイジメを辞めるって言い出したのは「谷崎」だと。
夏休み前、「便所プール」と称し、藍都の顔を便器に突っ込んでいた男です。
その谷崎が、急に声をかけてきます。
「うちの兄貴に、お前を助けろって言われてんだ。誰かにイジメられたら、俺に言えよ。ストーカーしてるってのも、桐島彩の勘違いだったんだろ?いろいろと悪かったな」
秋山奈美による追加情報。
谷崎の大学生の兄貴が、夏休み中ずっと行方不明で、最近激痩せした姿で帰ってきた。
その兄貴に「学校でいじめを起こすな」と脅迫されたらしいと。
ピンときました。
同級生の「谷崎」は、「谷崎竜二」の弟だったのです。
藍都が谷崎竜二を刺した後、原川が彼を処分したものかと思いきや……。
拘束して拷問にかけ、
「君の弟のクラス内のイジメをやめさせる。もしイジメが起こったら、君はまた僕と遊ぼう…」
それを条件に解放されていたのです。
藍都と桐島彩、2人の理不尽は、これで終わり。
またいつか、理不尽なことが起こっても、何度だってやり直して、最後には幸せになる。
それが、2人の理不尽への復讐……。
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