ウシロ(宇白 順・うしろ じゅん)編②
自分たちの地球での最後の戦い。
マチが亡くなり、そのパイロットに繰り上がったウシロ。
戦闘を待ちながら日常を過ごしますが、不安に怯える夜。
吐き気で目を覚まします。
思い出すのは、妹・カナの戦闘。
田中さんを殺された(正確には、人質に囚われた田中さんが、カナの足手まといにならないよう、自害したのですが)カナは、怒りと悲しみから相手ロボットに猛攻撃。
一方的な展開で勝利します。
相手の「急所」であるコックピットを取り出し、それを潰せば(相手パイロットを殺せば)勝利、というところで…体が震えるカナ。
「………じゃう…。」
兄・ウシロに抱きつき、
「わたし、死んじゃうよぉ!」

眠れぬウシロは、深夜の外出。
向かった先は、例の公園。
カンジの戦闘前に、カンジの口から、自分とカナが本当の兄妹でないと聞いた、あの公園。
上着は、カンジの形見です。
ポケットには、国防大時代の田中さん。
ウシロの「本当のお母さん」。
「お楽しみだな。」
田中さんの写真を見ているところに、不意に現れるコエムシ。
カンジが戦闘服に着替える時に、無理やり押し付けられたジャケットに入っていた、と弁解するウシロ。
「寝られねーか。」
「部屋が暗くなるのが、怖いんだ。
自分の周りに何もなくなるようで、自分が何かと何もつながってないようで、自分がそのまま無くなるようで。
みんなこんなのに、耐えていたのか。」

そうなんですよね、普通そうなんです。
当たり前に怖いはずなんです。
でも、今までのパイロットは「何か」のため、明確な理由をもって戦ってきたんですよね。
ダイチは弟妹のため、マキは育ててくれた両親と、産まれてくる弟のため、ナカマは母のため、等々。
「この世界はおれが犠牲になってまで、守る価値があるのか?
おれが戦っても、くだらないやつはくだらないまま、バカなやつはバカなまま。
キリエともっと話をしておけばよかった。」

確かに、そこを一番考えていたのはキリエでした。
戦闘前だから、自分が死ぬからというわけでなく、普段から大局的に物を見ていたキリエ。
「この世界は、相手の地球を消してまで生き残る価値があるのか」
考え、田中さんに相談し、唯一キリエが見出した希望が、従姉の「カズちゃん」でした。
悩み、苦しむウシロに、コエムシが喝を入れます。
「てめーはゴチャゴチャ考えすぎなんだよ。
考えることは、自分の取って大切な人間を、助けたいか助けたくないか、それだけだろ。
助けろよ、田中未来を。助けろよ、妹を。」

「妹」を失ったコエムシの言葉だから重みがあり、「妹」を失ったウシロには、その辛さが十分わかります。
「実際、てめーらはよくやってるよ。」
めずらしく他人をほめる、コエムシ。
聞けば、コエムシの地球の戦闘では、13人必要なパイロットに対し、その前の地球から来た引き継ぎ役が、13人以上を契約させたために仲間同士で諍いが起こり、信頼感なんてなかったと。
死を免れたパイロットのうち、2人は今でも精神科にかかり、1人は入院したまま。
街の被害も、今の地球の非ではない。
死者数だけで「億」を超えた…。

確かにそんな話を聞くと、今の地球のパイロットたちは、本当に「よくやって」ますね。
「ナカマ」が想いを込めて作ったユニフォームが、みんなを繋いだ。
美子さんに会った際に、マチが言っていた通りですね。
「戦闘の時に、てめーが変な考え起こさなくて済むように、先に言っとく。
並行世界の同一人物ってのは、滅多にあるもんじゃねえ。」
マチのことですね。
「実際この世界の町家には、おれは生まれてねえ。
この世界に、洋子と同じ顔の人間が生まれてたのは、奇跡だぜ。悪フザケだな。
だから敵の地球にカナや吉川(カンジ)がいるかも、なんて思うな。
あとな、自分が何かと繋がってないなんて、寝呆けたことぬかしてんじゃねえ。
てめーは洋子から、好きだって言われたんだ。」

何気に根に持ってるかもしれませんね、コエムシ。
ウシロが妹から告られたこと…。
自宅に戻ると、ウシロの父が起きて待っていました。
「何やってんだ、寝てればいいのに。」
「おまえがもう、帰ってこないような気がして…」
「最後まで悪い息子で、すまない。」
どこかに電話し、深夜の電話の非礼を詫びたうえで、何かを頼むウシロ。
「なあ、順。
お前は悪い息子なんかじゃないよ。
私のほうが、悪い父親だった。
おまえにもっと早く、本当のことを伝えるべきだった。
生徒には自分で考えなさいと言っておきながら、自分の子供を信用できないなんて。
おまえにどうしても、謝っておきたかった。
す……」
ジアースのコックピットに転送されるウシロ。
最後の戦闘、開始です。
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