「自殺島」(作者:森恒二さん)第9巻あらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます。
第八十一話 合戦
「いいかぁ!!オレ達は完全に自由なんだ!!!本能を解放しろ!!獣になれ!!犯し!!奪い!!殺せ!!」
リーダー・サワダが、グループの男性陣を焚きつけます。
その数、15~16人。
ほとんどが鉄パイプを持っています。
廃校に向かってくる一団にいち早く気付いたケンが、走って皆に伝えます。
盾に加え、「殺傷能力を上げた」武器を用意していた廃校グループ。
迎撃の準備は万端です。
あとは気持ちの問題……。
「躊躇はするな」「殺すのが目的じゃない、撃退するんだ」
リュウとスギが鼓舞します。
「分かってるつもりだ……今日は…闘うしかない……」

覚悟の決まり切らないリョウ。
そんなリョウを横目に、戦いは「圧倒的」でした。
無策に鉄パイプを振り回す港側グループに対し、盾と槍で武装した廃校グループは、味方に1人のけが人も出すことなく、サワダたちを退けたのです。
第八十二話 リョウとリュウ
港側グループと廃校グループの最初の衝突で、ケンに槍で腹を刺された男性。
内臓にまで達するその傷は、この島ではどうにもしようのない怪我。
ケンは「自分の刺した槍」だと、自分で止めを刺します。
「飲んで今日のことは忘れちまえ!それしかねーだろ!」
リュウに勧められ、例の焼酎を煽るケン。
「あ、あの……僕らもいいかな…食事……」
それは今日の「戦い」に参加しなかった男性たち。
当然リュウやケンは拒否します。
ミキら女性でさえ投石で塀の守りに入ったのに、何もしなかった男性たちが食事にありつくのは許せない、と。
今は闘うしかない、そういう状況なのです。
リーダー・リョウはその座をリュウに譲ることにします。
闘いよりも話し合いを選んでしまう、そんな自分よりも「今は強いリーダーが必要」だと。

リーダーに就任したリュウは、翌日早速襲撃を決行します。
昨日の今日で急すぎると反対するリョウ・スギ・セイらは除き、有志のみで決行する、と。
第八十三話 再襲撃
襲撃が失敗に終わり、港側のグループは野戦病院の様相。
イラつくサワダにカイが見せたものは「火炎瓶」
島の廃車から集めたガソリンを燃料にして、作ったものです。
せいぜい十本程度しか作れない火炎瓶を、再襲撃に備えた装備に進言するカイ。
「君が王なら僕は臣下のようなものだ。僕は王のために働いてるつもりだよ」
渋々、その進言を飲むサワダ。
その夜、再襲撃を決行する廃校グループですが……今度はカイの逆襲に遭います。
「奴らだぁ!!来たぞぉ!!!」
集落に近づくなり、見張りに見つかった廃校グループ。
続いて出てきたのは「人の壁」
それも裸の女性の壁です。
その中には例の第二陣の男性・タカシの「想い人」・睦美の姿も。
怯んだ廃校グループに、港側のグループは火炎瓶を投げつけてきます。
盾で防いだ廃校グループですが、飛び散った燃料が衣服にかかり、燃え移ります。

想い人・睦美さんの眼前で業火に焼かれるタカシ……。
第八十四話 敗走
炎に包まれ、燃えゆくタカシ。
呆気にとられる廃校グループの男性の胸を、サワダが突き刺します。
躊躇なく人を殺すサワダの様子に、気持ちで劣勢に立たされた廃校グループは、敗走を始めます。
「武装の無い者から襲うんだ!この機に少しでも向こうの人数を減らそう」
サワダとカイが手を組んだ港側のグループに、躊躇はありません。
カイの指示通り、武装したリュウには目もくれず、武装していない男性をボコボコに……。
最終的には武器も捨て、必死に走り逃げるリュウ。
遠くに見えたのは灯り……今日の再襲撃に反対し、参加しなかったリョウ・スギ・セイらが松明を掲げ、弓を構えて待っています。
再襲撃組が心配で、武装して様子を見に来ていたのです。
「まぁ~たオマエか、弓の兄ちゃん」

後ろからゆっくり現れたのは、港側のグループリーダー・サワダ。
第八十五話 苦境で得たモノ
「そっちが先に仕掛けてきた」「こっちは自分たちを守ろうとしただけ」
両グループの水掛け論。
確かなことは、カイは「人間は不要」と島の人間を全て殺そうとしていること。
サワダはそんなカイの目論見など「どうでも良く」、
「気に入らなければ殺す。好きにやるだけだ」
両グループが正面切って向き合った今、戦いを始めればいずれのグループも大勢の犠牲を出すことは明白です。
「腹が減った。帰るぞ」
サワダの一言で港側のグループが引き下がります。
「今夜は久々に肉が食えるからな、わざわざ届けてくれてありがとよ」

「肉」とはもちろん、廃校グループメンバーでサワダらに殺されてしまった男性たちのこと…。
「やめろ……やめ…やめてくれぇ!!!頼む!!食うなんて言わないでくれ~~!!」
今回の再襲撃を先導した、廃校グループの新リーダー・リュウの叫びが響き渡ります……。
その夜、リュウに酒をあおらせ寝かしつけた後、リュウ・スギ・セイの3人で話し合います。
「2人とも…心を決めてくれ……頼む!僕は君らほど大切な人間も、君らほど信頼している人間もいない!だから……頼む!」
心からのスギの願いに、「本格的に戦うこと」を覚悟するリョウとセイ。
一方、いつサワダが攻め込んでくるか分からない状況に、怯え腰のケン。
ナオを連れて一緒に逃げようと説得します。
そのナオは、突然吐き気を催し……。
第八十六話 ケンの決意
「ナオは妊娠している」と結論付けたケン。
ナオを守るため、人一倍働いた後でナオのもとに食糧を運ぶ日々。
一方廃校グループは、港側グループの襲撃に備え、塀の上に有刺鉄線を張り巡らします。
投石用の石を校舎内に準備し、放火対策に用水も準備。
加えて……前回の襲撃で男性陣が減ってしまった穴を女性陣が埋めるべく、弓矢の練習を。
「罪を負っても生きる事を選びたい」

というリヴの言葉に、女性陣も同調します。
そして身重(?)のナオは……自分のために献身的なケンに対し、
「私が一体何人の男とやってると思うんだい?たとえ妊娠(でき)てもあんたの子のわけないじゃん!」
と冷たい態度。
それでもめげないケンですが…。
「まぁ……ここまで……かな……」
断崖絶壁から海に身を投げるナオ…。
第八十七話 バカ
ケンに誘われたセイは、2人で釣りの最中にナオの投身現場に遭遇。
すぐさま救助に向かうケンとセイ。
近くにいたリョウとミキの助けもあり、何とか救助成功。
投身自殺を図ったナオは、所謂アダルトチルドレン。
「いらなかったんだ……私はまだ若かった……いくらでもやり直せたんだ……あんたさえいなければ……」
アル中の母から恨み節を聞かされ、成長したナオ。
自分の「女」を売り、「金」を得る生活。
ナオの「女」と「金」に集まる男。
しかし、いくらお金を持っても破綻する、ナオの暮らし、人間関係……。
目を醒ましたナオは、自分を助けたことを非難します。
「お前が死ぬってことはなぁ……子供を殺すって事なんだぞ!!」
ケンの叫びでナオの妊娠を知ったリョウ・ミキ・セイ達。
元看護士のタエも注意して看ることにしますが、最終的には「本人次第」
翌朝、いつも通りナオに食事を届けるケン。
「オレはただ…オメエと一緒にいたいから…ずっと……。生きててほしいだけだ」

お金のない自分の側に、居てくれる人の存在を知ったナオ……。
第八十八話 イイコ
ナオの妊娠・投身を知り、病院には廃校グループの男性がナオの見舞いに。
病院だから「そういうこと」をするわけでもない。
ナオが来てから男性が「無理矢理」と言うこともなくなった。
ナオの存在意義は「売春」だけでないのかも…。

そう考えるレイコに対し、ミキは反発。
「とにかく私は認めない!」
自分の思ったことをハッキリ言い、行動するミキ。
そんなミキの様子は、レイコの妹・ハナを思い出させます。
マジメな、アツカイやすい、イイコだったレイコに対し、奔放で強情で自由な性格だったハナ。
ハナが問題を起こす度、「あなたは聞き分けがいいから助かるわ」
そう言われることに喜びを感じていたレイコ。
短大を卒業し、マジメに働くレイコに対し、高校を出てから自由に拍車がかかり、家に寄り付かなくなったハナ。
そんなハナが「しくじっちゃった」とデキ婚し、連れてきた男は意外にもマトモ。
実家近くのマンションに住み、子供を連れて実家に来るハナ。
そんな孫を溺愛し、「幸せな家族」の姿がそこに…。
「あなたにも困ったものねー。いつまで一人でいるつもり?ハナちゃんみたいに若いうちに産んだ方が楽よ?」
それまでの「イイコ」を否定され、壊れていったレイコ…。
そんな事を思い出しながら、気が付けば病院に。
院内から出てきたナオに見舞いの品を渡され、
「一人じゃ食べ切れないから……あ~~、あの…助けてくれた……ミキって人?あの娘にでも渡しといてよ」
素直じゃないナオの一面に触れたレイコでしたが、茂みから港側のグループ男性が数名……。
第八十九話 ナオとレイコ
病院内に隠れたレイコとナオ。
しかし港側のグループ男性は、病院内を探索し始めます。
ナオの指示で男性たちをかわすものの、徐々に階上へ追い詰められ、遂には屋上へ……。
「降りられはしないけど……飛び降りれば……」
「うん……死ねる……。奴らが来たら……逝くよ。」

自分が上に逃げようと誘ったからこうなった……泣きながらレイコに謝罪するナオ。
「さんざん迷惑かけたあげく…こんな…。わ、私なんか……本当にバカだ……」
病院の屋上からは、廃校がすぐ近くに見えます。
逝く前に、仲間のことを思い出すレイコ。
その中で思い出したのは、セイの言葉。
すぐさま屋上にあるものを集め、ナオの持っているライターで火をつけ、「狼煙」をあげるレイコ。
第九十話 捕縛
狼煙を上げることに成功したレイコとナオ。
あとは廃校の誰かが気付いてくれれば……。
誰かが駆けつけてくれる前に、下から上がってくる港側グループの男性に見つかってはおしまい。
そこは自力で防ぐしかありません。
闘いに慣れていないレイコとナオ、時間を稼げたのはほんの少しだけでしたが…。
狼煙に気付いたセイとケン。
病院の屋上の狼煙に、「ナオが危険な目に遭ってる」と直感したケンは、一目散に病院に走ります。

セイはスギやリョウに声を掛けてから後を追い、難なく港側グループの男性3人を捕縛。
その夜、教室に集められた廃校グループは、捕縛した3人の処遇について話し合います。
教室に連れられてきたのは、「罪人」のように手首と腰を、紐で縛られた港側グループの男性たち……。
コメント