この記事は「キングダム 第648話 大王の問題」をご紹介するもので、ネタバレを含みます。
河南
河南に封ぜられた、呂不韋の元に集まる勢力。
このまま放置するのはあまりにも危険ですが、かと言って嬴政が言うように、嬴政本人が河南に行くのは「敵地に飛び込むようなもの」。
昌文君と肆氏は、朝廷会議後に嬴政を説得するつもりでしたが…「そんなことはお見通し」とばかりに、すでに嬴政は河南に。
「会議は延期する」
その一言だけ残して。
蘄年宮での「加冠の儀」以来の再会となった、嬴政と呂不韋。
嬴政から玉座を奪わんと、王弟の反乱に見て見ぬふりをしたり、暗殺を試みたり、太后を嗾けて反乱を起こさせたり…「因縁」という言葉ですら、あまりにも軽すぎる関係の二人。
「鄴攻め」に苦労したせいで、疲れた顔をしている、と言う呂不韋に対し、
「蘄年宮で俺に負けを認めたままの目をしている」
と返す嬴政。
「その目を確かめるために足を運んだ」
本当に呂不韋が、玉座を、秦国を嬴政から取り返そうと企んでいるのか、「呂不韋の目」でそれを確かめようとしたんですね。
結果、「負けを認めたままの目」をしていた呂不韋。
呂不韋にそう言った企みはない、と嬴政は判断したのでしょう。
何故河南がこのようなことになっているか、尋ねる嬴政。
この動きを、咸陽が見逃さないことも分っているはずなのに。
「今すぐお前の命を断て、という声すら上がっている。早急に河南の不穏の徒を抑え込め」
という嬴政に対し、
「私が大人しくせいと言えば、それで鎮まるとお思いなら大間違いだ」
咸陽では呂不韋が連中を焚きつけている、と思われているだろうが、実は逆で、これでもずいぶん抑えている、と。
それでも人が人を呼び、秘める怨念を返す時のために、準備をしている。
それが今の河南の実情でした。
かつての内乱の平定ですら、思う以上に難しい。
これが「中華」となれば、想像を絶する。
大王の問題
嬴政の進む「中華統一」への道は、嬴政が思う以上に難しいものだと説く、呂不韋。
「一つ教えておいて差し上げよう。性懲りもなく反乱の徒が湧いて集まる原因は、私にではなく…あなたに問題があるのです、大王」
肆氏の言う通り、自分を殺すのが正解。
「あなたは優し過ぎるのです、大王」
中華統一が想像以上に難しい事、そしてそれを成すには、嬴政は「優し過ぎる」と。
まさかの呂不韋からのアドバイスですね…。
「その優しさは大王様の武器でもあるが、先々唯一の弱点ともなり得ますぞ
夢々お忘れにならぬよう、これが呂不韋からの最初で最後の進言です」
本当に自身の負けを認めたうえで、嬴政の今後を案じ、アドバイスを送る呂不韋…。
ちょっと感動ですね…これ…。
蘄年宮でのやり取りを振り返る、呂不韋。
金の力で、争いの無い中華を目指す呂不韋と、争いによって、(中華を統一し、「法」が秩序となる)争いの無い中華を目指す、嬴政の舌戦。
あれは本当に、自分の負けだったのか。
「今も、人の正体は”光”だと信じていますか?」
呂不韋の問いに、微塵の迷いもなく
「勿論だ」
と返す嬴政。
「では、こころからご武運を祈っております」
呂不韋が嬴政を抱きしめます……。
勿論、悼襄王のように、耳を噛み千切ったりはしません。
それから一ヶ月。
河南の不穏な勢力は、拡大する一方。
もはやその動きを見過ごせない咸陽は、封地「河南」とその財、全てを取り上げると通達。
呂不韋が拒否すれば、「軍」を以てこれを制すつもりでした。
しかし、河南からの伝令の言葉は、「誰もが予期せぬもの」でした。
呂不韋が毒を飲み、自殺した。
思いもよらない結末に、項垂れる嬴政。
伏線はありましたけどね…、「最後の進言」とか言ってましたし。
雪の降る中を、ひっそりと進む馬車。
「外に出るのに、何とも大掛かりなことをされましたねぇ」
「ただの外出ではない、そなたらとの放浪の旅だ。あのくらいせねば、何かと面倒であろうが」
「でも、死体が別人とすぐわかるのでは?」
「ばれるくらいでよい。大王は分かってくださる」
「本当かしら、クスッ」
「これからどうするのですか?」
「んー?中華中を旅して、大王のお手並みを拝見してやろうかのぉ」
「えー、何かつまらなそう」
「私たち貧乏は嫌ですー」
「ハッハッハ、貧乏もたまにはよいぞぉ」
「嫌ですー」
毒を飲んで自殺したように見せかけ、実は呂不韋は生きていた…という事なんでしょうが…。
史実上は、呂不韋は服毒で亡くなり、その後「実は生きてました」みたいなものはないので、あくまで「キングダム」独自の「呂不韋の最後」なのでしょうね。
最後の会話も、呂不韋の姿は見えず、馬車だけが描かれていますし。
嬴政の最大最強のライバルだった呂不韋が、服毒自殺で最期を迎えるのでは味気ないという、作者・原先生の想いなのかもしれませんね。
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