【この記事は「死役所 第77条 『そばにいるよ』のあらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます】
造園会社のアルバイト、大須賀さんが抱いた恋心に気付いた親方。
40代後半であろう七島さんに、「結婚しとるやろうなー」と思いながら、確認したところ…。
「独身だって~!良かったな~!!」
交際を始めた二人。
男女どちらが年上でもそうですが、20歳も離れてると「親子」のようです。

ちなみに私の知人には、旦那さん70代、奥様30代という、かなり年の離れたご夫婦がいます。
およそ40歳の年の差…完全に「親子」と思って話をしていて、しばらくそれに付き合ってくれた、とてもいいご夫婦です。
大須賀さんも、20歳年上の七島さんに、精神的に依存してしまったのか、
「休みが合わなくて、俊美さんに会えないから」
という理由で、バイト先の造園会社を辞めてしまいます。
そんな理由で辞めちゃダメ、すぐに親方に退職を撤回してきて、という七島さんに対し、
「仕事より、俊美さんといる時間の方が、大切なんだよ。
ちゃんとバイトはするし、夕飯作って待ってるよ」




高校生、大学生くらいだと、「一緒にいる時間が短い」ことでケンカになったりしますが…。
32歳で亡くなった大須賀さん、この時点ですでに30を超えていたでしょう。
私見ですが、軽率な判断に思えます。
いい歳の大人が、自分と居たいがために仕事を辞める…。
ショックを受けた七島さんは、大須賀さんに別れを告げます。
「もう一回、やり直せないかな…」
「ごめんね、もう決めちゃったから」
おとなしく別れに応じ、同棲していたアパートを出てゆく、大須賀さん。
『よかった、ごねないでくれた…』
この後が、ハヤシくんが「仕事も忘れて読みふけった」大須賀さんの人生史に書かれていた、大須賀無双です。
大須賀さんは、七島さんにアパートの鍵を返す前に、「合鍵」を作っていました。
七島さんが仕事に出た後、七島さんの部屋に忍び込み、「天井裏」に住んだのです。
七島さんが仕事に出かけたら、部屋に降りてくる。
七島さんの留守中にバイトに行き、シフトは時間に余裕を持たせて、絶対に鉢会わないようにする。
こっそり携帯を充電したり、洗濯したり。
天井裏には当然トイレはありませんので、トイレに行かなくていいよう、食事は極力控えて…。
住みついた頃は良かったものの、季節が変わり、寒さが堪える時期に。
天井裏には、当然暖房などありません。
凍えながら、天井裏で息を潜める大須賀さん。
『何で…?
あんなに好きって言ってくれたのに…
大好きなのに…
ごめんね、ごめんね
これからは気を付ける
もう俊美さんを困らせたりしないから、
俊美さん、俊美さん、………』
朝、七島さんが目を覚ますと、外は一面の銀世界。
『去年の冬は、時和と雪だるま作ったっけ。フフ、懐かし』
友人からの電話で、朝食にカフェに出かける約束をする、七島さん。
大須賀さんのことは、すっかり「過去の思い出」のようです。
その思い出の男性が、天井裏で凍死しているとも知らず……。
「2年3か月」
大須賀さんが亡くなった後、七島さんが「同じ部屋」に住んでいた期間です。


「多分、遺体が腐るまで気付きもしてないすよね。天井抜けてたりして」
しかし、その割には七島さんの人生史に、大須賀さんの遺体のことが書かれていません。



自分の元カレが、自室の天井裏で腐って発見されるなんて、相当な出来事でしょうが…。
七島さんにとっては、そう重要な出来事でなかったのか、
「もしくは、腐らなかったか…」
シ村さんが、大須賀さんの死体は腐っておらず、「まだ見つかっていない」可能性に言及します。
しかし、
「空気の状態や体の状態など、条件が揃うことは滅多にないでしょうし。考えすぎですかね…。
きっと、遺体は腐っても愛は腐らなかったのでしょう。」
意味はよく解りませんが、何やらうまいこと言うシ村さん。



勘のいい方はもうお気づきでしょうが……。
場面は再び現世。
体調不良で会社を早退した、照屋さん。
深夜、トイレに起きます。
部屋の内見の時同様、「ゾクゾクッ」という悪寒に襲われます。
『風邪のせいかな…?でも、またこの場所だ…』


「滅多にない条件」が揃い、凍死した後も腐らなかった、大須賀さんの遺体が眠る天井裏は、まさにその真上でした……。



いやぁ……怖かった…。
途中からね、読めたんですよもちろん、ラストが。
読めたけど…怖かった……。
テルマさん連想してるどころじゃなかったわ。
むしろあの曲聴いたら、大須賀さんのことを思い出しそうだわ…。
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