マチ(町 洋子・まち ようこ)編①
この記事には「ぼくらの」のあらすじをご紹介するものであり、ネタバレを含みます。
10巻表紙がマチです。
カナとの「対面」を終えたウシロの父のもとに、「ウシロが見当たらない」という報せが。
「はやまったまねはしないように」と自分で言っておきながら、監視もつけずにウシロを一人にしてしまった佐々見さん。
「申し訳ないっ!!」
ウシロの父に深々と頭を下げます。
ジアースと契約したであろうことを、予見して。
一方、コックピット内では、コエムシの予想が正しいか、或いはマチが契約できているか、確認です。
ワクから始まり、カナまで。最初に洞窟で契約したメンバー(カナは洞窟ではウシロの止められ、契約しませんでしたが、ココペリの戦闘後に契約)分のマガジンが使い切られ、次のマガジンが装填されます。
次のマガジン=途中で契約した関さん、田中さんの分ですね。
ワクからカナまでのメンバーのイスが、頭より高い位置に移動し、関さん、田中さんの分のイスが現れます。

田中さんのイスは、ウシロのイスでした。
契約時にもウシロのことを考えていた、ウシロの母・田中さん。
思い描いた椅子は、ウシロのものだったようです。
2人のイスも高いところに移動し、ウシロとマチの番です。
2人のイスが現れれば、ジアースとの契約成立、となります。
まず現れたのは、ウシロのイス。
田中さんの座っていた、射出座席です。
「おれのイスだ。おれが望んだ。」
もう一つ、イスが現れます。
マチのイスです。
「この地球の人間ではない」マチが、この地球で、ジアースと契約したのです。
「なんでだよっ!?こ…こんなこと、ありえねーだろ…」
珍しく取り乱す、コエムシ。
他の地球では契約できない、いざとなれば自分たちの地球に戻せばいい。
そう思っていたようですが、今回マチは契約できました。
実際、洞窟ではワクに押されて板に触れ、それで契約したはずでした。
しかし、それはココペリの戦闘前。
まだ、ココペリとコエムシ、マチの地球の戦闘は、終わっていなかったのです。
そして、マチはその地球で契約済みだった。
人数オーバーで、マチに順番は回ってきませんでしたが。
「二重契約はできない」
だから、別の地球のジアースパイロットとして、契約できなかった。
けれど、その地球はもう勝ち残った。
その地球の戦闘は終わった。
その地球の契約は、解除された。
だから、今の地球で、新たに契約できたのです。
もちろん、マチもそのことを知っていたわけではありません。
あくまでも「可能性」として考えていただけで、確証はありませんでした。
しかし結果、マチの推測は当たっており、契約できました。
「やっとあたし、楽になれた。」
兄とココペリと一緒に、別の地球からやって来たマチ。
適当なメンバーを探し、契約させた。
自分の手引きで。
そして、そのメンバーの戦いを、コックピットでずっと見てきた。
謝罪と、自責の念。
自分も戦えること、戦って死ねることに、安堵したようです。
「オ…オレは認めねー、認めねーぞ…」
事態を受け止められない兄・コエムシに対し、
「あたしはこの星のために戦って、死ぬよ。」
マガジンが装填されたので、次のパイロットには「声」が聞こえるはずです。
「来たよ。次のパイロットは、あたしだ。」
コエムシがごねても、次のパイロットはマチ。
待ったなしです。
マチがこの地球の最終戦を戦い、ウシロは次の地球でのチュートリアル、ココペリ役をやることになります。
次の地球の勝敗も、自分の地球の運命に影響する。
コエムシにもはっきりしたことは分からないようですが、
「時空の選定があまり進まなかった場合、また戦闘が回ってくる可能性があるんだと。
その時、次の地球をどれくらい勝たせたか、で戦闘の回ってくる確率が変わる。
勝ち数が多ければ回ってきにくい。
本当かどうかは知らねー、聞いた話だ。
それがいつなのかも、分からねー。
1年後か、10年後か、1万年後か、回ってこないのか。
あやふやな分、起きると思って行動するしかねー。
でも…」
「あたしが死ぬことになったから、もうどうでもいいって?
この地球のサポートなんかしても、意味ないって?
でも次のパイロットは、あたしなんだから。
それにお兄ちゃん、次が最後の担当でしょ?
それが最愛の妹のサポートなんて、できすぎたシチュエーションでしょ。
手を抜いたら、恨んで死んでいってやる。
だからお兄ちゃん、最高のサポートをしてね。」
ウシロの父の待つ、軍施設に戻ったウシロとマチ。
ウシロとコエムシ、マチが一緒に現れたことで、佐々見さんとウシロの父は「契約したのだ」と悟ったようです。
その後、ウシロは父と、そしてカナと一緒に自宅に戻ります。
カナは車に乗せられる前に、棺に入れられました。
ウシロの希望で、ナカマの作ったパイロットのユニフォームのまま。
あらかじめ、用意されていた、小さなお棺に。

その葬儀も、ひっそりと関係者だけで行われました。
火葬場付きの公共斎場で。
カナは自然学校のリスト、ジアース関係者のリストに載っているので、その死が知られれば、世間の好奇の目は避けられません。
「パイロットはアンコ、コモ、そしてカタリくん」ということで、コックピット内から映像付きの放送を行ったのが、ムダになってしまいます。
そうならないよう、親戚にも、近所の人にも知らせず、ひっそりと行われた、カナの葬儀。
カンジの戦闘の後、佐々見さんも言ってましたね。
「本来なら国葬級の…」
地球を守るため、カナにとっては地球よりも、兄と父と、守れなかった兄の母・田中さんのために、という気持ちが強いかもしれませんが、それでも10歳の女の子が残した功績と、その葬儀には大きな乖離がありますね…。
大きな葬式を挙げたから、カナが喜ぶわけでもないんですが…。
カナの葬儀に参列したマチ。
「ウシロ、田中さんの方は行かないの?
田中さんの方は、普通にお葬式できるんでしょ?」
「行かなくていいだろ。行けるわけないだろ。」
田中さんの葬儀は、確かに普通に行えるのでしょうが…自然学校リストに入っているウシロ、そして「田中さんの実の息子」であるウシロは、さすがに「行けるわけない」です。
「こんなのは、残された人間のケジメのためにやるんだろ。
だったら、おれには必要ない。」
確かに、もうすぐ死を約束されているウシロにとって、そんなケジメは必要ありませんね。
「ねえ、まだケジメをつけられてない人たちが、いるよね。
この地球の、この宇宙のために戦うのもそうだけど、それ以外に、今のあたし達にしかできないことが、あると思わない?
あたし達で、まわらない?戦ったみんなの、残された人達のところ。」
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