今回は「死役所」第8巻をご紹介します。
表紙は…7巻の最後に、「49日以内に成仏すること」という辞令をもらったイシ間さん。
見た目は怖いですが、涙もろく面倒見のいいイシ間さん。
成仏してしまうんでしょうか。。。
母
今回のお客様は、名前がありません。
なぜなら、生まれる前の胎児だったから、、、
「荻野 泉水(おぎの いずみ)」は不妊治療中の主婦。
明るく前向きで、元気な女性です。
職場で同僚の妊婦さんがタバコを吸っているところを注意し、逆切れされ
「私の気持ちなんてわからないですよね?だった荻野さん妊娠したことないんだから!」
と、ひどく傷つくことを言われても、相手と、お腹にいる子供のことを思いやり
「ゴメン…」と謝る優しさも。
それでも家に帰って
「あんなコには赤ちゃんが来て、こんなに頑張っているアタシのところには…」
と旦那さんの前で落ち込む泉水。
そんな泉水も、治療の甲斐あってついに妊娠します。
順調に週数を重ねる泉水ですが、予定日よりだいぶ前に、お腹の痛みを感じます。
スーパーでの買い物中に痛みが増してきた泉水は、立っていられないほどの痛みと、
出血に見舞われます。
救急搬送先での診断は「常位胎盤早期剥離」。
母子ともに危険な状態です。
ちなみにうちは、上の子が「前置胎盤」、下の子の時は「切迫早産」で、
いずれも大変でした。。。
いや、大変だったのは妻のハルミの方で、わたしが大変だったわけではないのですが。。。
泉水は助かったものの、赤ちゃんは死産になりました。
死役所の「死産課」を訪れた胎児。
もちろん自分では手続きできないので、職員が代わりに手続きします。
泉水の子供の手続きを、イシ間さんが行います。
「こんな小さいのに可哀想に」と言うイシ間さんと、
「脳だって未発達だから、可哀想じゃないわよぉ」というシン宮さん。
無口なハシ本君が
「胎内記憶があるから…そう考えると…意思がないとも限らないのでは…」
答えのない話ではありますが、個人的にはハシ本君の意見に同意です。
愛を買う
お客様は「築本 直太朗(つきもと なおたろう)」。
風俗店を訪れた築本は、「ゆな」に本番行為を強要します。
危険を感じたゆなに、ガラスの灰皿で頭を殴られて死亡。
死役所の「他殺課」を訪れます。
築本本人は、なぜ死んだのか、誰に殺されたのか分かっていない模様。
イシ間さんに、
「ゆなってお嬢ちゃんと二人でいたのなら、その子に殺されたに間違いないだろう」
と当たり前のことを言われますが、納得できません。
「ありえないありえない こっちは金払ってんのに」
「風俗嬢のくせに嫌がる?社会の底辺のくせに?」
要は、見下していた風俗嬢に殺されたことを受け入れられない築本。
また、ゆなは自分のテクニックにベタ惚れだったと。
「それ、演技ですよ。女はセックスの最中でも頭は冷静です。いくらでも演技できます。」
さらりと言ってのけるニシ川さん。
シ村さんも
「見下していた方に殺されるとは さぞかし悔しかったでしょうねぇ」
と追い打ち。
「虚しい」と言い残し成仏する築本。
殺されたこと自体に同情はしますが、それでも「自業自得」かと。。。
理想の家族
お客様は「尾ヶ崎 秀哉(おがさき ひでや)」。
聡く、両親の愛を望んだ小学生です。
秀哉の両親は仕事が忙しく、秀哉の参観にどちらが行くかで揉めるなど、
夫婦仲はあまりよくない様子。
それでも秀哉は、母親と一緒にご飯が食べたいので、食べずに待っていたり、
父親が帰ってくるまで眠いのを我慢して、待っていたり。
それでも、「早目に食べてって言ったのに」「早く宿題して寝なさい」
と注意されるなど、その気持ちは報われません。
休日、両親ともに仕事に出かけた朝、38.5℃の熱を出す秀哉。
それでも忙しい両親を想い、また両親が帰ってきたら褒めてもらえることを期待し、
辛いのを我慢してする秀哉。
熱が下がらないよう願う秀哉ですが、ずっと横になっていても一向に熱が下がらないばかりか、夕方にかけて熱が上がり39.0℃に。
秀哉はインフルエンザで、夜父親が帰ったときには痙攣を起こしており、病院に運ばれたものの2日間の昏睡状態を経て、亡くなります。
死役所の「病死課」を訪れる秀哉。
自分が亡くなったとき、忙しい両親がつきっきりだったことを聞き、「良かった」と言いますが、イシ間さんは泣きながら
「もう父ちゃん母ちゃんに会えねえんだぞ?死んでから愛情確認して喜ぶなよ!」
やっぱり優しい方ですね、イシ間さん。
死刑になったのも、愛する姪御さんのためです。
一方現世では、秀哉が亡くなった責任を押し付け合う両親。
「これで…俺たちを繋ぐものがなくなったな…」
再び死役所。
手続きを終えた秀哉に、イシ間さんは「一緒に成仏するか?」
と持ち掛けます。
ずっと一人だった秀哉を思い遣っての、イシ間さんの計らいです。
「イシ間さん我々は…」と言い出すシ村さんを、
「任期満了の辞令が来た」と遮るイシ間さん。
お気を付けて
「シ村さん 受付 頼んでいいか?」
「わかりました…」
折り紙の花束を、イシ間さんの憧れの女性職員「シラ神」さんから渡されるイシ間さん。
表紙の、赤い花ですね。
「本当にありがとうございました」
深々と礼をするシ村さん。
「お気をつけて」
いつもの作り笑いでなく、寂し気に、少しはにかんだ笑顔のシ村さん。
シ村さんの「本当の表情」なんだと思います。
ハヤシくんは「生まれ変わったら一緒に酒飲んでください!」と。
シラ神さんは深々とお辞儀。
ハヤシくんに見送りに誘われ、「忙しいからいい」と断ったニシ川さんも、ハシ本君と一緒に少し遠目から深々とお辞儀。
「あんまり泣かすんじゃねぇよ 馬鹿野郎!」
笑顔で、涙を流しながら成仏の扉の向こうに消えていくイシ間さん。
お気をつけて。
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