政本人を見て依頼を受けるか決める、という紫夏。
ちょうどそこに、政が現れます。
ジャガイモを盗み、殺気立った大人数人に囲まれる、王族とは思えぬみすぼらしい恰好の、「貧しいコソ泥」の政でした。
数人を倒し、逃げ果せようとしますが、囲んでいる大人は10人ほど。
逃げ切れる人数ではなく、ボコボコに殴られ始めます。
気絶した政に対し、一人が剣を抜き、片腕を切り落とそうとします。
見かねた紫夏が、「やめろ!あなた達がやっていることは秦人以下です」と止めに入ります。
夜、河原の草むらに寝転がり、月を見つめる政。
偶然紫夏が通りかかり、政に声をかけます。
政は月が嫌いなようだが、自分も昔は嫌いだった。苦しみの底で見上げる月はいつも以上に美しく、自分を嘲り笑うかのようで。
それを養父は「くじけぬように励ましてくれているのだ」と教えてくれ、それ以来月が好きになった、と。
政は紫夏に礼を言います。
片腕にならずに済んだこと、月の秘密を教えてくれたこと。
そんなやり取りの末、紫夏は政を秦に脱出させる依頼を受けます。
成功すれば、秦から多くの報酬がもらえることでしょう。
しかし、失敗すれば…敵国の太子の子を、趙国外に脱出させようとした罪は重く、国賊として拷問の末、殺される。
しかし、餓死寸前の自分を救ってくれた養父のように。自分たちが手を差し伸べねば殺されてしまう政に対し、何の迷いがあろう。我々がすることは明白ではないか、と。
常日頃から関門への根回しを怠らない闇商の紫夏は、趙国から秦国への五つの関を、何とか突破します。
しかし五つ目の関を突破した直後、その関が閉じられます。
政の失踪が知れ、閉門されたのです。
この後、趙軍の騎馬隊が追ってくるのは必至。
迎えの秦軍と合流すべく急ぎます。
やがて、追手の騎馬隊に追いつかれる一行。
頭目の紫夏を守るため、仲間の亜門・江彰は趙軍兵と刺し違え、犠牲になります。
秦から政を救いに来た役人も討たれ、政と紫夏、2人だけの逃走となります。
正面から、秦軍の騎馬兵が見え、もう少しで助かる。
しかし趙軍の追手も、政を逃がしてはならないと必死です。
紫夏は、体中に矢が刺さり、腹に槍を討たれながら、政を守り切ります。
秦軍の騎馬兵が趙軍の追手を倒した頃、紫夏は最後の力を振り絞り、政に声をかけます。
「おケガはありませんか?」
自身が死にかけている最中、政を気遣う紫夏。
秦軍の兵士も、その姿に心を打たれます。
「あなたほど辛い思いをして王になる者は他にいません
だから きっと あなたは誰よりも偉大な王になれます」
秦軍の兵士は皆、紫夏に対して敬意を払い「拱手(きょうしゅ)」します。
(拱手とは、中国における古式の敬礼の一つで、両手を胸の前で組み合わせる姿勢のこと)
こうして、9歳にして初めて、政は秦の王都・咸陽に足を踏み入れたのでした。
敵国・趙国内で、長平の恨みを子供ながらに背負い、痛みや味覚、触覚などの感覚を失うほど、ボロボロだった政。
王族とはいえ、年端もいかぬ子が趙の人間によって、痛めつけられボロボロになった姿を見て、幼い頃の自分と重なり、何とか護ろうとする紫夏。
自分の命と引き換えに、政を護りましたが、生きててほしかった…。


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