「自殺島」第17巻 ネタバレ・あらすじ・感想




「自殺島」(作者:森恒二さん)第17巻あらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます。




スポンサーリンク

第百五十九話 その夜


宴はお開きになりますが、男性同士・女性同士で「今夜は語りあかそう!」と、「二次会」になだれ込みます。

1人「前に進めない」リョウは、遅れて教室に戻ろうとしますが……外トイレの前を通りがかったところで、カイの泣く声が聞こえてきます。


未だ処遇が決まらず、外トイレに監禁されていたカイ。

「…リョウ……僕はもう限界だ……もう…殺してくれ……」

リュウたちに殺されるのも、死体を晒されるのも嫌だというカイは、少しでも友情のあったリョウに頼みたい、と懇願します。

殺してほしいわけじゃない、誰もいない静かな場所で看取ってほしいと。


自分と同じように「前に進めない」カイに同情し、外に出すリョウ。

トイレに行こうとしたミキとリヴがその様子を見て「カイを外に出しちゃマズい」と注意を。

「その人が何をしたか忘れたの?」

「誰もがお前達みたいに前を向けるわけじゃない、自分達が幸せなら苦しんでる人間はどうでもいいのか?」


あくまでカイに同情するリョウですが……腰のあたりに違和感が……。

「…何だ…何で血が……?」

僕が刺したから


©「自殺島」森恒二/白泉社




看取ってくれ、というのはやはり嘘。

今度はリョウの腹を刺し、その様子を見たミキは気を失い……残ったリヴを殴り、後ろ手に縛り、人質として連れ去るカイ……。


第百六十話 リョウの還る場所


『私のこと好きじゃなくても、一緒にいられればいい。どこにも行かないで、私を置いて行かないで、リョウ……』

目を醒ましたミキが見たものは、カイに刺され出血のひどいリョウ。


「イヤアァァァァ~~!!」

ミキの叫び声で皆がリョウのもとへ。

刺し傷を見たタエは、手の施しようがないことに気付きます。


自分でも助からないことを知っているリョウ。

トレードマークのバンダナをセイに手渡します。

「島に来てずっと、生きる力を求め、どんどん変わるお前に近づきたくなった……見ていたくなったんだ…一緒に……。そうすればオレも…変われるか…と…」

セイもリョウに憧れ、リョウのようになりたいと、ずっと考えていました。


「それじゃ…おあいこだな……皆、いるのか?よく…見えなくなって……」


©「自殺島」森恒二/白泉社




どうやら最期は近いようです、リョウ……。

「ミキ……いつも明るく…いてくれ……

スギ……お前はすごい…ヤツだ……皆を…頼むぜ……

リ…リュウ!背負い……過ぎるなよ……

レイコ…やさしく……してくれて…ありがとう……

タエ…ボウシ…!ずっと…仲良く……

ケン…オマエと……楽しかった…ヨネ…オマエも……

セイ……ありがとう…!セイ!!……オレは……答えを持っていける……」

皆に別れを告げ、エリの許に還ったリョウ……。


第百六十一話 この島の要


リョウの死から程なく、リヴの不在に気付いたセイ

リヴを人質にカイが逃走したことを知ります。


山狩りを決行しようとするリュウですが、気づかれれば容赦なくリヴは殺される。

カイに気付かれぬよう、彼を仕留めなければならない。

そしてそれができるのは、セイだけなのです。

男性陣は廃校の警備、港側グループへの伝達をトモに任せ、1人カイを追うセイ。


妊娠中のリヴは、それをカイに悟られぬよう、出来るだけ従順にカイに従います。

そしてカイの狙いはセイ、ただ一人。

セイを殺せば彼らも終わる


この島の要は、リュウでもリョウでも、ましてやスギでもなく「セイ」だと。

体格も体力も気力も平凡なセイが、生きる力を取り戻す。

その物語に自分を重ね、皆が同調していった。


©「自殺島」森恒二/白泉社




皆がこの物語の「主人公」になった気でおり、それを「バカバカしい」と一蹴するカイ。

「リョウが死に、セイが死に、田畑や家を焼き、家畜を殺し、生きる気力を端から奪ってやる」

自分が正しく優れている」ことを証明するため、「自己肯定」のため、全員を殺してから自分も死ぬというカイ……。


第百六十二話 待ち受ける場所


水を持っていないカイは、まずは水場に向かうはずと踏んだセイ。

水場……島に送られてきて、まずは飲み水を探すために歩き続けた一行。

その時リーダーシップを執ったのが、リョウとカイ


リョウはカイに殺され、カイは皆を殺そうとしている……。

いつも明るく強く、優しく……皆を引っ張ってくれたリョウ。

しかし本当は、ずっと苦しんでいたはず。

エリを失い、悩んで……ずっと帰りたがっていた、彼女のもとに。


だからと言って、カイがリョウを殺していい道理はない

そしてリヴを、皆を殺していい道理はない。

非道なサワダさえ殺せなかったセイが、カイを殺す決意を……。


一方のカイは給水を終え、ある場所に向かっていました。

低草地の丘。

セイが初めてシカを見た場所。

廃校に火をつけて逃げたカイを、セイが射れなかった場所。


隠れるところのない場所に、セイを誘い込むカイ……。

セイは死ぬよ…君のために。絶望しながら死ぬだろう…君の目の前でね」




第百六十三話 殺意


低草地の丘にある朽木。

両手を縛られ、木の上から吊られる格好で繋がれるリヴ。


カイは苦々し気に話します。

最初に水場に案内し、漁を指示したことを。

何もできない連中を導いてやったのに……「君は何も持っていない。哀れな人間だ

ボウシの言葉を思い出し、更にイラつくカイ。


頑張って行動したのは皆であり、一生懸命行動した人が生きる力を得、行動する人に皆がついて行っただけ。

行動しない、一生懸命でないカイは次第に皆からズレて行った。


「もしかして……向こうの社会でも?」

リヴの一言は図星だったようです。

リョウを刺したナイフで、リヴのシャツを切り裂くカイ。


©「自殺島」森恒二/白泉社




「君の運命は僕次第だ。出過ぎた言葉には気を付けろ」

殺されるかもしれない……。

セイと2人で過ごした家に帰りたい、と切望するリヴ。


低草地に到着し、リヴの繋がれた様子を見たセイに湧き上がる感情。

これはきっと…殺意だ



第百六十四話 タイムリミット


殺意で気が狂いそうになりながらも、努めて冷静に考えるセイ。

今セイがいる場所からでは、到底カイは狙えない。

カイに気付かれず、近づいてカイを入れる場所を探しますが……もちろんカイも「隠れるところがない場所」にセイを誘い込んだのです。


イキルを放っても、飛びかかる前にリヴが刺される。

日が暮れるを待つしかない、と考えるセイですが、カイはその思考を先回りします。

セイがどこにいるか分からないまでも、もう近くに来ているだろうことを予想します。

そのうえでリヴの手首を切り、日没には失血死するよう「タイムリミット」を設けたのです。


愛するリヴの命が今まさに脅かされ、怒りで気が狂いそうになるセイ。

冷静に考えようとするセイですが、怒りを通り越した悲しみで、涙が溢れてきます。

「オ、オイ!あんた……セイ……!あんたぁ…セイ……だろ」


©「自殺島」森恒二/白泉社




窮地のセイの前に現れたのは、先住人……。


第百六十五話 運命の味方


冬に作物が全滅し、セイを頼ろうとした先住さん。

廃校に向かっていたところ、低草地で「女を縛って叫んでる、おっかねぇ男」がいたので、森の中を歩いて来たと。


イキルは元々、先住さんにもらった犬でしたが……さすがにまだ小さい頃のお話。

先住さんのことを覚えていないイキルは、先住さんに吠え掛かります。

セイが近くに来ていることが、カイにバレたのです。


セイを急くように、リヴに暴力を振るい始めるカイ。


©「自殺島」森恒二/白泉社




途中、リヴがお腹を守るような仕草をしたことから、リヴの妊娠がカイに知れます。

「家畜じゃあるまいし……どいつもこいつも……この島で獣のように殖えるつもりか!?終わらせてやるか?ひと思いに

腹を刺されそうになり、悲鳴をあげるリヴ。

もう一刻の猶予もありません。


先住さんに助けを求め、セイの代わりにマントを被り、カイの前に出るよう頼みます。

戸惑いながらも「カップル助けんの初めてじゃねぇし……助けてやれよ、大切な娘なんだろ?」

心強い先住さんの助け。

『頼む……島よ…山よ……僕に力を貸してくれ……!!』


第百六十六話 静かな海


イキルを連れ、マントを着た先住さんを囮に、カイの背後に回り込むルートを探すセイ。

先住さんに連れられ、嫌がるイキルの鳴き声が、カイの注意をイキルに向けてくれます。


カイの背後の茂みに行けるルートを見つけたセイ。

見つからないよう、一気に茂みまで駆けなければなりません。


イキルを繋ぐよう指示するカイですが、イキルは先住さんの言う事をきかず……。

不審に思ったカイが、背後の茂みに目をやります。

ギリギリで茂みに隠れたセイですが……見つかったか……?


再びイキルの鳴き声に、そちらに注視するカイ。

その間にも、リヴは相当出血しています。

迷っている時間はありません。


イキルをなかなか繋げない先住さんに「セイ!こっちを向け!!」と指示するカイ。

『囮か……!』

振り向くと、弓を番えたセイ。


「カイ……」

リヴを刺そうと駆け出すカイを、セイは迷うことなく射ます。

一射目は胸部に、二射目は腹部に……致命傷です。


©「自殺島」森恒二/白泉社


第百六十七話 カイの見た夕日


カイを射て、リヴを助け出したセイ。

リヴの傷は思ったより浅く、出血はすでに止まっていました。

カイがその程度に切ったのか、或いは計算外なのか……。


「何故…何故だ!カイ…どうして……」

率直な疑問をカイにぶつけるセイ。


「何故」それこそカイが、生まれてからずっと持ち続けていた疑問でした。

人の気持ちが分からない、人が素晴らしいと思う喜び、悲しみを全く共感できない

性格、というよりは性質という根本に近い部分で、カイは周りと違ったようです。


深く心に傷を負った人間達の間で、自分も共に変われるんじゃないかと期待したカイ

生きる為の暮らしの中で、素晴らしいものを共有し、変わっていく皆。

しかし、自分は変われなかった……。


そんな中、カイの中に生まれたのは「劣等感が変質した殺意

セイらを全員殺すことで否定し、一人になった世界で静かに死ぬ。

そう夢想することで心が穏やかになり、「そうしよう」と決意したカイ。


しかし、一つだけ皆と共有できたものがあったカイ。

この島の夕日は美しいよ。それは…本当だ…。それ…は!僕に…も…わ……か………」

話しながら息絶えたカイ。


いきさつは分からないながらも、

「そいつ…あんたを待ってた感じがする…よ。殺られたって顔じゃないぜ…どう見ても。終わらせてもらってホッとした…そんな顔だ」


先住さんの言葉に、抑えていた涙が溢れ出すセイ。

そのままカイを埋葬し、狩りで使う小屋で一晩過ごすことに。


「あんたァ…変わったな。あいつもいきなり男になったっけ……」

カップルを助けるのは初めてじゃない、と話していた先住さん。

その時の男性のことのようです。


「無事にこの島を出られたとは、思わないが…」

と話す先住さんですが、セイは思い出しました。

ジャーナリストの織田がこの島に来る前、東南アジアで若い2人に島の話を聞いた、と言っていたことを。

『もしかしたら……』


そして闇夜に響き渡るヘリのプロペラ音。

以前同様、報道機関と政府の追いかけっこでしょうか。

「多いな……最近…」

「ええ……」


最終話 イキルの島


セイとリヴの帰還を待ちわびた廃校グループの許に、2人が無事帰ってきました。

「命の恩人」である先住さんも一緒に。


「カイは逝ったよ。僕が殺した」

リュウもレイコも、「大変だった」とセイを労ってくれます。


そしてリョウは…セイのため、「今日一日だけ待とう」と、まだ埋葬されていませんでした。

「リョウを早く休ませてやろう」

セイの帰還間もなく、リョウを埋葬するためミノル以外の皆が眠る丘へ。


途中、待っていたのは港側グループの新リーダー・ヒロ以下数名。

「カイはこちらで始末するべきだった」「あの人は戦ってる最中でも、なるべくオレ達を傷つけないように…」「残念だ…本当に」

その人柄は、グループの垣根を超えて愛されていたリョウ。


『何故…どうして……!!』

消えないその気持ちよりも、もっと強く湧き上がってくる気持ちは…

『ありがとう』

心の中で、何度もリョウに感謝するセイ。


「死は誰にでも訪れる。いつか…必ず。その時まで我々は、愛を実りを、喜びを悲しみを、分かち伝えていこう。永遠の床に着くまで。それまで…安らかに待っていてくれ。人生最大の友……私…達の……かっ…家族……さらばだ…」


©「自殺島」森恒二/白泉社




泣きながら「別れの言葉」を読むスギ。

誰にとっても、大きすぎる存在であるリョウ……。


埋葬を終え、丘を降りると……港には船が。

上空にはヘリが何機も。

「島にいる皆さん…こちらは海上保……島は…解放されました!特別自治区は解放され…病人や…救護の必要がある方は海岸のスタッフまで」


『島が解放される日は近い』

誰もが思っていたその日は、唐突にやって来ました。

しかし「助かった」と口にする者はいません。

彼らはここで、しっかりと生きてきたから……。


自殺未遂常習者隔離目的特別自治区、通称「自殺島」

政府の特別自治区見直しにより、解放される。

以後、島の住人とNGO法人により「イキルの島」と改名され、特別自治を保ったまま、未遂者などの社会復帰プログラムに活用される。




数年後---


変わらず山に入り、シカを射るセイ。

麓に戻ると、ミノルの田んぼではスギ・トモ・ケンが稲刈り中。

傍らにいるナオのお腹は大きくなっています。


海岸通りを走ると、向こうからはリュウとレイコ。

レイコのお腹も大きく…。


島からの脱出失敗後、リョウが一時期身を寄せたダイビングショップ。

店先の男性に声を掛け、家路を急ぐセイ。


入江の「自宅」に到着したセイを迎えたのは……リヴと「リョウ」

「パパァ!」


©「自殺島」森恒二/白泉社




セイは息子に「リョウ」と名付け、リョウに託されたバンダナも息子に。

命のバトンは、これからも繋がれていくのです……。


後日談


島は解放後、不登校者や未遂者の更生プログラムに協力。

それにより、国や各団体の支援を得ることに。


スギは島に管理者として残り、更生プログラムの指導に協力。

著書「自殺島の日々」はベストセラーとなり、その収入の殆どを島の運営に充てる。


ミキは離島もNGO団体に入り、本土と島を結ぶ仕事を。


ボウシとタエは島に残り、道具屋と看護師に。


ケンとナオは島に残り、ナオはレイコと島唯一の食堂を。


トモは島内の連絡や、島外から来た人の案内。


リュウはレイコと島で結婚し、学校村の村長を。


先住さんは島の農業指導員として残り、サバイバル講義も好評。


織田は離島後、自殺島潜入レポを書くも、スギの著書に押されて振るわず…新たなネタを求めて奮闘中。


セイは狩りと島のガイドを。

リヴの希望で、廃校を出て2人で暮らした入江の家に、息子と3人で暮らす(もちろんイキルも)




前の記事:自殺島 第16巻


自殺島
スポンサーリンク
スポンサーリンク
旦那をフォローする
スポンサーリンク
ゆるハル、時々旦那

コメント

タイトルとURLをコピーしました