「自殺島」(作者:森恒二さん)第11巻あらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます。
第百一話 トモ救出Ⅰ
無理矢理サワダに犯されたトモ。
「殺してやる……オマエ…殺してやる……っ!」
争いの嫌いなトモらしからぬ発言……無理もないでしょう…。
ここでサワダのマインドコントロールが発動。
「こうでもしなきゃ、オマエはずっとヤれなかった、男とも女とも。誰かに狂おしく抱いてほしくはなかったか?それに…お前は完全に俺を拒めていたか?」
自分が無理矢理やった事に対し、話をすり替え始めるサワダ。
「向こうの奴らも『心配してる』『オマエが大切だ』そんなの嘘っぱちだ!上っ面の言葉で、誰もオマエを救えねぇ!オレは違う。オレだけだ、このままのお前を慰めてやれるのは」


本人がどこまで論理的にマインドコントロールを理解しているか不明ですが…天性のものなのかもしれません。
トモを縛っていた縄を解き、ナイフを与えるサワダ。
「オレを信じられないなら、オレを刺して逃げたって構わないんだぜ!?」
抵抗する気力を無くしたトモに、サワダを刺すことは出来ません…。
そんなトモを救出すべく、急襲を仕掛ける廃校グループ。
トモ救出に本気のセイは、油をしみ込ませた布を矢じりに巻き、彼らの家に火をつける、と。
基本、争いは苦手なセイですが、トモが攫われたことに怒り心頭のようです。
道中、港側グループの見張りの男性を見つける一行。
足の速い奴に走られ、向こうに準備されると厄介です。
「ボクが射る」
どこまでも本気のセイ……。
第百二話 トモ救出Ⅱ
セイが見張りの男性の足を射って走れなくし、トモの様子を聞き出すリュウ。
「女」として扱われるトモは、他の女たちと一緒に母屋にいると。
正面から急襲を仕掛けるより、山から火矢を放った方がいい。
セイとリヴが山に入り、丁寧に罠を解きながら慎重に進みます。
「リヴ……僕はこれから人を傷つけ…いや、殺してしまうかも……!そして…それを君にも…」
セイ本人も本意ではない行為、それをリヴにもやらせようと…。
言葉を選ぶセイに、
「私はセイの背負うもの全て、一緒に…背負う」

リヴに迷いは無いようです。
リヴのおかげで迷いを払拭したセイ。
2人で港側グループの住む住居に、火矢を放ちます。
屋根に火のついた住居から、次々人が出てきます。
トモを救うため、先頭切って母屋に入っていくリョウ。
「トモ!!良かった…さあ帰ろう。皆…待ってる」
リョウの呼びかけに
「ダメだ僕は……帰れない……」

第百三話 トモ救出Ⅲ
「フラれちゃったなぁ~、イケメンの兄ちゃんよ」
奥から出てきたのはサワダ。
「オレは何度もこいつが満足するまで抱いてやったよ!テメェら結局、こいつを女扱いしてなかったって事なんだよ!」
トモの制止を無視し、自分がトモを抱いたことを話すサワダ。
説得を続けようとするリョウですが、港側グループの男たちに囲まれ、退路が無くなっていきます。
リョウが囲まれる様子を、山の上から見ていたセイ。
建物の屋根に飛び移り、リョウを援護しようとしますが…やはり躊躇するセイ。
そのセイの後ろから矢が放たれ、港側グループ男性の肩に命中します。
セイの背負うものを一緒に背負うと決めたリヴに、躊躇はありません。
港側グループ集落から撤退した廃校グループ一行。
トモが来なかったことに、納得のいかないセイ。
「トモは『帰れない』と?『帰らない』じゃなくて?帰れないは帰りたくないじゃない、帰れなくなったという事」
「そ、そうだ……『帰れない』と言った……」
「わかった……たぶん…トモは帰れなくなるような事をされたのかも……」

同じ「女性」の目から、涙を流すリヴ。
人に矢を向ける理由、弓を引く理由を探していたセイ。
それが見つからず、弓を引くのを躊躇していましたが…。
その時セイのみつけた答えは、「相手を殺しても構わない」と思うほどの、強い理由……。
第百四話 戦いと平和と
集落を守るため待機していたスギに、トモ奪還時に起こったことを説明するリョウとリュウ。
「トモのことでキレちまってる……。セイは本気だ…今度こそ、皆覚悟を決めなきゃな」
というリュウの言葉に、待ったをかけるスギ。
一方セイ。
リヴと共に次の襲撃に向けた話を。
そこに通りがかったのは「農業組」と呼ばれるミノル・ボウシ・タエら。
稲の苗ができたこと、バターができたため「じゃがバター」を作り、セイとリヴに振舞います。
「これを見たらトモがどんなに喜ぶか……今度こそ絶対に助けよう!!」
というセイの言葉に待ったをかけるミノル。
スギの待ったと、ミノルの待ったは同じ意味を持っていました。
「農業組は戦いに参加しない。僕らの戦う相手はサワダじゃない、生きる事が戦いなんだ」
トモのことは残念だけど、奪還しに行ったら逆襲される、そして更に逆襲、その繰り返しには参加できない。

セイと農業組の間にできた、大きな溝。
港側グループでは、カイがサワダに進言。
「トモを今すぐ返すべきだ。まさかここまでセイが激昂すると思わなかった…。ああいう人間が思い詰めると恐ろしいよ。視野が狭い分、そのことしか考えられない」
第百五話 弓を引く者
延縄の引き上げを手伝うセイ。
食事は徐々に充実してきています。
農家が嫌で農家を飛び出したミノルが、その知識で農業・畜産を発展させていきます。
ミノルの正しさと、自分の気持ちのギャップに悩むセイ。
トモ奪還作戦の際、セイが足を射った見張りの男性。
港側グループに戻らず、廃校グループに付いて来ました。
「戻ったら殺されるかも…」
その彼に、港側グループの状況をヒアリングしようとするリュウ・スギ・セイ・リョウ。
素朴な疑問を口にする彼。
「何でそんなに戦いたがるんだ?こんなんじゃ共倒れになっちまうよ」
先に女(ナオ)を攫ったから、サワダは取り返しに行っただけ。
そこからすべてが始まった…と。
そいしてセイに
「お前…覚えてるぞ!暗闇から矢を…一体何人殺したんだ!!皆せっかく…頑張って生きようと…やっと…」

彼にしてみれば、自分が「サワダのような存在」だということに気付かされたセイ……。
第百六話 多数決 民主主義
気付かないうちに、自分がサワダのような人間になっていた…大きなショックを受けるセイ。
そんなセイの考えを、リヴが否定します。
「セイはいつも、仲間のために矢を射っていた」
最初はリヴを助けるため、次はリョウを助けるため……いつも仲間を守るために矢を射っていたセイ。
リヴの言葉に、少し落ち着きを取り戻したセイ。
が、セイには心に決めたことがありました…。
その夜、廃校グループは教室に集められます。
「セイから話がある」
と切り出すリュウ。
トモの奪還には、農業組をはじめ廃校グループの過半数が反対したことを知ったセイ。
これまで合議制で物事を決めてきた廃校グループ。
多数決で物事を決め、「社会」にいた時には、現在「島」にいる皆が従っていたシステム。
その社会は自分たちを幸せにしなかった。
多数決は言い換えれば、少数派の意見を切り捨てる。
そして少数派の自分たちは孤立し、誰にも理解されず、死を選んだ……。

多数決を飲めない、少数の意見を持つ者として、
「お互いのために……僕は、ここを出て行きます」
第百七話 未来に
セイが集落を出て行く、その発言に不安がる廃校メンバー。
ルポライター・織田が
「多数決と民主主義の話は分かったが、それだと『みんなが決めたことが気に入らないから出ていく』となる。それだとちょっと子供っぽいし、無責任かな~」
メンバーは織田の意見に賛同します。
肉が食べられなくなる、いざという時守ってもらえなくなる。
考えるのは自分たちのことばかり……。
「責任てなんだよ。誰が誰にとる責任だ?」
リーダー・リュウが問います。
ここに居るメンバーは、生きていくために協力しているだけ。
「いい加減にしようぜ、誰かのせいにするのは。てめぇの事はてめぇに責任があるんじゃねぇか?」
セイ同様に『わかってもらえない』『やってくれなかった』責任を他者に転嫁してきた者は多いはず…。
社会で持たなかった「自分の意思」を大事にしたい、というセイ。
自分の意思に従い、自分達だけでやってみると。
「達」ということは、もちろんリヴも一緒……。
それなら…そいう感じで、納得する廃校メンバー。
その夜はセイ・リョウ・スギ・リュウ・ケンの5人で、セイの未来に、自分達の未来に乾杯……!

第百八話 旅立ち
「がんばるのよ…!」「しっかりね!」
「何でもセイの言う通りにしないで良いんだからね!」「辛かったらすぐ帰っていいのよ!」
ミキとレイコに、まるで両親や姉妹にされるように、見送られるリヴ。
セイが、リヴを連れ去る悪者のようです……。
以前「持たざる者同士」と自分とセイを卑下していたボウシが、餞別の新型発火装置をセイに持たせます。
「ありがとう皆…元気で!」
ミキやレイコら女性陣だけでなく、リョウ・スギ・ケンら男性陣の目にも涙が。
おそらく彼らより年下であろうセイの成長を目の当たりにし、旅立つ子を見送る親のような気持ちのよう。

それはセイとリヴも同じ。
社会にいた頃には出来なかった、この島に来て初めて出来た、「本当の仲間」との別れ…。
「戻ってくるよ…きっと!」
「うん」
これからはお互いだけが頼れる存在になった、セイとリヴ。
第百九話 山越え
2人が目指したのは、廃校の対岸、日当たりのいい島の東側。
1日でそこまで到達するのは難しく、初日はシカ狩りの時にも使う山頂の小屋で休みます。
野草を採り、川で「冷蔵」しておいたシカ肉を持ち、当面の食糧を確保したセイとリヴ。
いよいよ「山越え」です。
狩りで山に入る機会が多いとはいえ、そんなセイでもキツイ山越え。
リヴにとっては尚更ですが、思った以上の体力と頑張りで、必死にセイについて行きます。
やっとのことで対岸に辿り着いた2人。
キツイ山越えで心細くなってきた飲み水を探そうとすると、イキルが何かを見つけたのか走り出します。
イキルを追った2人が見つけたのは、海を一望できる民家。
第百十話 新生活
当然住人はいないものの、窓ガラスは割れておらず布団もあり、近くに沢もある。
ここを当面の住居にすることを決めた、セイとリヴ。
海に面した家は波の音が大きく、東側のため朝日が海から昇ります。
日差しは眩しいものの、「早く起きれそう」と喜ぶリヴ。
保存食を作るために、必ず必要な塩。
塩を作るための塩田を準備した後、農地を探しに出かける2人。
海に近すぎて潮風の影響を受けるためか、近くに農地は見つかりません。

農地の捜索は後回しにし、まずは目の前にある海に潜り、魚や貝を獲ることに。
弓矢はセイの方が上手ですが、泳ぎや潜りはリヴの方が上のようです。
短時間で充分な獲物を得ることができた、セイとリヴ。
「ここで2人、やっていける…!」
自信を持つ2人。
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