「自殺島」(作者:森恒二さん)第10巻あらすじをご紹介するもので、ネタバレを含みます。
第九十一話 裁判
港側グループの男性3人に対する「裁判」が行われる教室。
廃校グループのリーダーになったリュウは「殺すしかない」と。
「味方になってもらえれば」「サワダのように怖い人はいないから」
と話し合う廃校グループですが、港側グループの男性が口を開きます。
「何か…誤解があるみたいだ……。サワダさんはおっかねぇとこあるけど…オレ達の事いつも考えてくれる…凄くいい人なんだ……」

夜間の「乱交」を見たらおかしいと思われても仕方ないが、あれは女性をめぐって争いが起きないよう、サワダが「考えてくれたこと」
社会にいた頃は頑張っても認められなかったが、島では「やればやっただけサワダが認めてくれる。与えてくれる。食料も女も」
女性を「食糧」や「道具」と並列に扱うような言葉に、不快感を示す廃校グループの女性陣。
これに対しても
「女性を容姿で区別しない。男を癒してくれれば全員で守り、愛してやる……。あの人がそう決めてくれたんだ…」
アメと鞭をうまく使い分けるサワダによるマインドコントロールは、かなりのところまで進んでいるようです。
3人の処遇は「近いうちに結論を出す」としたうえで、その日は解散。
その夜、再襲撃時に殺された3人の顔が頭から離れず、眠れないリュウ。
『しっかりしろ……おれはリーダーなんだ……皆の命が……おれにかかってる……』
屋上に縛り付けた港側グループの男性。
見張り役のケンに、リュウが声を掛けます。
「交代だ、見張り」
第九十二話 処刑
港側グループの3人は、自分たちを縛り付ける縄を、何とか解こうとしている最中…。
そこに現れたリュウ。
手には鉄パイプ。
「これからオレの裁判をしてやる」
両手と、互いの腰を縄で結ばれた3人を、屋上のへりに立たせます。

落ちればほぼ間違いのない死。
恐怖に慄く3人を、
「オレの言う事は絶対だ!手間取らせる奴は突き落とす!!」
と脅すリュウ。
3人のうちの「カマクラ」と呼ばれる男性が、恐怖のあまり失禁します。
「かっ、帰りたい!!帰してくれ!!やだやだやだぁ!!こんなの……こんなのはぁ!!!」
「聞ぃてなかったみてぇだな…」
カマクラの背に、蹴りを入れるリュウ。
3人は互いに腰を縄で縛られているため、1人が落ちれば全員が落ちます。
そうならないよう、なんとか踏ん張る残りの2人ですが…。
もう1人の背にも蹴りを入れるリュウ。
屋上のへりに、1人の腕の力だけで2人を支え、しがみつく男性。
その手に、容赦なく鉄パイプを振り下ろすリュウ。
見張りのため1階でイキルと一緒に寝ていたセイ。
「ドドォッ!!」
という物音で目を覚まし外に出ると、捕縛された3人が折り重なるように倒れていました。
そして屋上には人影が……。
第九十三話 リュウの決意
物音を聞き、駆けつけたリョウ、スギ、ミキ。
屋上から降りてきたリュウは、
「こいつらは逃げようとして、オレに襲い掛かってきた。だから突き落とした。まぁ、元々生かしておくつもりなんて無かったがな」
当然、反発するリョウとスギ。
リーダーがリュウに代わったからと言って、廃校グループが「合議制」であることは変えておらず、全員を集めて「裁判」を行ったのもそのため。
それをリュウの独断で3人を殺したとなれば、リュウの独裁、サワダと同じことになります。
リュウのフォローに入ったのは、ナオと共に港側グループに攫われかけたレイコ。
「裁判」の時に明らかになった通り、サワダのマインドコントロールは相当進んでいる模様。
そんな彼らが改心するのは難しく、隙あれば逃げようとしていた。
自分たちを攫おうとしていたし、助けに来たケンを殺そうともしていた。
「これだけの理由があって、何故リュウが責められているの?リーダーとして必要なことをしただけじゃない?」
理屈には頷きますが、心情的に納得のいかないリョウとミキ。
リュウとリョウ、ミキとレイコと間に、溝ができてしまいます。
翌朝、顔を洗いに川で顔を合わせたリュウとレイコ。
自分を庇ってもらったのはありがたいが、リョウに嫌われるぞ、と忠告するリュウ。
リョウに恋するミキの手前、自分の気持ちを出せなかったレイコの秘めた恋心に、気づいていたリュウ。
「面白くて強くて、何より本当に仲間想いの優しいヤツだ。オレも大好きだぜ」

リョウのことを心から認めているリュウ。
そんなリュウの腕には、何本もの傷跡…そして新しい傷が3本。
「殺した命…救えなかった命……全部刻んで奮い立たせねぇと、オレは怖くて……怖くて…負けちまいそうになるんだ…。サワダ!!!オレは…あいつが恐ろしい!あいつと戦うには奴と同等以上にならねぇといけないんだ!!ここを……守るためだ……」
彼もやはり非情になり切れない…心優しいリーダー…。
第九十四話 逃避
港側グループから、偵察に来たと思しき男性を追い、山に入るセイとイキル、そしてケン。
イキルが足止めし、男性を射程圏内に入れたセイ。
「カマクラ達をどうしたんだ!?こっ、殺したのかぁっ!!……頼む…殺さないで……」
港側グループのメンバーといえ、やはり人を殺す事に躊躇い・迷いのあるセイ。
「行けっ!静かに行くんだ…早くっ…」

小声で男性に指示し、逃がします。
集落に戻り「逃げられた」と話すと、リュウから
「本当に逃げられたのか?イキルはシカをも捕まえる猟犬だ。そうそう逃げられるもんじゃない。逃がしたんじゃないだろうな?違うか?」
図星を突かれ、そそくさと逃げ出すセイ。
社会にいた頃と同じ、都合が悪い事・嫌なことがあると、一方的にコミュニケーションを断ってしまう、セイの悪癖でした。
再び港側グループに攫われるかもしれない。
レイコの説得で廃校グループの作業に参加していたナオ。
作業中とレイコとナオに
「狩りで山に入るよ…しばらく。皆に言っておいて」
「待って……いいの?こんな時に……」
リヴを伴い、山に逃げるセイ…。
第九十五話 強い想い
「待って……いいの?こんな時に……」「逃がしたんじゃないだろうな?どうなんだ、セイ!!」
狩りの最中もレイコとリュウの言葉が、頭から離れません。
『言ったって…どうせ分かってもらえない…。今までもずっとそうだった。誰にも、分かってもらえなかった…』

自分の欠点に気付いたセイ。
「『わかってもらえない』『やってくれなかった』……自分はどうなんだ?分かってあげたか…?してあげたか…?」
そんなセイは、弓を射る際に押手かけの代わりに包帯のようなものを巻いていました。
毎回巻いて解き、巻いて解いている様子を見たリヴが、こっそり自作の押手かけを作ってくれていました。
「どうしてこんな……」
言いかけたセイは気づきました。
いちいち巻くのが手間だと、「分かってくれてた」から、自分のために作ってくれたのだと…。
自分の欠点に気付き、素直に反省できるのはリヴのおかげだと、素直にリヴに感謝するセイ。
「セイは本当は強くて、思いやりがある人だよ…。だから大丈夫……」
その夜、自然と肌を重ねる2人……しかしリヴは過去のトラウマから、途中で身体が硬直します。
「大丈夫。急ぐこと…ないよ」
相手のことを受け入れ、分かってもらうより分かってあげられるよう、強くなりたい…。
切に願うセイ。
第九十六話 リュウ
延縄で水揚げした魚は、ほとんどがサメなどに食われた状態…。
原因はヨネダの寝坊で、仕掛けを上げるのが遅かったこと。
ヨネダはケン達とつるみ、足繁くナオのもとに通っていた男性です。
これで「5回目」だというヨネダの寝坊。
最初は注意、次にキツく叱り…ということを繰り返し、5回目の今日はリュウの拳。
約束を守らない奴、勝手な行動をする奴が増えたら、ここではやっていけない。
体罰がダメなら、食事を抜くなりペナルティが必要だと主張するリュウ。
ペナルティはやり過ぎだと反論する、リョウとトモ。
そんな言い争いの中、リュウが倒れます。
廃病院に運ばれたリュウが倒れた原因は、過労とストレス。
「リーダーを降ろさせてもらう」
リョウ・スギ・トモに告げるリュウ。

彼は24の頃、結婚を機に運送屋を立ち上げました。
自分を含めて従業員4人の小さな会社で、リュウ自らが営業し、安い仕事もガンガン取ってきた。
きつい仕事にネを上げる従業員には、暴力を振るって従わせたこともあった。
それでもみんなを食わせているのは自分、子供も生まれ順風満帆、そこに何の疑いもなかった。
しかし不況のあおりを食らい、仕事が減り、給料が減ると当たり前のように辞めていく従業員。
しかしまだ、家族のために頑張らなければならないリュウ。
がむしゃらに仕事をするリュウは、「やってはいけないこと」をしてしまいます。
居眠り運転の末、ノーブレーキで歩道に突っ込んだリュウのトラック。
撥ねた5人のうち、3人が亡くなる事故。
莫大な債務が残り、それ以外の全てを失ったリュウは、交通刑務所内で3回の未遂の末、島に送られたのでした……。
第九十七話 リーダー
病院のベッドで横になるリュウの元を訪れたのは、リュウに殴られたヨネダ。
「あれは…仕方ねぇ…、リュウの言う通りだ…。だから…これからも厳しくやってくれよ…!そんだけだ、じゃあな!」
見舞いのバナナを置いて、病室を去るヨネダ。
食事を持って来たレイコに、リュウは打ち明けます。
十二話で男性を殴り殺していたリュウ。
それ以来、「怖くて怖くて仕方なかった」と。
サワダが襲ってきたときも、自分はただただビビっていた、と。
「それは、あなたが真剣に考えているから。傷つきたくない…誰も傷つけたくない。そう真剣に考えてるから…」
レイコの前で泣き出すリュウ。
レイコに促され、廃校に戻るリュウ。
どんな顔をして皆の前に戻ればいいのか…困惑するリュウですが、
「寝てなくて大丈夫なの?」「オマエがいないとマズいんだから、おれらのリーダーなんだから」

リュウをリーダーと認めたうえで、皆が心配してくれます。
一方の港側グループ。
リーダー・サワダの不満が爆発しています。
「おつかいに行かせても何もしてこねぇ」
セイに逃がされた、偵察に来ていた彼らのことです。
「えらそうに講釈たれた作戦は、全く機能してねぇ」
カイのことです。
気温が下がって果樹が取れない、ヤギの乳も少なくなった、漁はうまくいかない、無い無い尽くしです。
「食いモンがなくなりゃ家畜を潰すしかない。しかしこれ以上鶏を食っちまったら卵もままならねぇ。それとも……また誰かが『肉』になってくれるのか?」
これ以上人が減れば戦いに影響する、というカイの進言を遮るサワダ。
「カイ、てめぇは口先だけで人を知らねぇ。実践が足りてねぇ。典型的な引きこもりのガキだ。オマエがやれ。明日、何らかの成果がなければ…誰かが肉になる」
第九十八話 満たされる事
野鳥を狩るセイとリヴ。
リヴの矢は見事命中。
リヴもハンターとしての才能があるようです。
セイとリヴ、想い合う同士で一緒にいて、大好きな山ではしゃぐイキルを見る。
2人は今、間違いなく「満たされて」いました。
街にいる頃には感じたことのなかった充足感を、2人は確かに感じているのです。
「これから……戻って戦いや争いが…あって……セイにもしものことがあったら……私はきっと耐えられない……もう…」

自分とセイ、そしてイキルで森の奥に逃げたいというリヴ。
セイももちろん、そうしてしまいたい気持ちはありますが……。
「ダメ…だ。行けないよ……」
イキルの唸り声で気づいたのは、廃校の方から上がる狼煙。
「皆に……何かあった!!」
第九十九話 人質
廃校近くの森の中。
リュウやケン、ボウシたちは港側グループの男性を追っていました。
男性に追い付き囲み、優勢かと思いきや……ぞろぞろ現れる港側グループのメンバー。
しかし彼らは「本隊」ではありません。
「本隊」は廃校、女性陣を狙っていました。
もちろんすべてカイの作戦。
ヤギの様子がおかしい事で、「本隊」の存在に気付いたトモ。
すぐさま逃げようとしますが、タエが捕まってしまいます。
争いや戦いは苦手なトモですが、タエを救うべく角材を振り回します。
無事タエを救出したものの、やはり普通の男性とトモの腕力差は著しく、今度はトモが捕まります。
リョウやスギが廃校に戻ってきますが、カイは人質・トモの首にナイフを当て、威嚇します。

その威嚇が「単なる威嚇」でないことを知るリョウ。

元々、廃校グループ全員を殺そうとして、火を放ってますから…。
トモを盾に、悠然と立ち去る港側グループ……。
第百話 リヴの弓
トモを連れ帰ったものの、港側グループリーダー・サワダは不満気。
廃校グループでは主要メンバーであり、人質としての価値は高いトモですが、見た目はヒョロっとした優男。
「大した労働力にはならないが、死ぬまでこき使う」としたうえで、連れて行こうとしますが…はずみで転んだトモが「キャッ」と声を上げます。
「女か!!オマエ……女だな!!」
身体は間違いなく「男」のトモですが…サワダにとってそういう事は、大したことではないようです。
「女には女の仕事がある!来い!!」
トモを室内に連れていくサワダ。
抵抗するトモの服を切り裂いて脱がし、犯そうとします……。
廃校には、やっとのことでセイが戻ります。
トモが攫われたことを聞き、
「トモ…トモは……!あんなところに一晩もいられるものか!!」

深い悩みを抱える優しいトモを、すぐにでも奪還する気です。
リョウもすぐに同調。
準備を整え、翌日の奪還を考えていたリュウやスギも、セイとリョウの勢いに押されて即時奪還を決めます。
セイから遅れて廃校に到着したリヴ。
『もう待つのは嫌、どんな所にもついて行く。そのために武器を取った』
自分も奪還について行くと。
心配するリョウに
「大丈夫、僕が守る。リヴを守れなかったとき、それは……僕が死ぬ時だ」
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