【この記事は死役所 ネタバレ 第81条 「幸せな男」のあらすじをご紹介します】
離婚
今回のお客様は「堂場文夫」さん。
50代半ばと言ったところでしょうか。
同僚と飲みながら、「同期のあいつが離婚したらしい」という話に。
「仲間だ仲間だ」
と喜ぶ堂場さん、離婚して「15年」の大先輩。
離婚して以降、一度も会っていない子供は、もう高校生。
写真すら送ってもらえず、
「会っても分らないだろう」
と寂しそうに語ります…。
強盗
休日でしょうか。
自宅にいた堂場さんの前に現れたのは、サングラスにマスク、キャップを被り、刃物を持った強盗。
いきなりお腹を2回、刺されます。
「すいません、やめてくれ、すいません!金か、金なら払うから!」
堂場さんの申し出に、強盗は一言も発することはなく、ただ堂場さんを刺し続けます。
一言も発することなく…。
死役所
「他殺課」
対応はハシ本くんです。
「大丈夫ですか」「どうしたんですか」
何か話しかけようとするハシ本くんですが、堂場さんの落ち込みようはひどく、ハシ本くん自身も口下手なため、なかなか話しかけることができません。
「強盗に襲われたそうですよ」
助け舟を出すシ村さん。
しかし、堂場さんのシャツに空いた穴を見て、
「強盗にしては執拗に刺されているような…怨恨の線も…」
強盗ではない可能性を示唆します。
傷の数だけでは判断できない、恐怖心で何度も刺すことがある、と言うシ村さん。
実際のところはどうなのでしょうか……。
申請書類の「殺害をした人物」欄に「強盗」と記入した堂場さん。
ここには実際に殺害した人物の名前を、記入しなければなりません。
TVドラマにもなった、父親を殺害した犯人に自分も殺されてしまった、定食屋の主人・眞澄さんの時もそうでしたね。
死役所では、調べれば誰が殺したのか分かりますからね。
早速シ村さんが調べます。
犯人
犯人の名前は「本多理」。
堂場さんには心当たりのない名前でした。
「堂場さん。どうやら15年前に生き別れになった、息子さんのようですよ」
離婚して以降、会ってもいないし写真も送ってもらえなかった、堂場さんの息子。
その息子がなぜ、自分を殺したのか……。
堂場さんには、皆目見当もつきません。
可能性で考えられるところを、シ村さんが話します。
「お金があるところを分かって、狙われたのかもしれません。或いは、元奥様との結婚生活に心当たりはありませんか?家庭内暴力があったようですが…」
「いや、私が復讐するっているなら分かりますけど…」
どうやら堂場さんは、奥さんに暴力を振るわれていたようです。
いずれにせよ、結婚生活に問題があるのでは、と考えたシ村さんは、堂場さんの話を聞くことにします。
堂場さんの言い分
結婚する前は、可愛らしかった。
ちゃんと家事もし、働いていた。
自分のことも労ってくれていた。
それが、子供が出来てから
「何と言うか…だんだんひどくなっていきました」
堂場さんの「人生史」を見ながら、首をかしげるハシ本くん…。
病気の時に看病してもらえなかった。
「1人で寝て治せ」って、冷たくあしらわれた。
仕事に理解もなかった。
働く大変さも分らず、やたらと偉そうにしてきた。
少しでも意見すると、100倍暴言が返ってきた。
子供が産まれても、子育てには一切参加させてもらえなかった。
息子のオムツを替えたかったのに、それさえもさせてもらえず。
それなのに「ちゃんと子育てしろ」と、矛盾したことを言われる。
だんだんと、夜の方も拒まれるようになった。
おかしいと思っていたら、最終的には浮気だった……。
憐憫
ここまで聞いていると、確かに堂場さんが恨む筋合いはあっても、恨まれる筋合いはなさそうですね。
シ村さんも話を聞きながら、
「それは寂しいでしょう」
「お辛かったでしょう」
憐憫の情を覚えたのか、同調した相槌を打ちます。
「それで離婚されたのですか。慰謝料は請求されなかったのですか?」
「それは…そこまでしなくてもいいかなと…」
「そうですか、よく分かりました、堂場さん。元奥様はひどい女性ですねぇ。堂場さんの中では」
事実
「人生史」を基に、堂場さんの言い分を見ていきましょう。
病気の時に看病してもらえなかった
奥さんは子供を妊娠し、つわりがひどく動けなかった。
「風邪薬、あっちの棚にあるから…」
と答える奥さんに対し、
「オレが働けなくなったら、困るのお前だろ?病気の時くらい労ってよ」
と愚痴を漏らす堂場さん。
仕事に理解もなかった
「金出してるのオレだぞ!オレを労えないならお前も稼いで来いよ!」
身重の奥さんに、仕事を探してこいと無理を言う堂場さん。
「えっと、あたしが稼ぎ出したら…お前はその謎の上から目線、辞めるわけ?」
「オレの方が偉いんだぞ!金出してほしいなら気持ちよく出させろ!指図するな!」
泣きながら反論する堂場さん。
奥さんが呆れた態度をとると、身重の奥さんを突き飛ばす堂場さん。
「お腹に子供いるんだよ!?」
軽く平手打ちを返され、本格的に泣き始める堂場さん……。
子育てに参加させてもらえなかった
オムツを替えたこともないのに、
「オムツ替えって簡単そうだよなー」
と気楽な堂場さん。
替えたことが無い理由は、
「教えてくれないから」
「教えるって何を?タイミング?やり方?理が泣いてたら、すぐあたしのことを呼ぶくせに?気まぐれで子育てしないでよ」
正論で一喝される堂場さん……。
夜の方も拒まれるようになった
夜を拒む理由を
「その気になれないから」
と説明する奥さんですが、堂場さんは納得いきません。
「浮気だろ!」
「友達と会ってるだけだって!」
「嘘だ!!」
奥さんの後頭部を、フローリングに何度も叩きつけます。
顔を叩いて暴力から逃れる奥さん。
「そうやってすぐ暴れて!恥ずかしくないの!?」
「暴れたって…大袈裟に言わんでくれるかなぁ……。子供が駄々こねてる程度じゃないか!」
逆切れする堂場さん……。
結論
堂場さんは「かわいそう」と思われることが大好きで、元奥さんを悪役に仕立て上げていただけ。
自覚があるのか、そうでないのか…。
ハシ本くんが堂場さんの人生史を見て首をかしげていたのも、人生史に書かれた「事実」と堂場さんの話に乖離があったから、だったんですね…。
堂場さんによる長年にわたる暴力で、元奥さんが後遺症を患っていたことを、シ村さんから知らされます。
心身ともに患っていたため、困窮していたかもしれない。
そんな母の姿を側で見続けた息子が、恨みを募らせた可能性もある。
「良かったですねぇ。堂場さんは、後遺症に苦しまずに済みます。息子さんに感謝しないといけませんねぇ」
いつものシニカルなシ村さんです。
堂場さんと言う「主観」を通すことで、事実が大きく捻じ曲がる。
これを「被害妄想」と言うのでしょうか?
そんなお話でした……。
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