聞き込みの対象を、比較的若い層(亡くなる前にも、ニュースを見て良そうな層)に変更し、死役所内で聞き込みを続ける豊田さんですが、「地方の小さい事件」だからでしょうか、事件自体を知らない人も多いのです。

「死役所」は「市役所」と違って、全国津々浦々から、亡くなられた方が集まるでしょうから…他県で起こったひき逃げ事件は、そこまで大きく取り上げられないのかもしれません。
事件の被害者、「高尾彼方」くん(三歳)の情報を求め続ける豊田さんですが…。
死役所内で目にしたのは、「高尾彼方」くん、本人でした……。
残念ながら彼方くん、亡くなってしまいました…。
大きなショックを受けつつ、彼方くんの手続きに同行する豊田さん。
行き先は「交通事故死課」、松シゲさんの所です。
まだ文字の書けない彼方くんに代わって、申請書類を記入する豊田さん。
当の本人は、自分が死んだことも理解できず、
「ねーねー、おじたんなんのくるまがちゅきー?」
シ村さんと無邪気なやり取りを繰り広げます。
申請書類を記入する、豊田さんの手が止まります。
「運転していた人物」
の欄です。
「こ、この欄は??」
豊田さんの質問に、松シゲさんが資料を見ながら即答します。
「えーと、『大野祐沙恵』だな」

「死役所」では、現世で解明されていない「真実」が、 簡単に分かってしまうんですね…。
捜査はどこまで進んでいるのか、犯人の名は分かっているのに…。
「クッソ!!分かったのに、犯人の名が分かったのに!俺には何も出来んのか!!」
悔しさ、憤りを隠すことなく、大きな声を出す豊田さん。
「豊田さんの言葉を、現世に伝える術はありません。」
事実をありのまま、オブラートに包むこともなく、ストレートに伝えるシ村さん。
「死人に口なしか…」
「ですが、現世にはその死人の言葉を、汲み取ろうとしてくださる方もいます。豊田さんの仕事も、そうではありませんか?」
シ村さんの言葉で、少し冷静になった豊田さん。
そんな豊田さんに、
「なんのくるまがちゅきー?」

無邪気に彼方くんが尋ねます。
「おじさんは…パトカーかな…」

根っからの「警察官」なんですね…。
自分は救急車が好き、という彼方くんに対し、
「救急車な、そうか。
彼方くん、乗ったことあるんだぞ?知っとるか?」
ひき逃げ事故の際の話ですが、先ほどまでと違い、穏やかな様子で話す、豊田さん。
シ村さんの一言で、何か吹っ切れたようです。
一方、現世。
「車当たり捜査」を続けていた警察は、ひき逃げ事件の「犯人」である「大野祐沙恵」に辿り着きます。
「署で詳しく話を聞かせてください」


そういったのは、「松田さん」。
仕事中に遭遇した「交通死亡事故」の衝撃から、心を病み、休職していた、豊田さんの部下です。
「復帰するならするし、辞めるなら辞めるじゃろ」
豊田さんはそう言っていましたが、見事復帰し、豊田さんが解決できぬまま亡くなった「ひき逃げ事件」を、解決に導いたようです。
犯人逮捕後、豊田さんの家を訪れ、豊田さんの遺影に犯人逮捕を報告する、松田さん。
「二浪で無職、そのうえ飲酒運転で当て逃げ」した、豊田さんの長男・翼さんは、執行猶予が付いたようです。
その翼さんに、話があるという松田さん。
豊田巡査部長…殉職したので、二階級特進で「警部」での退職となりますね。
豊田さんは翼さんの事故の責任を取って、「ひき逃げ事件」解決後に退職するつもりだった、と。
それを聞いた松田さんは、
「さすがだなー」
と思ったそう。
豊田さんは非常に厳しく、松田さんも何度怒られたか分からない。
自分の中に絶対的な正義があり、他人にも、もちろん自分にも厳しかった。
「でも、僕は好きでした。
翼くん、君のお父さんは、部下に尊敬される、立派な人じゃったよ」
改めて、自己の軽率な過ちを悔いる翼さん。
死役所。
豊田さんはすでに成仏していました。
彼方くんと一緒に。
「後は仲間を信じる」
その言葉を残して…。



シ村さんの言った通り、「死人の言葉を汲み取ろうとしてくださる方」がいましたね。
松田さん。
メンタルをやられた状況から、見事復帰。
亡くなった彼方くんの「言葉を汲み取り」、ひき逃げ事件を解決。
亡くなった豊田さんの「言葉を汲み取り」、翼さんを諭してくれました。
松田さん自身も、もしかすると豊田さんの死をきっかけに、立ち直ったのかもしれません。
自分の想いは、出来れば生きているうちに伝えたいものですが、伝えられなかった言葉を「汲み取って」くれる人がいたなら、それはとても素晴らしいことかもしれませんね…。
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