ウシロ(宇白 順・うしろ じゅん)編⑥
ウシロの戦闘は、たった一人の敵ロボットのパイロットを殺すまで、終わりません。
我々の地球と同じ規模と考えると、約75億人。
その中の「たった一人」を当てるまで、一人一人を殺していくウシロ。
蹂躙、虐殺以外の何物でもない、ジアースの行為。
相手の地球の戦域は、皆が寝静まった夜。
学校の水飲み場
パソコンの並んだオフィス
道路を照らす自販機の灯り
公園のブランコ
洗面台の歯ブラシ
子供のおもちゃ箱
そんな、当たり前の「日常」を、無数のレーザーで壊し続ける、ジアース。
相手の地球のアナウンサーが、カメラに向かって叫びます。
「皆さん、この映像をご覧いただいていますでしょうか!!
まさに今、敵性侵略体による、虐殺が行われています!!
いつまで映像をお送りできるか分かりませんが、その瞬間まで、ここで実況をお伝えしたいと思います!!
敵性侵略体、その姿はまるで、まるでーーーー」

「悪魔」のようですね…。
あまりの惨さに、往住明もカメラに手が伸びます。
録画を停止しようか…。
が、思い留まります。
ジャーナリストとして、
大人として、
ジアースパイロットの父として。
「聞こえる…聞こえる…叫び声が…」
佐々見さんも多手さんも、往住明も、惨い様を見てはいますが、実際にそれを行っているのはジアースであり、操縦しているウシロです。
秒間数万人を殺し続けていれば、精神もおかしくなってきます。
「バカ野郎、そんなの、空耳だ。
でももし、本当に聞こえてるんだとしても、てめーは目も耳も、ふさぐんじゃねぇ。
オレもつきあってやるから。」
妹・カナを思い出すウシロ。
散々暴力を振るってきたウシロ。
それに耐え続けてきたカナ。
すべては、血の繋がらない自分を兄を、繋ぎとめるために。
「てめーは可奈よりましだぜ。
痛みを与える苦痛を知ってて痛みを与えるより、痛みを与えられる苦痛を知ってて痛みを与える方が、より過酷だ。
可奈は、それをした。」
コエムシなりに檄を飛ばし、コエムシなりに、ウシロに寄り添います。
が、ウシロは身体にも異変を来します。
戦闘前から何度も吐き気を感じていましたが、今度は本当に嘔吐。
一度堰を切ると、嘔吐が止まりません。
苦しいながらも、戦い続けなければならないウシロ。
大人たちも、声を掛けられません。
「宇白、着替えな。」
「このままで…いい。」
「着替えならあるぜ。
宇白、てめーの、だろ?」
ナカマの作ってくれた、ユニフォームでした。
ナカマがユニフォームを作った後、カコとウシロだけは、このユニフォームを着ませんでした。
カコは「死に装束みたいじゃねーか」と。
ウシロは…特に言葉にはしませんでしたが、「オレはいい」という表情で。
皆と一線を引いて、冷めたところのあるウシロ。
しかし、カナの戦闘後、ウシロの意志で「ユニフォーム姿のまま」、棺に納められた、カナ。
そして、そのユニフォームに、初めて袖を通したウシロ。

ナカマのユニフォームを着て、ウシロ、勝利。
最終戦。
ワク
コダマ
ダイチ
ナカマ
カコ
チズ
モジ
マキ
キリエ
コモ
アンコ
カンジ
関さん
カナ
田中さん
マチ
ウシロ
皆がバトンを繋いで、捥ぎ取った勝利。
「ぼくらの」地球の勝利。
残すは、「次の地球」への、引き継ぎ。
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