マチ(町 洋子・まち ようこ)編④
マキの家の次に、ウシロとマチが向かったのは、ダイチの家。
ダイチの家は、失踪していた父親が帰ってきていました。
子供たちの住む場所に、怪獣が被害をもたらした。
だから帰ってきたと。
失踪中のことは、本人からは語られませんでしたが、佐々見さんによると親友の金銭トラブルを助けるべく、中国に出稼ぎに行っていたと。
ダイチの父親には本当のことが伝えられましたが、弟妹達には伝えられていませんでした。
ダイチがどうなったのかを。
一家の「お母さん」代わりの双葉は、ダイチが戻ってくることを信じています。
「おとーちゃん、ずっとここにいようね。
にーちゃんの帰ってくる場所は、ここだから。
だって、おとーちゃんは帰ってきた。
にーちゃんが、にーちゃんは、あたしたちをおいていったりしない。」
次に訪れたのは、ナカマの家。
ナカマの戦闘では、罹災死者はなく、怪我人が1人だけでした。
その1人がナカマの母、美子さん。
娘を探すため、1人街に残り、避難をしておらず、戦闘に巻き込まれて怪我を負いました。
しかしその傷も癒え、体はリハビリを始められる状態なのに、心が追い付いていません。
「私があの子をあんな所に行かせなければ…」
自然学校に行かせたことを、後悔し、自分を責める美子さん。
ナカマが自然学校に行くきっかけは、美子さんでした。
『あなたは「良い子」であろうとし過ぎて心配』『友達つくってらっしゃい』
そういってナカマに渡したのが、自然学校の案内でした。
病室に入り、
「あたし達、自然学校で出会った、半井さんの友達です。」
と告げると、過敏に反応する美子さん。
美子さんに、ナカマが遺してくれたユニフォームを見せます。
「あの子は…自分が死ぬことを分かってて…これを?」
「この服が、あたしたちを繋いでくれました。
今この世界があるのは、この服のおかげです。
半井さんが守りたかった世界です。」
「自然学校が始まったとき、ぼくらは打ち解けやすいように、あだ名というか呼び名を決めたんです。
それは、それまでの学校での呼び名だったり、いろいろなんですが、ぼくらは半井さんのことを『ナカマ』と呼んでいました。」
半井 摩子(なからい まこ)を略したナカマであり、仲間=ナカマ。
ユニフォームを抱きしめ泣く、美子さん。
次はモジの家です。
モジの両親は、キリエ同様、「いかにも」モジくんを思い起こさせるそんな2人。
真面目で頭のよさそうなお父さんと、美人で優しそうでなお母さん。
佐々見さんと相談した結果、モジの両親には、全ては話さないでおくことにしました。
「モジの心臓」のことです。
モジ本人の願いで、幼馴染で大親友で、恋敵のナギに移植された、モジの心臓。
それを伝えた方が、両親は救われるかもしれません。
けれど、そのことを知ってる人が増えればそれだけ、レシピエントであるナギに伝わる可能性が高くなります。
ただ、コエムシ曰く「あの女は気づいてるぜ」。
モジの幼馴染で、モジの好きだったツバサです。
ツバサは、モジの心臓がナギに移植されたことを悟ったうえで、「ナギとずっと一緒にいる」ことを誓います。
『モジくんもきっと、祝福してくれるから』
最後はカンジのところ。
カンジの母は沖天楼の建設に際し、構造上問題があることに気づきながら、そこに関わる大きな利害の前に、正しさを貫けなかった自責の念から、沖天楼の落成直後に自死を図っています。
母のことがあった後も、同じ会社で仕事を続けた父。
カンジが最後に願った、「沖天楼の工事には、問題があります。親父に、責任を取らせてやってください」の通り、父親は起訴される直前で、残務整理が忙しい状態。
「宇白くん、寛治のことありがとう。
あの子は母親にそっくりだったな。
あの子は私のことを、恨んでいただろう。」
「はい。」
カンジはウシロの、唯一の親友。
ウシロも少なからず、親友が憎んだ父を、憎んでいたでしょう。
カンジの父はククッ、と苦笑した後、
「ああ、そうだ。沖天楼の取り壊しが決定したよ。」
カンジは自分の命と引き換えに、「母の仇をとった」ことになるんでしょうか。
気分の晴れない「仇討ち」ですが…。
コモの父(国防海軍一佐の小茂田巴)と、アンコの父(人気キャスターの徃住明)には、すでに会っているため、改めて会う必要はないのですが…。
ウシロが2人に「お願いしたいこと」がある、と。
そしてもう1人、連絡を取ってほしい人が。
ウシロの希望で集まったのは、小茂田巴、徃住明、そしてチズの父・本田千一。
徃住明が、本田千一に対して切り出します。
「立ち入るのは失礼な話かもしれませんが、娘さんにひどいことをした男がいますよね。
どうして法的措置を取られないんですか?」
「確かに娘は被害者で、家族である私たちには、その男を裁く権利があります。
でも娘はその男…男たちに復讐しようとしたとき、無関係な人を巻き込むことを良しとしてしまいました。
それでは娘は、その男たちと同じです。
落ち度のない人たちに対する加害者です。
巻き込まれた娘に、娘の人格はありませんが、巻き込んだ娘には、娘の人格がハッキリあります。
そしてその人格の責任の一端は、家族にもありますから。
私は娘にどんな犠牲を強いたのか。」
性被害に巻き込まれたチズに、チズの人格はない。
けれども、加害者への復讐のために、無関係な人を巻き込んだチズには、チズの人格がある。
その人格形成には、当然家族も影響している。
チズの行為の原因を、自分たちにも求めているわけですね。
チズの姉・市子の「特別さ」が際立っていましたが、本田千一もやはり「特別」ですね。
まぁ、市子も両親の影響を受けた結果の「特別さ」なのでしょう。
本田千一の答えを聞き、大きめの封筒を差し出す小茂田巴と往住明。
小茂田の方は、コモの最後のピアノ演奏の音源とムービー。
往住は、家にあったアンコのありったけの写真。
この使用権を本田に譲ると。
音楽ソフトと写真集として販売し、その利益を支援組織に寄付する。
今はまだ、コモやアンコの死は発表されていないが「地球を救うために戦った少女」。
最終的には罹災者、罹災孤児を十分支援していけるくらいの売り上げになると。
そしてこれは、ウシロの発案。
感謝する本田に
「礼を言われると困ります。
私たちは何もしていません。子供たちの残したものです。」
「宇白くんから連絡があって、改めて娘の写真を整理したんです。
そうしたら、それがあまりにも少なくて…
普通の子ならもっとあるんだろうなって。
それも、私の取ったものなんてほとんどないんですよ。
私も同じです。
娘に犠牲を強いてきた一人です…。」
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