絆
王騎から受け継いだ矛の一閃で、龐煖に片膝をつかせた信。
しかし、その信の様子が…。
「ああ 大丈夫だ まだやれる
戦れるぜ 漂
酒臭ェのは 麃公将軍だろ へへ
屁の臭いは 尾平あたりか
分かってる…
何かの でけェ 花みてェな匂いを
広げてんのか 王騎将軍…」
信には、何かが聞こえ、何かが見え、何かが匂っているのか…。
「分かってる みんなが 力を貸してくれてるのは
でも龐煖には それがねぇ
だから龐煖の刃は
痛ェだけで 重くねェんだ!」
みんなの思いを紡ぐ信、その思いを力に、龐煖に立ち向かいます。
が、見えぬものが見えたり、聞こえぬものが聞こえたり…身体的にはもう限界を、とうに超えているようです。
「龐煖! お前の刃は重くねェんだよ!!」
龐煖に斬りかかる信ですが、逆に一撃を食らいます。
「ほざけ!!」
「何度も 何度も 同じことをそれが そもそもの誤りだと その連なりこそが 人を人に縛り付ける鎖 その暗き鎖を 打ち砕くのが 我が刃」
「我 龐煖 我 “武神” 也」
残酷な現実
すかさず李牧が「違う」
龐煖に異を唱えます。
龐煖が武神であるなら、17年前に王騎を両断しているであろうし、合従軍の時に麃公に腕を折られることもなければ、秦左翼の老兵(蒙恬のじぃ)に足を貫かれることなどなかった、と。
武の極みに立ちながら、その矛盾を気づかぬ龐煖に、麃公は「阿呆」といった。
その矛盾こそが、龐煖が「突きつけられた”答え”」
人を上の存在に引き上げるべく、超越者足らんと その力を天に示す龐煖が
正に「人の力」を体現する者たちに、勝てぬという現実
誰がどう足掻こうが、人が人を超える存在にはなり得ぬ
所詮人は人でしかないという 天からの残酷な”答え”
それが、龐煖が求め続け、
李牧が”答え”を持つ信に導き、
信をはじめ、彼に思いを託した者たちが体現し、龐煖に突きつけた答え。
だからと言って、この勝負に龐煖が負けると決まったわけではありません。
一旦は五分に持ち込まれた戦いも、気づけば龐煖優位。
それでも、耳から血を流し、矛を振り上げながら倒れ、また起き上がる信。
尾平の腕の中で目を醒ました羌瘣。
そんな信の姿を見て、話すことすらできないながらも。嫌なものを感じて信に向かって手を伸ばします。
離れた場所に待機していた河了貂も、同じものを感じていました。
「信の元に…行かなくちゃ
何か…変な…感じがさっきから…」
那貴を連れて、信の元へ向かいます。
「龐煖が、武の極みにいることは間違いありません
それに対し、人を超えんとする龐煖に、命がけで”否”を突きつけるのが、王騎であり、麃公であり、信です
しかし…まさに命がけ
先の”王騎”も”麃公”も、その否の答えを示すところまでで力尽き、皆龐煖の刃の下に命を落としています」
ここまでくると、さすがに龐煖が引いて終わる、という展開はなさそうですね。
ただ、信もいっぱいいっぱい…というより、もうとっくに限界を超えている状態。
羌瘣も貂も、それを感じています。
信がこの逆境を乗り越え、一皮も二皮も剥けて、成長するんでしょう!…と思いたい。
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