昌文君の様子がおかしいことに気づいた呂不韋は、「龐煖(ほうけん)とは何者か」、昌文君に尋ねます。
龐煖は趙の武将…いや、武将ではない。武将のように人を率いる類の人間でなく、完全なる個。もっとおぞましく、純粋に、「武の結晶」だ。
9年前の馬陽攻防の際、六将・摎(きょう)を討ったのが、その龐煖である、と。

一同は驚きます。
六将・摎は「病に倒れ、亡くなった」と聞かされていたためです。
しかしそれは、当時王騎と昌文君が画策して流した「嘘」だったのです。
戦の最中だったということもあるが、その出来事があまりにも衝撃的だったため、真実を語れなかった、と。
9年前の馬陽攻防時、夜間は摎の天幕を、二千の兵が囲み、護衛していました。
そこに龐煖はただ一人で、現れます。
矛一本で護衛の兵たちを薙ぎ払い、「草原を歩くように」天幕に近づく龐煖。
これは趙軍の策ではなく、寧ろ趙軍など全く関係のない、ただ「強さ」を求める龐煖が、六将・摎の強さを感じ取り、戦いに来ただけなのです。
そして摎は龐煖に討ち取られます。
騒ぎを聞き、駆け付けた王騎は激高し、龐煖を討ち取ります。
「あそこまで激情にかられた王騎を見たのは最初で最後だ」と昌文君が言うほど。
そして龐煖を討ち取った…「はず」でした。
しかし、今回秦に侵攻する趙軍の総大将は「龐煖」。
止めを刺しきれず、生きていたようです。
王騎は、龐煖が趙軍の総大将であることを知り、摎の仇討ちに行ったのではないか。
政と昌文君は、そう推測します。
ただ、咸陽への知らせは、届いたばかりですからね。
王騎は「何か感じ取った」とかなんでしょうかね。
ここら辺はあまり深く考えても答えが出ないし、無粋なので止めときます。
摎については、政もよく知らないほど、謎に包まれた人物でした。
六将の中で一番若かったが、その戦いは一番苛烈だった。
性別も不明で、いつも仮面をつけており、人前ではそれを外さなかった。
なので、仮面の下は火傷で爛(ただ)れていたとか。
或いは、美しい女性だった、とか。
後々詳しく書きますが、摎は王騎の妻になるはずの女性でした…。
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