周りから「最弱の伍」と呼ばれる伍を組むことになった信。
しかし本人は気にする様子もなく、「絶好の行軍日和」と、まるで遠足気分。
入城する予定だった城が、すでに魏軍によって落とされたり、戦術の変更で行き先が変わったり、長い行軍になる秦軍。
途中、千人将が通るため、整列する歩兵一行。
信の伍の伍長・澤さんから「整列中フラついただけで斬られ、伍の者達もさらし首」になったくらい気性の激しい千人将もいるから、気を付けるよう言われる信。
しかし、千人将の乗った四連戦車が目の前に来たその時、信は列を外れ、千人将の目の前に歩み出ます。
「止まれぇ!」
千人将が大きな声で隊列を止めます。
誰もが、あのバカ斬り殺される…と思いましたが、信の口から出た言葉は
「よぉ壁 久しぶり」
王弟の反乱で、昌文君の下、副将として一緒に戦った「壁(へき)」でした。
「やはりいたか、信。元気そうで何よりだ!」
千人将とタメ口で話し、それまでの「うるさいガキ」とは異なる意味で一目置かれるようになった信。
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51巻表紙の壁
歩兵一行は、戦場となる「蛇甘(だかん)平原」を目指します。
蛇甘平原では、すでに到着していた秦軍と魏軍が戦闘の真っ最中。
信達の歩兵軍を率いる千人将は、気性の荒い「縛虎申(ばくこしん)」、前述の「壁」、壁の幼馴染の「尚鹿(しょうかく)」。
作戦の説明を求める歩兵を、「歩兵ごときが作戦の全容を知る必要はない」と斬り捨てる縛虎申に対し、新参の千人将・壁はそれを諫め、歩兵に状況と作戦を説明し、檄を飛ばします。
「王弟成蟜の反乱を鎮め、自信をつけたか?」と聞く尚鹿に対し、「逆だ」と答える壁。
反乱鎮圧は国王・政の行動力、山の民の武力、信の奮闘によるもので、自分が無力だったことを痛感していました。
自身の信じる昌文君は、文官の極みとなる丞相を目指し、自分は武官の極みである大将軍を目指していたのです。
まもなく軍編成が始まり、信の伍は縛虎申千人将の軍に配属されます。
戦の経験のある他の伍の歩兵から、「特攻好きのいかれた将、縛虎申の部隊は毎回大勢死ぬ。お前ら最弱の伍はイチコロだろうな」と脅されます。
最前列に整列し、突撃の合図を待つ信の伍。目の前で繰り広げられる戦い。次々と死んでいく歩兵たち。初陣の尾平は、思わず吐いてしまいます。
伍長の澤さんは、「私の伍では今まで一人も死んでいません。弱者には弱者の戦い方があります。伍の結束で生き残りましょう。」と信達を落ち着かせます。
信はそんな話は聞いておらず、「先頭で大軍勢を率いているみたいで気持ちいい」と気負う様子は全く無し。
そして怖さもなく、「この時をずっと待っていた」と、澤伍長の言う「伍の結束」もなく、「岩陣(がんじん)」と呼ばれる盾と槍の壁に正面から突っ込み、岩陣を飛び越え、一人敵陣の中へ。
魏軍の歩兵を滅多斬り、内側から岩陣の突破口を作ります。
戦前、さんざん「最弱の伍」とバカにしていた周りの歩兵たちも、「あのガキのおかげで完全に流れはこっちだ。あんな奴初めて見た」と、早くも信の実力に驚いています。
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