今回は「死役所」第12巻をご紹介します。
表紙は泣きボクロのある物憂げな女性。
そしていつものシ村さんです。
かわいそうな人
今回のお客様は「比護 亜季保(ひご あきほ)」さん。
30代前半の、若い女性です。
表紙の物憂げな女性は、比護さんですね。
元々デザインの仕事をしていた比護さん。
離職後、すぐに見つかると思っていた転職先はなかなか見つからず、
雇用保険の給付も今回が最後、という状態。
ハローワークで紹介された先の面接を受けるも、気管支に持病を持つこともあり、
採用には至りません。
自宅アパートでは居候の父と同居。
父は6万円の年金を、すべてパチンコに使ってしまうパチンコ好き。
私物を売って当座の生活費を稼ぎますが、やはり就職先が決まらず生活はドン詰まり。
父は「生活保護」を受けようと勧めますが、比護さんは「そんなの社会の底辺」と
拒絶します。
最終的に生活保護の申請をし、安いアパートに移り、食い繋ぐことのできた比護さん。
ですが、生活保護を受けていることに、非常に負い目を感じています。
逆に父は、医療費も無料だからと、病院に行って多くの薬をもらってきます。
自身も気管支の持病のため、病院に行かなければならないのですが、
「他人の税金で生活して、無料で医療を受けて…」
感じる負い目は大きくなるばかりです。
「早く病気を治して、就職して、普通の生活に戻ろう」
就職活動を続ける比護さんですが、職は決まらず。
ある晩、TVを見ている父より先にお風呂に入る比護さん。
精神的、肉体的な疲労が蓄積しているのか、湯船に浸かりながら強い眠気に
襲われ、お湯に顔を付けた状態で眠り、溺死してしまいます。
死役所を訪れた比護さん。
職業欄に「無職」と書くのをためらっていると、「そこは無職で結構ですよ」とシ村さん。
「無職や生活保護を恥じる必要はない」というシ村さんですが、
比護さん本人は
「人の税金で生活して」
「病院に行って薬をもらい」
「結局何の社会貢献もできず」
と自分を責めます。
「必死に生きようとすることは恥ですかねぇ」
「いや、生きてたら普通のことだと思いますけど」
シ村さん、ハヤシくんがフォローします。
「何で私死んだん…もっと…生きたかった…」
「死ぬのは簡単なのに 生きるのって難しいすね」
そのころ現世では、比護さんの父親が、比護さんの置き忘れた千円札を見て
「これを増やして肉買ってきてやるから、待ってろよ」
とパチンコに出かけます。
通り過ぎた風呂場で、娘が亡くなっているとも知らず。
比護さんも、このお父さんの半分でも、楽観的な部分を分けてもらえれば
そんなに自分を責めずに済んだと思うのですが。。。
ただ、生活保護を受給しているのに、あまりに楽観的だと、納税者としては
ちょっと違うんじゃないの?って思いますし。。。
1990年代後半から、生活保護を受ける世帯が増加の一途を辿っています。
現在、その半数以上が高齢者世帯だそうです。
ナーバスで、難しく、決して他人事でない問題ですね。。。
おててつないで
今回のお客様は「福原 潤也(ふくはら じゅんや)」くん。
まだ1歳の男の子です。
継父から暴力を受け、殺されたのでした。
「よくあんな小さな子を殺せますねぇ」
というシ村さんに対し、ハヤシくんは答えに困ります。
自身も小さい子を、それまで自分の娘として育ててきた子を、
手にかけてますから。詳しくはこちら
死役所内で、潤也君を連れて歩いて最中、潤也君はハヤシくんと
手を繋がず、シ村さんと手を繋ぎました。
「赤子殺しの手が嫌だったのかな…」
考えすぎだと思うのですが、ミチルちゃん(第3巻、4巻に登場)との出会いや
イシ間さんが成仏していった経験が、ハヤシくんを罪に向き合わせているようです。
それでも、
「さっき会ったばかりの潤君が殺されたことは悲しいし、幸福しか願えない
けど、あいつら(ハヤシくんが殺した人たち)のことは不幸しか願えない」
と。
まだ、罪を反省するまでには至っていないようですね。
それでも、潤君が成仏するまで遊んであげたい、最後の記憶が殺される瞬間なんて
悲しいじゃないすか、と本当にやさしいことを言うハヤシくん。
自分の罪と向き合い続け、その罪を悔い改め、成仏する日が来るのでしょうか。
登場人物の中でも本当にお気に入りのキャラなので、「ハヤシくん頑張れ」って
心の中で思ってます。
夜ノ目町爆弾事件
お客様は「金子 行亮(かねこ いくあき)」さん。
肺炎で亡くなった年配男性です。
実家の牛乳屋を手伝っていた金子さんでしたが、仕事は適当で
しょっちゅう父親に怒られていました。
性格が荒く、喧嘩で警察の世話になることもしょっちゅうでした。
いつものように喧嘩で相手にケガをさせ、警察の世話になった金子さん。
彼に、別の容疑がかかります。
「夜ノ目(よのめ)の爆弾事件」
お年寄り宅の玄関先に、お茶缶のような筒状の手製爆弾を置き、その家の
お年寄りは爆発に巻き込まれて亡くなった、という事件でした。
金子さんに、その事件の容疑がかかっていたのでした。
一貫して否認する金子さんに対し、警察は執拗な取り調べを行います。
同じことを聞かれ、同じことを答える。
精神的な揺さぶり、暴力行為。
取り調べに疲れ、やってもいない罪を認めて楽になろうかとも考え始めます。
ある日刑事に
「お前の兄も工業高校出身だったな。お前でなければ兄を取り調べるか」
金子さんのお兄さんは、性格の難しい金子さんの唯一ともいっていい味方で、
優しく、弟思いなお兄さんでした。
「兄ではこの取り調べに耐えられない。兄に迷惑をかけられない」
仕方なく、罪を認める金子さん。
拘置所での面会で、その事実を知った金子さんの兄は、金子さんの無罪を
主張する運動を始めます。
無期懲役の判決を受けた金子さんは、拘置所で9年、刑務所で19年を過ごし、
仮釈放となりました。
金子さんが冤罪の経緯を話すと、シ村さんは「よく分かります」と同意。
「もしかしたらあんたも冤罪?あるいは身内にそういう人が?」
という金子さんの問いに、
「前者です」と答えるシ村さん。
仮釈放され、兄の下に身を寄せ、残りの人生を幸せに過ごしたと語る金子さん。
それでも、寂しく、辛かった、と。
同じ境遇の人間がいた、ということを知るだけで救いになる、と。
シ村さんの話を聞かせてくれ、と頼む金子さんに、
寂しげな表情を浮かべた後、
「では少し 昔話でもしましょうか…」
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