今回は「死役所」第11巻をご紹介します。
表紙は裁判所の傍聴席で足を組み、頬杖をつく男性。
そしていつものシ村さんです。
裁きの先に
最初のお客様は「坂東 一早(はんどう いっさ)」さん。
表紙の男性ですね。
40歳男性で、バイクでひったくりを行った直後、パトカーに追われて逃走中に
自動車と衝突して亡くなります。
坂東さんは高校生のころ、友達と原付バイクで2人乗りし、「獲物」を見つけては
ひったくりを繰り返していました。
「夏休みに入ったらひったくり旅行しようぜ」
「全然捕まんねーな、才能あるのかも」
「一生これで食っていけんじゃね?」
若さゆえの短絡的な思考ですね。
ある日自宅に遊びにきたお祖父ちゃん。
どうせ学校をサボってばかりなんだろうから、と平日外出に付き合わされます。
着いた先は裁判所。
お祖父さんは、裁判の傍聴が趣味でした。
食い逃げをした70近い男性の裁判、酒に酔って傷害事件を起こした中年女性の裁判、
器物損壊、過失運転致傷の裁判などを傍聴した後、窃盗の裁判へ。
駅のホームのベンチで、隣に座った女性のカバンから見えた財布を盗んだ若い男。
「ちょっとしたゲーム感覚でやった」ことで、財布の中身は3,000円。
結果逮捕されて、裁判を受ける男性。
たった3,000円でこんなことになってしまい「割に合わないなぁ」と本音を漏らします。
その裁判を見て以降、ひったくりを止める坂東さん。
裁判で見た男性と同じように、「犯罪なんて割に合わない」と考えたようです。
ひったくり仲間の友人に殴られても、その考えは変わりませんでした。
ひったくり旅行に行くはずだった夏休みは、裁判傍聴に通う毎日になります。
それは社会人になっても、結婚して、子供ができても変わることはありませんでした。
高校時代、坂東さんを殴ったひったくり仲間の友人も、坂東さんの影響で
裁判傍聴を趣味にしていました。
そんな中、裁判員裁判に注目していた坂東さんは、強姦致傷の裁判員裁判を傍聴します。
被告は背の高い、イケメンの医大生。
被害者が公園トイレに入るのを見て、出てくるのを待ち伏せしてトイレの個室に押し込む。
フェラを強制するも被害者が口を開けず、顔を殴る。
被害者の手を壁につかせ、後ろから姦淫した容疑です。
しかし加害者は、「同意の上で強姦ではない」と容疑を否認。
次の裁判では、遮蔽措置が取られ、被害女性が裁判に出廷しました。
検察、弁護人の質問が続く中、泣き出す被害女性。
心の中で「頑張れよ」と応援する坂東さん。
裁判員の一人が質問します。
「加害者の男性の顔を見ましたか?ちょっとカッコいいなって思いませんでした?」
「この人ならいいかなーって思いませんでした?」
「本気で抵抗すれば逃げられたと思うんですよ」
「医者になるって大変じゃないですか。加害者は頑張って医者になろうとしてるんですよ」
「そんな将来有望な若者を
自分の不注意で潰しちゃうなんてもったいないと思いませんか?」
ニコニコしながら、小太りの人の好さそうな中年男性は、クソみたいな意見を並べます。
思わず叫び出す坂東さん。
「あんたは悪くない!絶対負けんなよ~!」
退廷させられながらも叫び続ける坂東さん。
イライラしながら外でタバコを吸っていると、先ほどのクソみたいな質問を
並べた男性が通りがかります。
男性のカバンをひったくり、、、、事故って亡くなるわけですね。
被害者の気持ちを味わわせたかった、裁判になったら
「必死で抵抗すればカバンは取られなかったはず。
おっさんの不注意が原因でしょう?」
と言ってやりたかったそう。
「『割に合わないこと』をしてしまいましたねぇ」
相変わらずうまいことを言う、シ村さんでした。
自責
今回のお客様は「猪俣」さん。
癌死課を訪れた年配の猪俣さんは、自身が小学5年時の担任、
「印南 清子(いなみ きよこ)」が何故亡くなったのかを、シ村さんに尋ねます。
小学5年生の時、学校の屋上から飛び降りた(自殺ではなく、
遊んでいて落ちた)猪俣さん。
目を覚ますと病院で、傍らには清子先生が眠っていました。
足が痛いことに気付き、見ると骨折していました。
「すっげー骨折だー!しばらく学校休みかー!」
無邪気にはしゃぐ猪俣少年。
清子先生は猪俣少年の頬を平手打ちし、
「あなたは屋上から落ちたの!
今生きてるのは奇跡なのよ!
人間は簡単に死んでしまうものなの!
命は大切にしないとだめなの!」
と大声で叱ります。
屋上から飛び降りたことで骨が砕け、足が不自由になった猪俣少年。
それでも松葉杖一本で遊び回る活発な少年でした。
その年の暮れ、母親から清子先生に「年末のご挨拶」で鯛を届けるよう
言い付かった猪俣少年。
戦争やら病気やらで家族を失い、一人暮らしをしている清子先生の家に向かいます。
玄関が開いており、声をかけるも返事はなく、家の中に入ると、
目に飛び込んできたものは、、、
鴨居にネクタイを結び、首を吊っている清子先生の姿でした。
猪俣さんは、命を粗末に扱った自分をひどく叱ってくれた、
その先生が自ら命を絶つはずがない、先生の死の真相を教えてください。
シ村さんに懇願します。
「お客様は仏様です
プライバシーは守らせていただきます」
過去の自分、おそらく死役所の職員になったばかり頃を思い出すシ村さん。
イシ間さんに「娘の死の真相が知りたいんです。お願いします」
先ほどの猪俣さんとまさに同じ様子。
パソコンで清子先生の死因を調べるシ村さん。
先生は、「婚約者に別れを告げられた」ために自ら命を絶っていました。
自分のこと、自分の娘のことと、猪俣さん、清子先生のことがダブったのか、
或いはこんなつまらない理由で、と思ったのかは分かりませんが、
少なくともシ村さんの死刑執行前に、娘さんは亡くなっていたんですね。
- 役所勤めをしていた
- 「美幸」という娘がいた
- 美幸がよくなる可能性があるなら、と奥さんから「加護の会」という宗教に行こうと言われていた
- 奥さんの名は「市村幸子」
- 奥さんは存命で、「加護の会」で特別な加護を受けている
今時点で分かっているシ村さんの生前情報でした。
「死役所」
立ち読み、試し読みは以下のサイトでどうぞ!
ハロー宇宙人
今回のお客様は「中島 詩(なかじま うた)」。
女子中学生です。
友達の「海野 智柚美(うんの ちゆみ)」とともに、自殺を図りました。
詩と智柚美は、毎日学校の屋上で宇宙人との交信を試みていました。
宇宙人に会い、早くここから連れて行ってほしい、そう願っていました。
智柚美は母親の彼氏に虐待を受けており、「宇宙人が自分を連れて行ってくれること」
を望んでいました。
詩は、母が長女だけを可愛がっていることが嫌で、家に帰りたくないと
思っており、智柚美の思いに共感し、毎日宇宙人との交信を試みていたのです。
「別次元に行く方法を考えた」という智柚美にその方法を聞くと、「死ぬんだよ」と。
「一緒に死んで宇宙人に会おうよ」「うん、分かった」
智柚美の家で、智柚美の母の睡眠薬を飲み、押入れで練炭を燃やし、死に向かう二人。
死役所を訪れた詩は、役所内をくまなく探しますが、智柚美が見つかりません。
友達と一緒に自殺したんですが、友達がいないんです、とシ村さんに尋ねる詩。
時間差によるものなのか、或いは友達だけ助かったのかも、と答えるシ村さん。
再び智柚美を探す詩。
「さっきの人の友達、生きてるんですよね」
「もしくは…友達だけ別次元に行った可能性もあるのでは」
突飛なことを言うハシ本君。
死産の時と言い、時々ロマンチックなことを言うハシ本君。
好きです、この子。
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