昨日に引き続きまして、本日は「死役所 2巻」ご紹介します。
腐ったアヒル
6人目のお客様は漫画家の「塙 保(はなわ たもつ)」さんです。
↑の2巻の表紙で、顔に包帯を巻いている男性ですね。
漫画家といっても作画のみで、原作は有名な小説家の「戸川アラン」でした。
漫画家として芽が出ない塙さんは、作画の話を持ちかけられ、自分の世界を描きたい、
と迷いながらも、作画を引き受けました。
漫画は大人気で、塙さんの収入も増えましたが、いつも「自分の世界を描きたい」
と思いながら作画をしていました。
ある日、「自分の世界」のアイデアを考えながら、バイクを運転していた塙さん。
停車中の車の陰から現れた対向車と、正面衝突。
命は助かりましたが、眼球をやられ視神経も損傷し、
「もう漫画は描けない」と宣告されます。
事故後、視覚障害リハビリステーションハウスで、パソコンを習う花輪さん。
その帰り道、出版社の編集担当から「作画をしていた漫画(「あひるロード」という
タイトル)の、漫画家が変更になる」という連絡を受けます。
20年かけて漫画家になった塙さん。
辛かったけど楽しかったと、過去を振り返りながら涙を流します。
その直後に転落死。
世間では「自殺」として扱われます。
死役所でも、初めは自殺かに通されます。
しかしそこはさすがに死後の世界の「死役所」
現世で起こったことは正確に資料に残ります。
自殺ではなく事故死であった塙さん。
自殺課から、生活事故死課に回されます。
シ村さんハヤシ君と話をする塙さん。
失明して漫画が描けなくなり、自殺しようと思わなかったのか、と問われると
「死にたいとは何度も思った」と答えます。
「でも死のうとははしなかったんですよね何故すか」
ハヤシ君に聞かれた塙さん。
「漫画を書きたかったから
絵が描けないけど、話なら描けるから。
だからリハビリで、パソコンばかり練習していた」
と答えます。
それでも世間には、自殺と思われてしまった悔しさを、表情に滲ませる塙さん。
現世では、「あひるロード」の原作者、「戸川アラン」に、作画担当が変わる旨を
担当編集が説明します。
「そうですか」
と一言だけの答え。
特に塙さんの死について、思うところもなさそうな戸川アランでしたが、
担当編集が「それにしても自殺なんて」と言いかけたところで、
「自殺なんかじゃないですよ」
と即答する戸川アラン。
失明して漫画が描けなくなり、作画も交代だから失望して自殺したのでは?
と語る担当編集に
「失明したからこそ、世界が変わったことで、以前の彼に書けなかった世界が
描けるようになったのでは?
私はそれに期待していました。
そんな彼が自ら死を選ぶわけがない」
と断言する戸川アラン。
塙さんと直接会ったことはないけれど、作品の中でいつも会話していた、と。
「彼の作品が読みたかった」
と塙さんの死を悔やみます。
塙さんが自殺でないことを、理解している人間がいてくれたのです。
男やもめ
7人目のお客様は、心筋梗塞で亡くなられた襟川さん。
江利川さんは、案内をしたシ村さんに
1年前に自分の妻も来たと思うのだが、自分のことを何か言っていなかったか
と聞きます。
お綺麗なご婦人でしたので、よく覚えています。
旦那さん、襟川さんのことをとても心配していましたと答えます。
襟川さんの奥さんの典子さんは、綺麗で人当たりがよく、
みんなから好かれていました。
入院中には、見舞いの人が絶えず、見舞い品もたくさんもらうような人気者でした。
退院したらお礼に回らなきゃ、と言っていた典子さんでしたが、
そのまま帰らぬ人となります。
旦那の襟川さんは、典子さんの死後、典子さんが参加していた
(襟川さん自身はまったく参加していなかった)グランドゴルフや老人会に、
積極的に参加するようになります。
「男やもめに蛆がわき 女やもめに花が咲く」
自分はそうならなかった。
かみさんが死んでから、人付き合いが増えて生き生きしていたから
と嬉しそうに話す襟川さん。
そんな襟川さんを見て、シ村さんは典子さんが死役所に来た時の事を思い出します。
「主人は人付き合いが下手なので。蛆がわくぐらいがちょうどいい」
「いらないことを言って気を悪くさせたり、
自分が思った返事がないと怒ったり」
「どんどん外に出る方が心配。嫌われやすい人だから」
現世では襟川さんの家から異臭がしていました。
付き合いが増えたと自分では思っていましたが、奥さんの心配通り、
周りからは敬遠されがちでした。
姿の見えない襟川さんを心配するものはなく、一人で亡くなった襟川さんは
誰にも発見されていませんでした。
その遺体に蛆がわいているにもかかわらず。。。
石間徳治
こちらでご紹介したイシ間さんのお話ですね。
十分語らせてもらったので、割愛します。
初デート
夏加ちゃん15歳、中学三年生。
智也君とデート中、居眠り運転のトラックに轢かれ、亡くなります。
夏加ちゃんと智也君は付き合っているわけではなく、
智也君は夏加ちゃんの片思い相手。
ただ、夏加ちゃんは転校するため、「最後の思い出に」と、彼女がいる智也君と、
デートしている最中、居眠り運転のトラックが歩道に突っ込み、トラックに轢かれた
夏加ちゃんは、亡くなりました。
死役所に来るときは、亡くなったときの状態で来るようで、
夏加ちゃんの身体は、トラックに轢かれた衝撃で、内臓は一部飛び出て、
骨も所々見え、無残なものでした。
その姿を見たシ村さんは
「相手の男性にとって忘れられない思い出になったでしょう」
と、ひどく無神経なことを言います。
死役所に来る方で、時々いるようです。
恋人に別れを切り出され、その場で自殺し、これで相手は永遠に自分を
忘れることができなくなった、と言う人が。
その人たちを引き合いに出し、姿はどうあれ相手の心に残り続けることが
できたのは、喜ばしいことではないか、と夏加ちゃんに言います。
シ村さんは普段から、嫌味っぽいことを口にはしますが、
相手を選んで言っているようでした。
ただ、今回の相手は女子中学生。
しかも、好きな人とのデート中に、ひどく体を損傷して死んでしまう。
それを喜ばしいなんて、思えるわけがないじゃないですか。
案の定、シ村さんは夏加ちゃんに平手打ちを食らいます。
「いつか忘れられてもいいから、
きれいなまま、普通の私のままで、生きてお別れしたかった、、、」
泣き崩れる夏加ちゃん。
しばらく、いつもの作り笑いの笑顔でなく、無表情でボーっとするシ村さん。
思い出していたのは、
草むらに倒れ、おそらく事切れたであろう少女と、それを見下ろす志村さん。。。
シ村さんの「冤罪」に関わるワンシーンなんでしょうね。
シ村さんの過去とは。。。
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