悲しいわぁ。。。
家内が前回「死役所」について書いていましたが、
わたしくも「死役所」について、ぜひ紹介したいエピソードがあります。
死役所職員の中でも若い「ハヤシ」くんです。
5巻の表紙になっている、この若者ですね。
死役所を訪れた死者が持っていた漫画をもらってコレクションしたり、
「何故(なにゆえ)すか」
「真(まこと)すか」
など、独特の言葉づかいをするハヤシくん。
ふざけたところもありますが、一本気で心優しいハヤシくんが、何故死刑囚になったのか。。。
ハヤシくんには元役者(と言っても時代劇の脇役ばかりだった)のお祖父さんがいました。
子供の頃はお祖父さんと時代劇ごっこをするのが大好きでした。
逆に父親とは、「ある時」を境にほとんど口をきかなくなっていました。
ハヤシくんが中学生の頃、大好きなお祖父さんが亡くなります。
通夜の最中、酒に酔った父親が「ある時」のことを話し始めます。
ハヤシくんの出生についての話でした。
実はハヤシくんは、大好きなお祖父さんと、母親の間にできた子供だったのです。
母親はハヤシくんが子供のころに亡くなっており、母親が亡くなる前に書き遺した手紙に、そのことが書いてあったのです。
父親は「その時」以降、ハヤシくんにどう接したらいいか分からず、口をきかない関係になっていったのです。
「実の父親に女房を寝取られたんだよ!
自分の子供だと思ってたのが、実は兄弟だったんだよ!傑作じゃないか!」
ひどくショックを受けたハヤシくんでしたが、
「何があってもあんたの味方」と言ってくれる優しい姉
祖父を亡くしてショックを受けるハヤシくんに「ずっとそばにいるから」と慰めてくれた幼馴染・まりあ
2人の支えもあり、真っ直ぐに成長します。
こんなショックなことが判明したら、グレても仕方ないというか、普通はグレちゃうんじゃないかと。
高校生になると、役者だったお祖父さんの血を受け継いでか、格好良く、モテるようになったハヤシくん。
周りの女生徒にとって、ハヤシくんのそばにいる幼馴染まりあの存在が疎ましく思えます。
結果、いじめを受けるようになる、まりあ。
そのいじめの現場に遭遇したハヤシくん。
まりあをいじめていた女生徒を、怒りの余り窓から投げ落とします。
幸い投げ落とされた女生徒は軽傷で済みますが、ハヤシくんは退学になってしまいます。
高校を退学になったハヤシくんは働き始め、数年後介護士になったまりあと結婚します。
複雑な出生の経緯はあるものの、腐ることなく真っ直ぐに生きて幸せをつかんだハヤシくん。
子供もでき、順風満帆に思えた生活でしたが……。
ある日、まりあから「今日は早く帰ってきて」と言われ、同僚からの飲みの誘いも断り、家に帰るハヤシくん。
「子供が生まれてから全然だったから、久しぶりに。。。かな?」
なんてことを考えながら家に入ると、そこには見知らぬ男がいます。
まりあが、娘のあや美を出産する前の勤め先の同僚で「浅井」と名乗る男は、「まりあさんと別れてください」と切り出します。
状況が飲み込めないハヤシくん。
男は更に、衝撃的な事実を伝えます。
「この子は私とまりあさんとの間の子供です。まりあさんの相談に乗っているうちにそういう関係になってしまいました。彼女は、あなたがおじいさんの子供と知ってから、すごく悩んでいたんです。彼女を開放してあげてください!」
妻・まりあが自分を見る目が、父親が自分を見る時の目、出生の秘密を知った後の自分を見る目、気持ち悪いものを見るその目をフラッシュバックさせます。
お祖父さんが亡くなって落ち込んでいた時、
「ずっとそばにいるから」
と慰めてくれたまりあが、実は自分を気持ち悪いと思っていた。。。
信じていたものに裏切られたハヤシくん。
浅井とまりあ、そして娘・あや美の3人を殺害し、死刑になったのです。
死役所職員(全員元死刑囚)の中でもひときわ明るく元気で、
個人的に好きなキャラだったので、彼の過去がこんなにも辛いものだったと
知ったときは衝撃でした。。。
旦那回は暗く重い話ばかりですみません。
そのうち明るい話も書きます。
「死役所」
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